■ 概要
福岡県福岡市東区志賀島に鎮座する**志賀海神社(しかうみじんじゃ)**は、「海神(わたつみ)の総本社」として全国の海神信仰の中心に位置づけられる神社です。
地元では「しかのうみさん」「しかみさま」と親しまれ、古くから海上安全・漁業繁栄・航海守護の神として厚く信仰されています。
志賀島は古代より大陸との交易の拠点として栄えた場所で、志賀海神社はその海上交通の守護神として、歴史の深い信仰を今に伝えています。
■ 歴史と由緒
志賀海神社の創建は明確ではありませんが、記録によれば約1800年前の神功皇后の時代にまでさかのぼるといわれます。
神功皇后が三韓征伐の際、航海の安全を祈願し、志賀島の海神に祈りを捧げたことが創祀の始まりと伝承されています。
『日本書紀』や『万葉集』にも「志賀の海神」「綿津見神(わたつみのかみ)」としてその名が登場し、古代より朝廷の崇敬を受けてきました。
また、志賀島は**「金印」**が出土した場所としても有名であり、まさに日本古代史の舞台の一つでもあります。
■ ご祭神とご利益
◯ 主祭神
- 底津綿津見神(そこつわたつみのかみ)
- 中津綿津見神(なかつわたつみのかみ)
- 表津綿津見神(うはつわたつみのかみ)
この三柱の神は、総称して「綿津見三神(わたつみのさんしん)」と呼ばれます。
彼らは海を三層(底・中・表)に分け、それぞれを司る神々であり、海そのものの神格化です。
◯ ご利益
- 海上安全・航海守護
- 漁業繁栄・商売繁盛
- 厄除開運・交通安全
- 国家安泰
古来、海と共に生きる人々にとって、志賀海神社は「命を守る神」でした。
そのため、現在でも漁業関係者や船員、さらには海上自衛隊関係者まで、幅広い人々が参拝に訪れています。
■ 「海神の総本社」と呼ばれる理由
志賀海神社は、古代の官社制度でも特に高い地位を与えられ、「海人(あま)族」の総氏神として崇敬されてきました。
この海人族は、海の民として航海や漁業に秀で、朝廷に仕えた海洋民の一族。
その中心的存在であったのが「阿曇(あずみ)氏」であり、彼らが代々志賀海神社の神職を務めてきました。
このことから、志賀海神社は“海人の総本社”、すなわち海の神々を祀る最高位の神社とされているのです。
■ 社殿と境内の見どころ
志賀海神社は、海と山の境目にある静かな鎮守の森の中に建っています。
境内からは志賀島の美しい海が見渡せ、晴れた日には遠く玄界灘まで望むことができます。
◯ 本殿
朱塗りの社殿が美しく、海風に映える荘厳な雰囲気。
現在の社殿は江戸時代中期に再建されたもので、歴史と神秘を感じさせます。
◯ 鹿角堂(ろっかくどう)
境内にある小さな社殿には、古来より奉納された鹿の角が5,000本以上も納められています。
これは、志賀海神社の「志賀(しか)」という地名にちなむとも言われ、また、鹿が“神の使い”とされたことに由来します。
この鹿角堂は、全国的にも非常に珍しい神秘的な光景です。
◯ 潮井の浜(しおいのはま)
志賀海神社のすぐ近くには「潮井の浜」と呼ばれる清めの砂浜があります。
ここで砂を採り、お祓いやお清めに使う習慣が古くから伝わっています。
■ 年中行事
- 潮井取り(4月):浜で砂を採取して身を清める神事。
- 例大祭(10月):海上安全と豊漁を祈願する大祭で、地域の人々で賑わいます。
- 志賀海神社御遷座祭(12年ごと):御神体を新しい社殿にお遷しする神聖な祭儀。
これらの行事は、いずれも「海と共に生きる民」の祈りを今に伝える伝統です。
■ アクセス情報
- 所在地: 福岡県福岡市東区志賀島877
- アクセス:
・西鉄バス「志賀島」停留所から徒歩約10分
・博多駅から車で約40分 - 駐車場: あり(無料)
■ まとめ
志賀海神社は、福岡の海に生きる人々を守り続けてきた**「海神信仰の中心」**です。
海の恵みとともに生きる日本人の精神を今に伝える場所であり、その静けさと厳かさは訪れる者の心を深く打ちます。
波の音を聞きながら参道を歩けば、まるで海の神々に包まれるような感覚に。
恋愛・仕事・人生の“流れ”を整えたい人にも、まさにぴったりのパワースポットです。
太宰府天満宮・竈門神社と合わせて「福岡の神域めぐり」として訪れるのもおすすめです。

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