■ 土宮とは ― 大地の神を祀る別宮
伊勢神宮・外宮(豊受大神宮)の別宮のひとつである**土宮(つちのみや)**は、外宮の境内南側、勾玉池のほとりに鎮座しています。
外宮の四つの別宮(多賀宮・土宮・月夜見宮・風宮)のうちの一社であり、大地を守護し、土地の安寧を司る神として信仰されています。
御祭神は、
大土乃御祖神(おおつちのみおやのかみ)。
この神は「国土の神」すなわち地そのものの神格化であり、**豊受大神が鎮まる外宮の土地を守る地主神(じぬしのかみ)**として、古くから大切に祀られてきました。
■ 創建と由緒
『延暦儀式帳』(平安時代初期の記録)にもその名が見える古社で、外宮鎮座当初から祀られていたと伝わります。
豊受大神宮の造営にあたり、この土地を守る神を鎮めるために建てられたのが土宮です。
平安時代の初期にはすでに現在地に社殿が存在し、社殿の方角も他の別宮とは異なり、南向きではなく東向きに建てられています。これは、この地にあった「祓川(はらいがわ)」の方向に向けて祭祀が行われていたためといわれています。
■ 土宮のご神徳
土宮の神徳は一言でいえば、「土地を守る力」「建築・農業・国土安泰」です。
そのため、古来より地鎮祭(じちんさい)や土木工事の安全祈願といった祈りと深く関わりがあります。
外宮に参拝する人々は、豊受大神に感謝の祈りを捧げたのち、この土宮を訪れ、大地の安定・家屋の基礎の守護・土地の神の加護を願います。
現代でも、建設業関係者や農業関係者から篤く信仰されています。
■ 社殿と周辺の見どころ
土宮の社殿は、他の別宮と同じく唯一神明造(ゆいいつしんめいづくり)。
白木造りの簡素でありながら荘厳な佇まいで、外宮の森の中にひっそりと立っています。
すぐ隣には**風宮(かぜのみや)**があり、こちらは風の神「級長津彦命・級長戸辺命」が祀られています。
また、土宮の背後には「祓川」が流れ、古来よりこの地で穢れを祓う神事が行われてきました。自然と一体化した神域の雰囲気は、まさに「大地の神の社」にふさわしい静けさです。
■ 祭礼と神事
毎年行われる代表的な神事としては、
- 月次祭(つきなみさい)(毎月中旬)
- 風日祈祭(かざひのみのまつり)(5月14日・8月4日)
があります。
特に風日祈祭では、風宮とともに土宮も祭典の対象となり、農作物の豊穣と国土の安定を祈願します。
■ アクセス情報
所在地: 三重県伊勢市豊川町
アクセス:
- JR・近鉄「伊勢市駅」より徒歩約10分
- 外宮の正宮参拝後、勾玉池のほとりを進むと土宮へ至ります。
■ まとめ ― 「大地への感謝」を形にする社
外宮別宮・土宮は、表立って華やかな社ではありませんが、伊勢神宮の祭祀の根幹を支える重要な存在です。
私たちが日々立つ大地、その安定を願う祈りの象徴であり、豊受大神の御神徳を支える基礎でもあります。
外宮を訪れる際は、ぜひ足を延ばして土宮にも参拝し、
「今日もこの地に立てること」への感謝を心に刻んでみてください。


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