京都市左京区に鎮座する**吉田神社(よしだじんじゃ)**は、貞観元年(859年)に創建された古社で、平安京の東北(鬼門)を守護するために建立されました。
都の鬼門を守る神として厚く信仰され、現在では「厄除け」「方除け」「開運」の神社として多くの参拝者を集めています。
また、全国的に有名な「節分祭」発祥の神社としても知られ、京都の風物詩のひとつとなっています。
◇ 吉田神社の概要
- 所在地:京都府京都市左京区吉田神楽岡町30
- 創建:貞観元年(859年)
- 御祭神:
- 建御賀豆智命(たけみかづちのみこと)
- 伊波比主命(いはいぬしのみこと)
- 天之子八根命(あめのこやねのみこと)
- 比売神(ひめのかみ)
これらの神々は、奈良の春日大社に祀られる春日四神であり、吉田神社は「京都の春日大社」と称されることもあります。
◇ 創建の歴史
平安時代初期、藤原氏の一族である**藤原山蔭(ふじわらのやまかげ)**が、奈良・春日大社の神々を勧請して創建したのが始まりです。
吉田山の高台に鎮座するこの神社は、当時の都の鬼門(北東)を守護する要地に位置しており、国の安泰と都の繁栄を祈願する場として栄えました。
室町時代には、神道学者の**吉田兼倶(かねとも)**がこの神社を拠点に「吉田神道(唯一神道)」を興し、日本の神道体系に大きな影響を与えます。
そのため、吉田神社は「神道の総本山」とも称され、日本の宗教史上でも極めて重要な神社です。
◇ 吉田神社と「節分祭」
吉田神社といえば、やはり全国的に知られているのが節分祭です。
毎年2月2日〜4日にかけて行われ、延べ数十万人もの人々が訪れます。
特に「節分祭追儺式(ついなしき)」は、古式ゆかしい儀式として人気で、鬼が登場して豆を撒く様子が印象的です。
また、境内では「厄除福豆」や「火炉祭(かろさい)」が行われ、古いお守りやお札を焼納して新しい年の無病息災を祈ります。
節分祭の時期には、屋台が立ち並び、まるで縁日のような賑わいを見せるのも吉田神社の特徴です。
◇ 神道史における特別な存在 ― 吉田神道
室町時代、吉田兼倶が提唱した「吉田神道(唯一神道)」は、
「神は唯一絶対の存在であり、八百万の神々はその分霊である」という思想を中心に展開されました。
この思想は、後の日本神道の体系化に大きな影響を与え、江戸時代の神社祭祀にも多くの影響を残しています。
境内には、彼の住居跡である「斎場所大元宮(さいじょだいげんぐう)」があり、
ここでは全国の神々を一堂に祀っているとされ、「日本全国の神様を参拝できる場所」として信仰を集めています。
◇ 境内の見どころ
● 本宮
春日大社の四柱の神々を祀る本殿で、厄除け・方除け・家内安全・開運などのご利益があるとされます。
● 大元宮(だいげんぐう)
吉田神道の中心的施設であり、日本全国の神々が祀られている特別な社殿。
通常は立ち入りが制限されていますが、節分など特別な日に参拝が可能です。
● 斎場所
吉田兼倶が神道理論をまとめた聖地であり、「神道発祥の地」とも呼ばれます。
◇ ご利益
- 厄除け
- 方除け
- 家内安全
- 商売繁盛
- 開運招福
- 学業成就
特に、吉田神社の厄除け祈願は古来より有名で、「厄除けといえば吉田」と言われるほどです。
◇ アクセス
- 所在地:京都府京都市左京区吉田神楽岡町30
- アクセス:
京阪「出町柳駅」から徒歩約15分
市バス「京大正門前」下車 徒歩約5分 - 駐車場:あり(節分時は混雑のため利用不可)
◇ まとめ
吉田神社は、京都の鬼門を守る厄除けの社としてだけでなく、
日本神道の歴史を語るうえで欠かせない「思想の源泉」でもあります。
節分祭のにぎわいと、静かな吉田山の自然が調和したこの場所は、
訪れる人々に“清らかな力”を授けてくれる、まさに京都の守護神と呼ぶにふさわしい神社です。

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