【神社めぐり】下総国一之宮・香取神宮 ─ 日本武尊も敬った東国鎮護の大神

■ はじめに

千葉県香取市に鎮座する「香取神宮(かとりじんぐう)」は、下総国一之宮にして、全国に約400社ある香取神社の総本社です。
創建は神武天皇18年(紀元前643年)とも伝えられ、日本書紀にもその名を残す古社。
鹿島神宮の武甕槌大神と並び、国家の守護神として古代より朝廷から厚く崇敬されてきました。

「東国三社」(香取神宮・鹿島神宮・息栖神社)の一つとしても知られ、かつては伊勢参りと並ぶほどの格式ある巡礼地として、全国から多くの参拝者が訪れています。


■ 御祭神

経津主大神(ふつぬしのおおかみ)

経津主大神は、日本神話に登場する武神で、鹿島の武甕槌大神とともに「国譲り神話」で活躍した神です。
大国主命に国を譲るよう説得し、日本の平和を実現したとされる勇猛な神で、古くから「勝運」「厄除」「交通安全」「国家鎮護」の神として信仰を集めてきました。


■ 由緒・歴史

香取神宮の創建は、神武天皇の御代と伝えられるほど古く、実に2600年以上の歴史を誇ります。
古代から中世にかけては、東国の鎮護・蝦夷平定の守護神として、歴代天皇や将軍たちから篤く崇敬されました。

特に奈良・平安時代には「官幣大社」に列し、「鹿島・香取両社」は朝廷直轄の特別な神社として重要視されていました。
源頼朝や徳川家康など、名だたる武将たちも戦勝祈願に訪れたと伝えられます。


■ 主な見どころ

◉ 総門と楼門(重要文化財)

香取神宮の象徴的な建築物。総門をくぐると、朱塗りの壮麗な楼門が姿を現します。
この楼門は徳川家康の命によって建立されたもので、荘厳で華やかな造りが印象的です。春の桜や秋の紅葉とも見事に調和します。


◉ 本殿(重要文化財)

現在の本殿は、1700年(元禄13年)に徳川綱吉が寄進したもの。
黒漆塗りの重厚な建築は、神の威厳と格式を感じさせます。
本殿・幣殿・拝殿の三棟が一直線に並ぶ「権現造」は、香取神宮独特の美を放っています。


◉ 要石(かなめいし)

鹿島神宮と同様に、香取神宮にも「要石」があります。
こちらは「地震を起こす大鯰の尾」を押さえていると伝えられ、鹿島神宮の要石が頭を押さえることで、日本列島を安定させているといわれます。
地中深く埋まるこの石は、掘っても掘っても全貌が見えない「不思議な石」として古くから信仰の対象となってきました。


◉ 奥宮(おくのみや)

本殿から少し離れた森の中にある奥宮は、経津主大神の荒魂(あらみたま)を祀る場所。
戦いの神としての側面を強く感じる神域で、静寂の中に凛とした気が漂います。
参道の木漏れ日が美しく、心を落ち着かせる散策路としても人気です。


◉ 御手洗池(みたらしいけ)

参拝前に身を清めるための池。古代にはこの池で禊を行ってから神前に進む習わしがありました。
今も澄み切った水面が神聖さを湛え、訪れる人々に穏やかな癒しを与えてくれます。


■ 香取神宮のご利益

  • 勝運上昇(経津主大神の武神としてのご神徳)
  • 厄除け・災難除け
  • 交通安全・航海安全
  • 国家鎮護・平安祈願

スポーツ選手や受験生、ビジネスパーソンなど、勝負事に関わる人々からも厚く信仰されています。


■ アクセス情報

  • 所在地:千葉県香取市香取1697
  • アクセス:JR成田線「佐原駅」からタクシーで約10分
  • 駐車場:あり(無料)

■ 東国三社まいり

香取神宮は、鹿島神宮・息栖神社とともに「東国三社」として巡拝することで大きなご利益があるとされています。
江戸時代には「一生に一度は伊勢参り、二度目は東国三社まいり」といわれたほど。
香取神宮の「要石」、鹿島神宮の「要石」、息栖神社の「忍潮井」を巡れば、地・天・水の三つの力を得るとされています。


■ まとめ

香取神宮は、東国の守護神として、千年以上にわたって人々を見守り続けてきた古社です。
その静寂な森と気高い社殿、そして伝説を感じさせる要石。
どこを歩いても神聖な気が漂い、まるで古代の日本に足を踏み入れたような感覚になります。

鹿島神宮とともに参拝すれば、東国の地に宿る“武神の力”をより強く感じることができるでしょう。
ぜひ「東国三社巡り」で、その神秘と歴史を肌で感じてみてください。

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