『日本書紀(にほんしょき)』は、720年に成立した日本最古の正史であり、天武天皇の発意のもと、舎人親王らによって編纂された国家公式の歴史書です。
古代日本が国家として「自らの歴史と権威」を明確に打ち出すためにまとめられた書物であり、以後の歴史認識に決定的な影響を与えました。
同時期に成立した『古事記』と並んで「記紀」と総称され、古代神話・神々の系譜・国の成立・天皇の系譜と統治理念が記されています。
■『日本書紀』の特徴
1. 国家公式の歴史書
『日本書紀』は「正史」です。
国家が公式記録として編纂し、国内外に示すための歴史書であり、外交文書としての要素も強く、中国王朝の史書の形式にあわせた編年体で編集されています。
2. 神話から天武天皇まで
内容は天地開闢から神代、日本の建国、歴代天皇の治世を丹念に記録し、最後は持統天皇の巻で締めくくられます。
日本国家の原初がどのように認識されていたか、その思想と国家観がそこに示されています。
3. 中国史書との関連を意識
漢文で書かれ、国際的な歴史認識の枠組みに合わせることに強い意識がありました。
日本が一国家として「中華文明圏」と対等な文化国家であることを対外的に示すことも重要な目的でした。
■神話の価値と魅力
『日本書紀』は単なる歴史書ではなく、国家神話を体系化した資料でもあります。
天照大御神、素戔嗚尊、八岐大蛇、出雲国譲り、神武東征など
日本人の精神文化の根幹となる物語群は、この書物から大きく広まり、神道・皇室文化・国家観・日本文化全体の価値観を形成する基礎となりました。
神話を理解することは、日本文化の根底を理解することでもあります。
■現代において読む意味
歴史研究、神話研究、日本文化史において欠かせない資料であるだけでなく
日本人が無意識に共有している「価値観の原型」を読み解く鍵にもなります。
- なぜ日本は海と山に神が宿る文化なのか
- なぜ天皇は今も文化の中心に存在するのか
- 神を恐れ敬う規範感覚はどこから生まれたのか
これらは記紀神話を通して見えてくる問いです。
まとめ
『日本書紀』は、日本という国の歴史と精神を体系化した根源的書物。
神話と史実の境界を含みながら、それをひとつの通史としてまとめあげた国家叙事の書。
神社巡りや日本神話を学ぶ上で
『日本書紀』という視点を持つ事は、信仰・歴史・文化の全体像を捉える大きな助けになります。
神話を読むことは単なる昔話の把握ではなく、「日本の原点に触れること」なのです。


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