日本神話において、国づくりの根幹をなす壮大なエピソード――
それが「天孫降臨(てんそんこうりん)」です。
天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫が、高天原(たかまのはら)から地上(葦原中国)へと降臨し、
日本の統治の礎を築いたとされる神話であり、天皇家の起源神話としても知られています。
◆ 天孫降臨とは?
「天孫」とは、天照大神の孫・邇邇芸命(ににぎのみこと)のこと。
天照大神は地上の国「葦原中国(あしはらのなかつくに)」を平定した後、
この地を自らの子孫に治めさせようと考えました。
そして、邇邇芸命に三種の神器を託し、天の八衢(やちまた)を越えて、
地上の**日向(現在の宮崎県高千穂)**へと降臨させたのがこの伝説です。
◆ 登場する主な神々と役割
神名 | 読み | 役割 |
---|---|---|
天照大神 | あまてらすおおみかみ | 太陽神。邇邇芸命の祖母で、天孫降臨を命じる主神。 |
邇邇芸命 | ににぎのみこと | 天照大神の孫。地上を統治するために降臨した「天孫」。 |
天児屋命 | あめのこやねのみこと | 降臨に同行する神。祝詞の神で、後に中臣氏(藤原氏)の祖。 |
布刀玉命 | ふとだまのみこと | 神事を司る神。玉や鏡など祭祀具を持つ神。 |
天宇受売命 | あめのうずめのみこと | 芸能の神。道案内と人心掌握に長ける。岩戸隠れでも活躍。 |
伊斯許理度売命 | いしこりどめのみこと | 鏡造りの神。八咫鏡(やたのかがみ)を鍛造した神。 |
玉祖命 | たまのおやのみこと | 勾玉造りの神。三種の神器の一つ「八尺瓊勾玉」の制作者。 |
天石門別神 | あまのいわとわけのかみ | 岩戸の守護神。降臨時に道を整える役目も。 |
猿田彦神 | さるたひこのかみ | 道案内の神。邇邇芸命一行を地上まで先導した神。 |
天鈿女命 | あめのうずめのみこと | 猿田彦と最も縁深く、のちに夫婦となる。 |
◆ 降臨の地:高千穂(宮崎県)
邇邇芸命が降り立った地は、
現在の**宮崎県高千穂町の「高千穂峰」**とされ、
そこには「天の逆鉾(あまのさかほこ)」が突き立てられたと伝えられています。
この地は現在も高千穂神社や霧島神宮など、
天孫降臨ゆかりの聖地として多くの人々が訪れています。
◆ 三種の神器と使命
邇邇芸命は、天照大神から**「三種の神器」**を託されます。
- 八咫鏡(やたのかがみ) – 真実と誠を象徴
- 草薙剣(くさなぎのつるぎ) – 武の力、正義の象徴
- 八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま) – 精神性と神聖の象徴
これらは天皇家の象徴として、現在も皇室に伝わっているとされます。
◆ 天孫降臨の意義
この神話は単なる物語ではなく、
**「日本の国家の始まり」**を神格化したものです。
- 天照大神の命による「統治の正当性」
- 三種の神器を通じた「皇位の継承」
- 神々の協力による「神と人との結びつき」
これらは、今なお神道の思想や祭祀、天皇家の存在意義に深く関わっています。
◆ まとめ|神の子孫が地上に降りた時、日本の歴史が始まった
「天孫降臨」は、日本の精神文化・信仰・歴史の核心にある神話です。
神々の命と意思を背負い、地上に舞い降りた邇邇芸命の足跡は、
今も日本各地の神社や祭りに息づいています。
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