今回紹介するのは、山形県の出羽三山の信仰の中心となる出羽三山神社。羽黒山・月山・湯殿山の三山を総称して「出羽三山」と呼び、古代より「生まれ変わりの山」として信仰を集めてきた、日本でも屈指の山岳信仰の中心地です。
主祭神
出羽三山神社は三山それぞれに神が祀られています。
羽黒山:伊弉冉尊(いざなみのみこと)
月山:月読命(つきよみのみこと)
湯殿山:大山祇命(おおやまづみのみこと)とも言われるが、正確には秘神として本来は神体山そのものを拝む信仰
羽黒山山頂に本社(里宮)が置かれ、三山の神を合祭して祀っている点が特徴的です。
歴史的背景
出羽三山信仰は平安時代以降に大きく広まりました。
修験道の拠点として栄え、山岳修行・行・祈祷が盛んに行われ、古代から中世、近世に至るまで一般庶民から武家に至るまで広範な信仰圏を持ちました。
特に「生まれ変わり」の思想は強く、羽黒=現在、月山=過去、湯殿山=未来と象徴化され、三山を巡ることは人生観や世界観を再構築する巡礼行為として成立していきました。
見どころ
出羽三山の象徴ともいえるのが、羽黒山参道にある杉並木と国宝・五重塔。
この参道は修験の世界観そのもので、杉並木の中を歩くだけで日本古来の霊性を体験できる特別な空気があります。
また、湯殿山は今も山中で神体(巨岩)を直接拝する原始信仰形態が続いている点でも極めて貴重な場所です。神社でありながら鳥居より先は撮影禁止・言語化しないという伝統があるのも特徴で、これは「山の奥で直接神意に触れる」ことが根本にあるためです。
月山は古来より霊山として格別の扱いを受け、修験者や宗教者が全国から訪れました。夏でも雪渓が残るほどの厳しい山であり、古代より「死と再生の山」として認識され続けています。
不思議な話・社伝
出羽三山には「山に入って帰ってきたら別人になる」と言われるほどに、精神世界の変容をもたらす山として語られてきた伝承が非常に多いです。
三山を巡る「生まれ変わり」の思想は、江戸時代には庶民にも広がり、「現世で死を体験し、新たに生まれ直す」という独自の宗教観・人生観を形成しました。
また「湯殿山は語るなかれ」と伝えられるように、湯殿山で見聞きしたことは言葉にして伝えてはいけないという禁忌が存在し、これも日本の神道信仰の中でも特異な一面です。
言葉にせず、目で見て、身体で体感し、自身の中だけに持ち帰るという信仰は、現代でも受け継がれています。
まとめ
出羽三山神社は、単なる古社・名社ではなく、日本の精神文化を形作ってきた山岳信仰の中心地です。
三山を巡ることは、古来より「人生を生まれ直す」旅とされてきました。
歴史と宗教の深層がそのまま大地に残る聖地であり、現代人がもう一度「生き方を見直す」場所としても強く薦めたい神社です。

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