【神様図鑑】仁徳天皇（にんとくてんのう）

〜民のかまどの煙を見つめた慈愛の帝〜

■ 仁徳天皇とは

仁徳天皇（にんとくてんのう）は、日本第16代の天皇であり、
「聖帝（ひじりのみかど）」とも称される、慈悲深く民を思う天皇として伝えられています。

その御代は平和で豊かであり、のちの世に「仁政（じんせい）」の象徴として語り継がれました。

特に有名なのが、「民のかまどの煙」の逸話。
民の暮らしを第一に考え、税を免除して国を立て直したというお話は、
日本史上に残る“理想の君主像”を示しています。

仁徳天皇は、神功皇后・応神天皇の血を引く王統であり、
古事記や日本書紀では、神代と人代をつなぐ聖なる王として描かれています。

ある日、仁徳天皇は高台から都（難波）を眺めていました。
すると、どの家からも炊煙（かまどの煙）が上がっていないことに気づきます。

「これは民が貧しく、炊く米も無いということか…」

と、天皇は深く憂い、3年間、民からの租税（みつぎ）を免除し、
宮殿の修理すらも後回しにして民の暮らしを優先しました。

やがて3年後、再び山から都を見下ろすと、今度は多くの家から煙が上がっていました。

「民が豊かになった今こそ、我も豊かである。」

と、天皇は喜び、国中が安寧に包まれたと伝えられています。

この逸話は、後世の日本人にとって“理想のリーダー像”の象徴となりました。

仁徳天皇は、現在の大阪にあたる**難波（なにわ）**に都を築いたことで知られています。
「難波高津宮（なにわたかつのみや）」と呼ばれ、
海に面し、交易や交通の要衝となる理想的な場所に建てられました。

この地は「大阪のはじまり」とも言われ、
古代日本の政治・文化の中心地として栄えたと伝わります。

仁徳天皇の御陵として知られるのが、
大阪府堺市にある大仙陵古墳（だいせんりょうこふん）、通称「仁徳天皇陵」。

その規模は世界最大級を誇り、エジプトのピラミッド、中国の秦始皇帝陵と並ぶ「世界三大墳墓」の一つとされます。

前方後円墳の代表例として、5世紀の古代日本の権力と技術力を象徴しています。

仁徳天皇は、「民を愛した聖帝」として、次のようなご利益があると信仰されています。

仁徳天皇は、神話時代の神々のように雷や火を操る存在ではありません。
しかし、**「人の心に寄り添う神」**として、日本人の精神文化に深く根づいています。

彼の治世は“神々の時代”の終焉と、“人間による政治”の始まりを象徴しており、
その温かく誠実な統治は「仁の心」の原型として崇敬されています。

「民の安らぎこそ、我が喜び。」

この言葉に象徴されるように、仁徳天皇は「人を想うことの尊さ」を教えてくれる存在です。
リーダーである前に、一人の“思いやりの人”であったことが、
今日まで多くの日本人に感動を与え続けています。

仁徳天皇は、神話のような奇跡を起こしたわけではありません。
しかし、**人の幸せを第一に考える“人間味あふれる神”**として、
今も多くの神社で祀られ、敬われています。

政治・仕事・家庭、どんな場面でも「仁の心」を忘れずにいること。
それが、仁徳天皇が現代を生きる私たちに伝えたい教えなのかもしれません。