【神様図鑑】大宜都比売神(おおげつひめのかみ)|命を支える“食物神”と豊穣の女神

「いただきます」の背景にある“感謝”の心。
その根底には、自然からの恵みをもたらす神々の存在があります。

今回ご紹介するのは、穀物や食物を生み出す神
**大宜都比売神(おおげつひめのかみ)**です。


◆ 基本情報|大宜都比売神とは?

項目内容
神名大宜都比売神(おおげつひめのかみ)
別表記大気都比売神・大宜都姫命など
神格食物神・穀物神・自然の恵みの女神
系譜『古事記』では単独神、『日本書紀』では保食神と同一視されることも
ご神徳五穀豊穣・農業繁栄・食の安定・家内安全

◆ 大宜都比売神の神話

◎ 天照大神の命を受け、月読命が訪問

『古事記』や『日本書紀』によれば、
大宜都比売神は、天照大神の命により月読命(つくよみのみこと)から訪問を受けます。

その際、大宜都比売神は、口や鼻からさまざまな動物や穀物を出して料理を準備しました。
しかし、その様子を「汚らわしい」と感じた月読命は、
なんと彼女を斬り殺してしまうのです。

◎ 神の死と、命の誕生

大宜都比売神の遺体からは穀物が生まれました。

  • 頭から:粟(あわ)
  • 目から:稗(ひえ)
  • 耳から:小豆(あずき)
  • 鼻から:大豆(だいず)
  • 陰部から:麦(むぎ)
  • 尻から:稲(いね)

こうして、日本の主食である五穀が誕生したとされます。


◆ ご神徳と意味

大宜都比売神は、“命を犠牲にして他者を生かす”女神です。
この神話は、食べる=他の命をいただくことの根源的な意味を示しているとも言われます。

ご神徳意味
五穀豊穣穀物そのものを生み出した神であり、農業繁栄の守護神。
食の守護毎日の食卓の安全と感謝の象徴的存在。
命の循環自然の恵みが“命のつながり”の中で生まれていることへの気づき。
家内安全家族の「食」を守ることで、暮らしの安定につながる。

◆ どこに祀られている?

大宜都比売神は明確に「この神社の主祭神」というケースは少ないものの、
以下のような神社で祀られていたり、保食神や宇迦之御魂神と同一視されていることがあります。

神社名所在地備考
伊勢神宮 外宮(豊受大神宮)三重県伊勢市主祭神は豊受大神(食物神)。大宜都比売と類似。
伏見稲荷大社京都府宇迦之御魂神と同一視される場合がある。
大宜都比売命神社(旧社)各地に伝承あり。特定の地域に伝わる信仰として存在。

◆ 天照大神との関係と月読命の孤立

この神話の中で、大宜都比売神を斬った月読命は、
その行為を天照大神に咎められ、疎まれたとされています。

これにより、太陽と月が昼夜で分かれ、
「一緒に空に現れない理由」の神話的説明にもなっています。


◆ まとめ|「いただきます」の原点にある神

  • 大宜都比売神は、食べ物の神であり、
  • 自らの命を代償にして五穀を生み出した存在
  • その死から命が生まれるという、自然と命の循環を象徴する神です。

「いただきます」という言葉には、
他の命をいただいて自分が生きているという感謝と畏敬の念が込められています。

この日本人の精神の根底には、
まさにこの大宜都比売神の物語が、静かに息づいているのです。

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