兵庫県宍粟市一宮町に鎮座する「伊和神社」は、播磨国一宮として古くから特別な崇敬を集めてきた大社です。播磨国を語る上では欠かせない中心神社であり、国史にもその名が明確に記される古社のひとつ。今回はその歴史的背景、社伝に見られる特徴や、不思議な話として伝わるものを中心に紹介します。
主祭神
大己貴神(大国主命)
日本神話における国造りの主役とも言える神で、伊和神社ではまさに播磨国の国土開拓の神として信仰されてきました。
歴史と由緒
『日本書紀』にも「伊和大神」として登場するほど古い歴史を持つ神社です。
延喜式神名帳にも名が載る式内大社であり、播磨国では「一宮」として最も格式が高いと位置付けられてきました。
社伝では、大己貴神が播磨国開拓の際、この地に宮居を定めたとされ、そこから国造りが広がったと伝えられています。
特に宍粟郡一帯は縄文・古墳の遺跡も多く、古代から人の営みが濃密に存在した土地。
それを印象付けるのが、伊和神社の境内の持つ、原始的な森の雰囲気と水の豊かさです。
見どころ
・本殿の背後に広がる深い杜
・広い境内に残る古代信仰の空気
・播磨一宮としての荘厳な社殿構造
・例祭を中心とした古式祭祀の継承
特に本殿裏側の森は、ただの装景ではなく「祀られている土地自身」を強く感じることができる空間です。
また伊和神社は摂社・末社も多く、各神社の配置の中に「この地が一体として神域を形成していた」ことを感じ取ることができます。
不思議な話・伝承
伊和神社には「伊和大神が国土を踏み固めた」という伝説が残っています。
大己貴神が南へ歩むと、その足跡が播磨の土地を形作り、農耕や生活の基盤が整ったという伝承があり、それは「大地をつくり、人の暮らしを作った神」としてのイメージを強く残しています。
また、伊和神社は大国主命信仰の根源性が非常に強いと言われ、多くの学者や研究者から「大国主神信仰の原点を感じられる場所」として取り上げられることがあります。
まとめ
伊和神社は、播磨国という地域そのものの「成り立ち」と「神と人が一体で成立していた古代の感覚」を体現している神社です。
特に日本神話の国造りを深く学びたい人にとっては、伊勢・出雲と並べて視野に置きたくなるほどの重要性を持っています。
兵庫の神社巡りの中でも、伊和神社は中心に据える価値のある一社と言えます。
土地の空気そのものを肌で感じながら歩くと、古代播磨の神話と現実が重なり合う、独特の感覚が得られる場所です。

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