【神社めぐり】都々古別神社(福島県)

今回紹介するのは、福島県東白川郡棚倉町、白河市、田村市の三か所に存在する「都々古別神社」。実はこの神社は三社が同じ名称を持ち、それぞれが古代の陸奥国一宮として扱われたと伝わるという特異な性格を持っています。

三社は以下の通りです。
・都々古別神社(八槻 奉斎社)
・都々古別神社(馬場 奉斎社)
・都々古別神社(八槻 奉斎社)

一般的には八槻の社を特に「都々古別神社」として扱われる事が多いですが、三社揃ってこの一宮性を語る上では欠かせません。今回は主に八槻の社を中心に紹介します。

■御祭神

味耜高彦根命

この神は大国主命の御子神で、農業守護・殖産や国土安定に関わる神として信仰されています。

■歴史的背景

都々古別神社の起源は古く、延喜式神名帳にも記載される式内社で、陸奥国一宮とされています。
しかし、ここが他の国一宮と異なるのは「なぜ三つ存在するのか」という点です。

これは古代の政権構造や地域支配が三勢力(地域分布)に分かれていた可能性、または古代の祭祀圏が広域にまたがり統一されていなかった可能性など、研究者の間でも議論が続いています。

つまり、都々古別神社という存在は「古代の地方支配と祭祀体系」を示す重要な痕跡として扱われている神社なのです。

■不思議な話・伝承

この神社には源義家との関係が語られる伝承があります。前九年・後三年の役において、義家が必勝祈願を行ったとされ、その加護で戦を勝ち抜いたという伝承です。

また、神社周辺には「神鉾」の信仰も伝わり、武神的信仰と農耕神的信仰が混在しているという、非常に特徴的な二面性が残っています。

味耜高彦根命は元々農耕の神にもかかわらず、武運祈願との結びつきが強いのは、この「二層性」が古代東国の信仰観にあったからではないかとも考えられています。ここがまさにこの神社の面白さとも言えます。

■見どころ

・広々とした境内と古社の空気
派手さよりも「古層の空気」が強く、古代磐座信仰の余韻を感じられる場所です。

・三社をセットで理解する楽しみ
三社でひとつの大系を構成する神社は全国でも極めて珍しい存在です。

・義家伝承
東北の武門信仰の起点の一部を垣間見る事ができます。

■まとめ

都々古別神社は、東北古代史・武家の台頭・地域祭祀の複線性といった多様な歴史の交差点に立つ非常に魅力的な神社です。

特に三社が同名で一宮性を持つという点は全国的にも稀有であり、古代東国の政治構造を考察する上でも欠かせない存在といえます。

福島を訪れる際には、時間が許すなら三社を比較しながら巡る旅をおすすめします。歴史好きにこそ深く突き刺さる一社です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました