【神社めぐり】秩父神社(埼玉県 秩父市)

埼玉県秩父市の中心、秩父三峯神社・宝登山神社と並んで「秩父三社」の一社として有名な秩父神社。秩父地方を代表する総鎮守として古代より厚い信仰を集め、秩父夜祭(例祭)は日本三大曳山祭の一つとして全国的に知られています。

本殿は徳川家康の命により関ヶ原の戦い勝利後、慶長12年(1607)に再建されたものが現存。江戸初期の建築様式を残す貴重な社殿で、豪華な彫刻が随所に見られるのが特徴でもあります。

■御祭神

・八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)
・知知夫彦命(ちちぶひこのみこと)
・天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
・秩父宮雍仁親王殿下

主祭神の八意思兼命は「知恵の神」として特に知られ、学業成就、判断力、企画力、物事をまとめる力などのご利益を求める参拝者が多い神社でもあります。


歴史と社伝

社伝によれば、創建はなんと約2100年前。知知夫国造に任命された「知知夫彦命」が当地を開拓した祖神を祀ったのがはじまりとされます。この“国造”というルーツが示す通り、単なる地域の鎮守ではなく土地の始まりと統治のための守護神として成立した古社です。

秩父夜祭はこの神社の例祭で、12月2日〜3日に行われる絢爛な山車行列はユネスコ無形文化遺産にも登録。元々は機織りの神に奉納されていた祭で、秩父周辺の養蚕・絹織物文化と深く結びついています。


見どころ

秩父神社本殿の魅力は、細部まで彫られた極めて特徴的な彫刻群です。特に有名なのが数点。

・「子育ての虎」
社殿北側の一角にあり、子供を慈しむ虎が刻まれています。子育て、家内安全を祈る人々が多く参拝スポットになっています。

・「つなぎの龍」
社殿東面の梁に刻まれた龍の彫刻。鎖で繋がれている造形になっており、昔、夜な夜な飛び回って悪さをしたため繋いだという不思議な伝承が残っています。

・「北辰の梟(ほくしんのふくろう)」
本殿西面。秩父出身の彫刻師・左甚五郎の作と伝わり、学問と知恵の象徴「北辰=北極星」にゆかりあるフクロウが彫刻されています。学問成就の象徴として特に人気のある彫刻です。


不思議な話・伝承

上記の「つなぎの龍」伝説は秩父神社を語る上で非常に代表的な逸話で、古来よりこの神域には霊気が満ちるとされていました。龍は水と運気の象徴であり、暴れ龍を繋ぎ止めて御力を鎮めるという「結界の象徴」と見る説もあります。

また、この地は山岳信仰と神仏習合の歴史も濃厚で、古くは妙見信仰(北辰・北極星信仰)の中心地でもありました。彫刻に「北辰の梟」があるのは、こうした宗教史の連続性を体現していると言えるでしょう。


まとめ

秩父神社は単に由緒ある古社というだけではなく、
・秩父地方の総鎮守
・学問・知恵の神の聖地
・ユネスコ登録の祭を擁する文化拠点
という三つの顔を併せ持った神社です。

歴史を辿れば古代から続く「土地の始まり」の神。文化を見れば「絹・機織り」を守り育てた神。そして今は「学問・知恵」を強く象徴する神。

境内の彫刻群はその象徴として非常に分かりやすい「語る歴史書」と言える存在です。参拝する際はぜひ、彫り物ひとつひとつを観察しながら歩いてみることをおすすめします。

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