■ 皇室の鎮護としての創建
京都市北区に鎮座する平野神社(ひらのじんじゃ)は、
創建が延暦13年(794年)、まさに平安京遷都の年。
桓武天皇が奈良から京都へ都を移す際に、
皇室の守護神として創建された神社です。
御祭神は天皇の祖神にあたる神々であり、
代々の天皇から厚い崇敬を受けてきました。
古来「皇室鎮護」「国家安泰」の神として、
今もその格式の高さを誇ります。
■ 御祭神と神徳
平野神社には、以下の四柱の神々が祀られています。
- 今木神(いまきのかみ) … 新たな生命力を与える神。開運招福・健康長寿。
- 久度神(くどのかみ) … 台所の神。食の安全・生活安泰。
- 古開神(ふるあきのかみ) … 悪を祓い、幸福を招く神。厄除開運。
- 比売神(ひめのかみ) … 女性の守護神。縁結び・安産・家庭円満。
これらの神々は「皇祖神」「国土の守護神」として、
人々の暮らしと国家を支える存在とされています。
■ 平野神社の由緒と伝承
平野神社の起源は、奈良時代の光仁天皇の時代に遡ります。
元々は天皇家の祖先神を祀る「皇室の氏神社」として、
奈良の地に鎮座していたと伝えられます。
平安遷都に伴い、桓武天皇がこの神を京の北に勧請し、
以後、平野の地に都の守護として祀られました。
そのため平野神社は、**“皇城鎮護”**の要として
朝廷の信仰を一身に集めた、由緒ある古社なのです。
■ 千年の桜 ― 平野の花の宴
平野神社といえば、何といっても桜の名所。
平安時代より「平野の桜」として都人に親しまれ、
『源氏物語』や『枕草子』にもその名が登場します。
境内には約60種類・400本以上の桜が植えられ、
早咲きから遅咲きまで長く楽しめるのが特徴。
特に平野神社発祥とされる品種「平野撫子(ひらのなでしこ)」や、
優雅な「魁(さきがけ)」はここでしか見られない貴重な桜です。
毎年春に行われる「桜花祭」は平安貴族の風雅を今に伝える行事で、
華やかな行列と神事が境内を彩ります。
■ 災禍を乗り越え、蘇る社殿
平成30年(2018年)の台風21号で本殿などが甚大な被害を受けましたが、
全国からの支援と信仰の力により、少しずつ復興が進んでいます。
再建中も参拝者が絶えず訪れ、
“平野の桜”を愛でながら、
神社と共に歩む人々の温かい姿が印象的です。
■ アクセス情報
- 所在地:京都府京都市北区平野宮本町1
- アクセス:
・JR「円町駅」より徒歩約15分
・市バス「衣笠校前」下車すぐ - 駐車場:あり(有料)
■ まとめ 〜桜とともに歩む千年の社〜
平野神社は、
「日本の春」を象徴するような美しさと、
「皇室の守護神」としての荘厳さを併せ持つ神社です。
桜の花びらに包まれながら参道を歩くと、
まるで千年前の貴族たちと同じ景色を見ているような感覚に。
自然とともに生き、四季とともに祈る——
その日本人の心が、今もこの平野の杜に息づいています。
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