和歌山県和歌山市秋月。
静かな杜の中に、**日前神宮(ひのくまじんぐう)**と並び立つもう一つの聖地――
それが、**國懸神宮(くにかかすじんぐう)**です。
この二社は一体の関係にあり、あわせて「日前宮(にちぜんぐう)」と呼ばれます。
ともに紀伊国一宮として崇敬を集め、古代から太陽神を祀る神宮として、
伊勢神宮にも並ぶ尊い存在とされています。
◇ 神社の由緒
『日本書紀』や『古事記』によると、
天照大神が天の岩戸に隠れたとき、
神々がその御霊を鎮めるために「日の鏡」を造ったと伝わります。
このとき造られた二つの鏡――
「日像鏡(ひがたのかがみ)」と「日矛鏡(ひぼこのかがみ)」。
前者を御神体とするのが「日前神宮」、
後者を御神体とするのがこの「國懸神宮」です。
その後、神武天皇が東征の際にこの二鏡を奉斎し、
紀伊の地に社を建てたのが両社の始まりとされます。
つまり、國懸神宮は――
「天照大神の御霊を最初に祀った神宮のひとつ」
とも言われる、日本神道の源流に近い神社なのです。
◇ 御祭神とご神徳
御祭神は、
- 國懸大神(くにかかすのおおかみ)
御神体は、太陽の矛を象徴する「日矛鏡(ひぼこのかがみ)」。
「日の矛」とは、天照大神の御力が放つ光の象徴であり、
“国を照らし、国を導く”神徳を表しています。
そのため、ご利益としては――
🌞 開運招福
🌞 出世運上昇
🌞 方除・厄除
🌞 国家安泰・家運隆盛
など、「光の矛が闇を祓い、道を切り開く」ような力を授かるといわれています。
人生の転機や新しい挑戦のときに参拝するとよい、と伝わっています。
◇ 神話と伝説
國懸神宮に伝わる「日矛鏡」の伝説は、
まさに日本神話における“光の誕生”そのものです。
天の岩戸に籠った天照大神が再び姿を現した際、
その光を世に伝えるために造られたのが「日矛鏡」。
その鏡は「国に懸けられた太陽」としてこの地に祀られ、
以来、人々は「國懸大神」として敬ってきました。
また、古代の人々は太陽の光を「矛(ほこ)」――
すなわち“貫く力”として捉え、
神々の威光を現す象徴としたとも言われています。
◇ 見どころ
● 二社一体の神域
鳥居をくぐると、左に「日前神宮」、右に「國懸神宮」が並び立ちます。
両社はそれぞれ独立した社殿を持ちながら、
ひとつの境内に鎮座するという珍しい構造。
この姿は「太陽の二面性」――
「照らす光」と「導く矛」を表していると伝わります。
● 神明造の社殿
社殿は簡素ながら、黄金の光を受けて輝く神明造。
直線的な美しさの中に、古代神道の清浄な空気が漂います。
装飾を排した構造こそ、太陽神を祀る神社の原点といえるでしょう。
● 清らかな境内と御神木
境内には樹齢千年を超える楠木が立ち、
陽光を浴びてきらめく葉がまるで神の息吹のよう。
訪れる人々は自然と手を合わせ、その力を感じます。
◇ アクセス
- 所在地:和歌山県和歌山市秋月365(日前神宮と同じ境内)
- アクセス:JR和歌山駅より徒歩約20分、またはバスで「日前宮前」下車すぐ
- 駐車場:あり
◇ まとめ
國懸神宮は、
**「国を導く光の矛」**を象徴する神を祀る、
日本の太陽信仰の中心的存在です。
日前神宮とともに、
伊勢よりも古い時代から「天照大神の御魂」を祀ってきたこの地には、
日本人の“光を敬う心”が今も息づいています。
人生の迷いを払いたいとき、
新しい光を見つけたいとき――
國懸神宮はきっと、あなたの道を照らしてくれるでしょう。
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