【伝説図鑑】日本神話 (その1 天地創造と神々の誕生)

第1話:天地開闢(てんちかいびゃく)と神世七代

日本神話のはじまりは、宇宙創成——つまり「天地開闢(てんちかいびゃく)」から幕を開けます。何も存在しなかった混沌の中に、天と地が分かれ、そこに最初の神々が現れました。

最初に現れたのは、「造化三神(ぞうかさんしん)」と呼ばれる三柱の神々。

  • 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
  • 高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
  • 神産巣日神(かみむすひのかみ)

彼らは「独神(ひとりがみ)」として姿を見せると、何も語らず、すぐに姿を隠します。神々という存在は、はじめは無言で、世界の基礎を静かに整えていったのです。

その後、「宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)」など、次々と神々が生まれ、ついに七代目にして、男女の性を持った神——「伊弉諾尊(イザナギノミコト)」と「伊弉冉尊(イザナミノミコト)」が登場します。彼らは、いわば「創造神ペア」。このふたりの登場によって、物語は一気に動き出します。

神世七代とは、日本の天地創造期に登場する七代の神々のことで、人類以前の「神の世」の基礎を築いた存在です。彼らの系譜を辿ることが、日本の神社に祀られる神々のルーツを知る第一歩なのです。


【天地創造と神々の誕生】

第2話:イザナギとイザナミの国生み・神生み

天地開闢の後、天上界(高天原)から使命を受けたイザナギとイザナミは、混沌とした地上に秩序と形をもたらす「国生み(くにうみ)」を命じられます。

二神は「天の浮橋(あめのうきはし)」に立ち、「天の沼矛(あめのぬぼこ)」という神聖な矛で、下界の海をかき回しました。矛の先から滴り落ちた塩が固まり、「オノゴロ島」が誕生します。二神はこの島に降り立ち、結婚の儀を行い、そこから「国生み」が始まります。

誕生した島々には現在の日本の地名に通じる名が多く、淡路島、四国、本州などが神話の中で語られます。続いて「神生み(かみうみ)」へと進み、風・海・山・火など自然を司る神々を次々と生み出していきます。

しかし、悲劇は突然訪れます。イザナミが「火の神・迦具土神(カグツチ)」を産んだ際、大やけどを負って命を落としてしまうのです。

ここから先、日本神話は「生と死」「光と闇」の二元性を深く描いていきます。創造の喜びの裏に潜む、喪失の悲しみ。イザナギの怒りと絶望が、次の物語へと繋がっていきます。


【天地創造と神々の誕生】

第3話:黄泉の国と黄泉比良坂の別れ

愛する妻イザナミを失ったイザナギは、彼女を追って「黄泉の国(よみのくに)」へ向かいます。黄泉の国とは、死者の魂が行き着く冥界のような世界。地上とは逆さまの存在であり、生者が踏み入れてはならぬ禁断の場所です。

イザナギは黄泉の国の扉を開き、イザナミに「共に地上に戻ろう」と語りかけます。しかしイザナミは、「すでに黄泉の食べ物を口にしてしまった」と語り、地上には戻れないと告げます。

それでも諦めきれないイザナギは、彼女の姿を確認しようとします。約束を破って明かりを灯すと、そこには腐敗し、ウジにたかられたイザナミの姿が…。

「見ないで!」と叫ぶイザナミ。怒りと恥に包まれた彼女は、黄泉の軍勢を差し向け、イザナギを追いかけます。

命からがら地上へ戻ったイザナギは、「黄泉比良坂(よもつひらさか)」という境界の坂で巨大な岩を置き、二度と行き来できないように封じます。そして、イザナミにこう言い放ちます。

「汝とは、もう夫婦ではない」

それに対しイザナミは、「ならば、私は毎日千人を殺す」と叫び、イザナギは「ならば私は毎日千五百の子を産ませよう」と応じます。ここに“死と生の連鎖”の神話的な原型が描かれました。

この神話は、多くの神社の祭神構成に影響を与えており、「生と死の境界」を象徴する聖地には、今でも「黄泉比良坂」伝承の地が残されています。

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