はじめに
神社を訪れると、鳥居をくぐった先の参道や拝殿の前に、左右一対の獣の像があるのを見たことがあると思います。
それが「狛犬(こまいぬ)」です。
でも、よく見ると阿吽(あうん)の表情をしていたり、角があったりなかったり、場合によっては犬ではない動物だったりしますよね。
この記事では、狛犬の意味や由来をわかりやすく解説しつつ、「狛犬以外」の像が置かれている神社も紹介していきます。
1.狛犬とは?
■ 狛犬の基本的な役割
狛犬は、神社に悪いものが入ってこないように門番をしている守護獣です。
主に拝殿の前に**左右一対(いっつい)**で置かれており、神様のいる神域を守る存在とされています。
■ 名前の由来
「高麗(こま)」=朝鮮半島から渡来した文化の影響を受けた説が有力。
古代中国やインドの「獅子信仰」がルーツとされ、仏教伝来とともに日本にも入ってきました。
2.狛犬のデザインに隠された意味
❖ 阿吽(あ・うん)
- 口を開けている狛犬(阿形・あぎょう):「あ」は宇宙の始まり
- 口を閉じている狛犬(吽形・うんぎょう):「うん」は終わり
→ 2体で「始まりから終わりまで=すべてを守る」意味があります。
❖ 角のある・ないの違い
- 古い狛犬では、右が獅子、左が角付きの狛犬(または獅子)で対になっている例も。
- 時代や地域によって違いがあり、完全に犬とは限りません。
❖ 玉や子を抱えている
- 玉を持つ狛犬:「守護・力の象徴」
- 子獅子を抱く狛犬:「子孫繁栄・家内安全」
3.実は犬じゃない!? 狛犬以外が置かれている神社たち
日本には、「狛犬」の代わりに別の動物が置かれている神社が数多く存在します。
ここではその中でも特徴的なものを紹介します。
■ 狛狐(こまぎつね)|稲荷神社系
🦊代表例:伏見稲荷大社(京都府)
稲荷神の使いとされる狐は、「穀物の神・宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)」のお使い。
- 狛犬ではなく、左右に狐の像が鎮座
- 口に稲穂・鍵・巻物・玉をくわえていることが多い
- 商売繁盛や五穀豊穣の象徴
■ 狛龍(こまりゅう)|龍神信仰
🐉代表例:田無神社(東京都)/箱根神社(神奈川県)
水神・龍神を祀る神社では、龍の像が狛犬のように置かれている場合があります。
- 雨乞い、農耕、風水的な「気」の流れに関係
- 水の守り神として、境内の池や手水舎にも龍が多い
■ 狛狼(こまおおかみ)|山岳信仰系
🐺代表例:三峯神社(埼玉県)/武蔵御嶽神社(東京都)
狼は「大神(おおかみ)」とも書かれ、山の神の使い・守護神獣として信仰されてきました。
- 農作物を荒らす害獣を食べてくれる「守り神」
- 「お犬様信仰」と呼ばれる信仰形態
■ 狛羊(こまひつじ)|十二支守護や地域信仰
🐏代表例:松尾神社(京都市)など
干支やその地域の伝承にちなんだ動物が狛犬の代わりに置かれている例も。
- 辰年には龍、午年には馬などの像を祭ることもあり
- 狛羊は「平和・柔和・安産」の象徴として
■ 狛鼠・狛牛・狛猿なども!?
- 狛鼠 → 大黒天を祀る神田明神(東京都)など
- 狛牛 → 菅原道真公を祀る天満宮では「臥牛像」が有名
- 狛猿 → 日枝神社(東京都)は猿を神使とする
動物はそれぞれ神様の“お使い”として信仰されており、狛犬の形に限らないのが日本の神社の奥深いところです。
4.参拝時に注目してみよう|狛犬の見どころ
神社参拝の際には、ぜひ以下の点にも注目してみてください。
- 表情や装飾の違い
- 阿吽のバランス(どちらがどちら?)
- 手に何を持っているか
- 狛犬以外が置かれている場合、その神社の御祭神との関係
特に、地元の小さな神社ほどユニークな狛犬や神使の像があることが多いので、見つける楽しみも広がります。
おわりに|狛犬は神と人とをつなぐ「門番」であり「守り神」
狛犬は、日本人が「目に見えない存在」に敬意を払い、身近な存在として神様を迎えてきた文化の象徴です。
その形が犬であれ、狐であれ、龍であれ、そこには“神様を守る”という共通の信仰心が息づいています。
ぜひ次に神社を訪れる際は、狛犬の表情や姿に目をとめてみてください。
きっと、そこにも静かに神様が見守ってくれているはずです。
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