
神社の境内で、狛犬(こまいぬ)のかわりに狐や兎、猿の像を見かけたことはありませんか? それは「神の使い(神使:しんし)」とよばれる動物たちです。稲荷神社の狐、春日大社の鹿、天満宮の牛など、神様ごとに決まった動物がいます。この記事では、日本の神社で見られる代表的な神の使いを動物・神様・神社の一覧表にまとめ、それぞれの由来をわかりやすく紹介します。
神の使い(神使)とは?30秒でわかるまとめ
| 読み方 | 神使(しんし)。「神の使い」「つかわしめ」「御先(みさき=神様の先ぶれ)」ともよばれる |
| どんな存在? | 神様の意思を人の世界に伝えると考えられた、特定の動物。神様そのものと考えられることもある |
| 代表例 | 狐(稲荷神社)・鹿(春日大社・鹿島神宮)・猿(日吉大社)・牛(天満宮)・鳩(八幡宮)・烏(熊野三山)など |
| どこで会える? | 狛犬の位置に置かれた像、絵馬、おみくじ、授与品など |
| 種類 | けもの・鳥・魚・虫から、龍のような想像上の生きものまで幅広い |
※神使の定義と一覧は、Wikipedia「神使」などをもとにしています。由来は神社ごとの伝承で、諸説あるものもあります。
神の使いの動物一覧表(神様・神社つき)
よく知られている神の使いを、動物ごとにまとめました。気になる動物があれば、下の解説もあわせて読んでみてください。
| 動物 | 神様 | 主な神社・お寺 | ひとことで由来 |
|---|---|---|---|
| 狐(きつね) | 稲荷神(宇迦之御魂神など) | 伏見稲荷大社など全国の稲荷神社 | 稲荷神の使い。お稲荷さんといえば狐 |
| 鹿(しか) | 武甕槌命 | 春日大社・鹿島神宮 | 神様が白い鹿に乗って春日へ来たと伝わる |
| 猿(さる) | 山王権現(大山咋神) | 日吉大社・日枝神社 | 「神猿(まさる)」=魔が去る・勝る |
| 牛(うし) | 菅原道真(天神さま) | 全国の天満宮・天神社 | 道真公と牛にまつわる伝承が多い |
| 鳩(はと) | 八幡神(応神天皇) | 全国の八幡宮 | 八幡神の使いとされる |
| 烏(からす) | 熊野の神々 | 熊野本宮大社など熊野三山 | 八咫烏が神武天皇を道案内した |
| 狼(おおかみ) | 伊弉諾尊・伊弉冉尊(三峯神社の御祭神)など | 三峯神社・武蔵御嶽神社 | 「お犬様」(神名は大口真神)。日本武尊を道案内したと伝わる |
| 鶏(にわとり) | 天照大神 | 伊勢神宮・熱田神宮・石上神宮 | 天岩戸の神話で、夜明けを告げる鳥 |
| 兎(うさぎ) | 神社によってことなる(調神社は天照大御神ほか) | 調神社・住吉大社・岡崎神社 | 調神社は「つき=月」、住吉大社は卯の日の伝承 |
| 猪(いのしし) | 和気清麻呂(わけのきよまろ) | 護王神社・和気神社 | 猪が清麻呂を守ったと伝わる |
| 亀(かめ)・鯉(こい) | 大山咋神 | 松尾大社 | 神様が保津川をさかのぼるとき、鯉と亀の背に乗ったと伝わる |
| 鰻(うなぎ) | 三嶋大明神 | 三嶋大社 | 神池の鰻が神の使いとされた |
| 鼠(ねずみ) | 大黒天(音が同じことから大国主命と結びつけられた) | 大黒天をまつる寺社 | 神話で鼠が大国主命を火から救った |
| 蛇(へび) | 大物主神・弁財天 | 大神神社・弁財天の社 | 三輪山の神が蛇の姿で現れた神話 |
| 龍(りゅう) | 水の神 | 神泉苑・恩智神社 | 雨や水をつかさどる想像上の生きもの |
| 鷺(さぎ) | 氣比大神 | 気比神宮 | 由来は諸説あり(Wikipedia「神使」の一覧による) |
| 虎(とら) | 毘沙門天 | 朝護孫子寺 | 寅の年・日・刻に毘沙門天が現れたと伝わる |
代表的な神の使いの由来をくわしく解説
狐(きつね)―稲荷神社の神の使い
いちばん有名な神の使いが、お稲荷さんの狐です。稲荷神社の狐は、稲荷神(宇迦之御魂神など)の使いであって、狐そのものが神様ではありません。総本宮の伏見稲荷大社では、稲穂や鍵をくわえた狐の像に出会えます。
鹿(しか)―春日大社・鹿島神宮の神の使い
春日大社の武甕槌命(たけみかづちのみこと)は、春日大社の祭神の一柱です。常陸国(いまの茨城県)の鹿島神宮から、白い鹿に乗って奈良の御蓋山(みかさやま)へ来たと伝わります。そのため鹿は神の使いとして大切にされ、奈良公園の鹿もその流れをくんでいます。
猿(さる)―日吉大社・日枝神社の「神猿(まさる)」
山王権現をまつる日吉大社や日枝神社では、猿が神の使いです。「まさる」とよばれ、「魔が去る」「勝る」に通じることから、魔除けや勝運の縁起物とされています。
牛(うし)―天満宮の神の使い
学問の神様・菅原道真公をまつる天満宮では、牛が神の使いです。道真公が丑年生まれとする話や、亡きがらを運ぶ牛が動かなくなった場所に葬られた話など、牛にまつわる伝承が多く残ります(理由には諸説あります)。くわしくは「【神社めぐり】天神社になぜ牛がいるの?」へ。
烏(からす)―熊野三山の八咫烏
熊野三山の神の使いは、三本足で描かれることの多い八咫烏(やたがらす)です。神武天皇が熊野から大和へ向かうとき、道案内をしたと伝わります。そのため「導きの神」として信仰されています。
