【伝説図鑑】八咫鏡(やたのかがみ)

――日本の“太陽神の真実を映す鏡”

◆八咫鏡とは

八咫鏡(やたのかがみ)は、日本神話における「三種の神器」の一つ。
三種の神器の中では 「知(智慧)」や「真実」を象徴するとされ、皇位継承の象徴として現代まで語り継がれる霊鏡です。

「八咫」とは「非常に大きい」「広い」を意味する古語。
単純な物理的な鏡ではなく、 神意・真実を照らし出す鏡という概念が深く重ねられています。

そして現在、実物とされるものは伊勢神宮 内宮(皇大神宮)に鎮座される 天照大御神の御神体として安置されていると伝わっています。

◆誕生と伝説 ― 天岩戸の神話

八咫鏡が神話に登場するのは「天岩戸」神話。

天照大御神が天岩戸へ隠れ、世界が闇に包まれた時、
八百万の神々は再び太陽を呼び戻すため、鏡を用いて儀式を行いました。

アメノコヤネ、フトダマらの神々が鏡や玉を飾り、
アメノウズメが踊り、岩戸の外が賑やかになると――

天照大神が岩戸から少し顔をのぞかせた瞬間、
鏡に映った自分の姿を見て驚いたとされています。

この場面は極めて象徴的で

  • 八咫鏡は太陽の神そのものを映す鏡
  • 神の光(真実)を取り戻す力を持つ霊具

としての役割を確立しました。

◆「鏡は我が御魂ぞ」

神話の中で天照大神はこの八咫鏡に対し

「この鏡を我が御魂と思って祀れ」

と宣言します。
つまり、八咫鏡は単なる儀式道具ではなく

= 天照大神自身を象徴する存在

となったのです。

◆皇室と八咫鏡

三種の神器は
「八咫鏡(鏡)」「草薙剣(剣)」「八尺瓊勾玉(玉)」の “鏡・剣・玉” で構成。

その中でも鏡は特に天照大神の御魂として扱われ、
歴代天皇の皇位継承と深く結びつけられました。

天皇と神を結ぶ中心的象徴であり、
皇室祭祀の根幹をなす道具と位置づけられています。

◆八咫鏡が祀られる神社

・伊勢神宮 内宮:御神体
・伊勢神宮別宮の「荒祭宮」
・熱田神宮(草薙剣を祀るが鏡伝承にも関連)
・各地の天照大神・日神信仰の神社

※実物として外に出ることはなく、詳細は秘されています。

◆まとめ ― 八咫鏡の象徴するもの

  • 真実・智慧
  • 宇宙の秩序と光
  • 天照大神そのもの

鏡は「うつす」道具でありながら
人の心を映し、正邪を照らし出す象徴として長く尊ばれてきました。

八咫鏡はただの遺物伝承ではなく、
日本そのものの精神世界を象徴する概念といえる存在です。

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