狼(おおかみ)―三峯神社・武蔵御嶽神社の「お犬様」
秩父の三峯神社では、日本武尊(やまとたけるのみこと)を道案内した山犬(狼)を、大口真神(おおくちのまがみ)「お犬様」としてうやまっています。火防(ひぶせ)や盗難除けの守り神です。お犬様のお札を1年間お借りする「御眷属拝借(ごけんぞくはいしゃく)」という習わしもあります。奥多摩の武蔵御嶽神社でも、お犬様が信仰されています。
兎(うさぎ)―調神社・住吉大社の神の使い
さいたま市の調神社(つきじんじゃ)には、狛犬のかわりに狛兎(こまうさぎ)がいます。社名の「つき」が「月」に通じ、月待信仰とむすびついて、月の使いの兎が守り神になったといわれます。住吉大社でも兎が神の使いとされ、鎮座が卯(う)の年・月・日だったという伝承にちなみます。京都の岡崎神社も兎で知られ、むかしこのあたりに野兎が多かったこと、子だくさんの兎が子授けにつながることが由来といわれます。
猪(いのしし)―護王神社の神の使い
京都の護王神社は和気清麻呂(わけのきよまろ)をまつる神社です。清麻呂が道鏡(どうきょう)の事件で命をねらわれたとき、猪の群れに守られ、足のけがも治ったと伝わります。そのため「いのしし神社」ともよばれ、足腰の守護で知られています。
亀・鯉(かめ・こい)―松尾大社の神の使い
京都の松尾大社では、神様の大山咋神(おおやまくいのかみ)は、国を拓くため保津川(ほづがわ)をさかのぼりました。急な流れは鯉、ゆるやかな流れは亀の背に乗ったと伝わります。亀は不老長寿、鯉は出世開運のしるしとされ、本殿正面の門の左右には「幸運の撫で亀」と「幸運の双鯉(そうり)」の像があります。
鰻(うなぎ)―三嶋大社の神の使い
静岡県の三嶋大社では、神池にすむ鰻が神の使いとされ、むかしは食べることがつつしまれたといわれます。いまの三島が鰻の名所なのは、少しふしぎな組み合わせですね。
鼠(ねずみ)・蛇(へび)・鶏(にわとり)―神話から生まれた神の使い
『古事記』では、野火にかこまれた大国主命(おおくにぬしのみこと)を、鼠が穴へ導いて救います。大黒天は、「だいこく」の音が同じことから大国主命と結びつけられました。大黒天の使いが鼠なのは、このためといわれます。
奈良の大神神社の大物主神(おおものぬしのかみ)は、蛇の姿で現れる神話で知られます。蛇は弁財天の使いともされ、なかでも白蛇は縁起がよいとされます。
鶏は、天照大神が天岩戸にこもったとき、八百万(やおよろず)の神々が夜明けを告げるために鳴かせた「常世の長鳴鳥(とこよのながなきどり)」にちなみます。Wikipedia「神使」の一覧では、伊勢神宮・熱田神宮・石上神宮(いそのかみじんぐう)が鶏の神社に挙がっています。石上神宮の境内では、鶏が放し飼いにされています。
そのほかの神の使い(日本の神社・お寺)
一覧表のほかにも、神の使いとされる生きものはたくさんいます。
※Wikipedia「神使」の一覧による。また、虎は朝護孫子寺の毘沙門天の使いで、寅の年・寅の日・寅の刻に毘沙門天が現れたという寺の伝えにちなみます。龍は雨や水をつかさどる想像上の生きもので、京都の神泉苑(しんせんえん)などで信仰されています。山にすむ天狗も、山の神や仏に仕える存在として語られることがあります。
狛犬のかわりに神の使いがいる神社
神の使いは、参道で狛犬のかわりに置かれていることがあります。稲荷神社の狐、調神社や岡崎神社の兎、三峯神社の狼、護王神社の猪などが有名です。天満宮では、境内に臥牛(ねうし)の像が置かれています。お参りのときは、足元の像が何の動物かを見るだけでも、その神社の神様がわかって楽しくなります。狛犬そのものの意味は「【基礎知識】神社の「狛犬」とは?」で紹介しています。
神の使いについてよくある質問
Q. 神の使いと神様はちがうの?
A. 基本的には、神様の意思を伝える「お使い」です。ただし、大神神社の蛇のように、神様そのものの姿と考えられることもあります。
Q. 「眷属(けんぞく)」とは?
A. もとは仏教のことばで、仏や神に従う者たちを指します。神の使いを「眷属」とよぶこともあり、三峯神社の「御眷属拝借」はその例です。
Q. 神の使いの動物を食べてもいいの?
A. 地域によっては、むかし食べるのをつつしんだ例もあります。三嶋大社の鰻はその一つです。いまは三島が鰻の名所になっているように、ふだんの食事まで禁じられているわけではありません。
Q. 日本でいちばん有名な神の使いは?
A. 全国に数多くある稲荷神社の狐でしょう。つづいて、奈良の鹿、天満宮の牛、八咫烏などがよく知られています。
まとめ
神の使い(神使)は、神様と人をつなぐ特別な動物です。狐・鹿・猿・牛・鳩・烏などは、それぞれの神社の神話や伝承と深くむすびついています。神社を訪れたら、狛犬の位置や絵馬、おみくじに描かれた動物に注目してみてください。その神社の神様の物語が、ぐっと身近に感じられるはずです。
参考:Wikipedia「神使」、各神社の由緒の紹介(三峯神社・松尾大社・三嶋大社・調神社・護王神社など)

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