【名所めぐり】天安河原 ― 神々が集った伝説の洞窟

■ 天安河原とは

宮崎県西臼杵郡高千穂町にある天安河原(あまのやすがわら)は、日本神話において天照大神が天岩戸に隠れた際、八百万の神々が集まって話し合いをした場所と伝えられる神聖な地です。

その名は『古事記』や『日本書紀』に記される「天の安河(あまのやすかわ)」に由来し、現在も神々が会議を開いたとされる洞窟が残っています。
この場所は、神話の舞台を実際に体感できる日本屈指のパワースポットとして、多くの参拝者や観光客に親しまれています。


■ 神話の背景

神話によれば、**天照大神(あまてらすおおみかみ)**が弟・**須佐之男命(すさのおのみこと)**の乱暴な振る舞いに怒り、天岩戸(あまのいわと)に籠ってしまいました。

世界は光を失い、暗闇に包まれます。
困り果てた神々は、天照大神を再び世に出すためにこの河原に集まり、**「どうすれば光を取り戻せるか」**を話し合いました。

その結果、女神・**天宇受売命(あめのうずめのみこと)が岩戸の前で舞を披露し、神々の笑い声に誘われた天照大神が岩戸を少し開けた瞬間、力自慢の手力男命(たぢからおのみこと)**が岩戸を開けて光が戻った――。

この伝説の舞台こそ、天安河原なのです。


■ 天安河原の景観

● 天の岩屋(あまのいわや)

天安河原のシンボルともいえるのが、全長約40メートル、幅約30メートルにも及ぶ巨大な岩屋。
川沿いの谷間に突如現れるその姿は圧巻で、自然がつくり出したとは思えないほどの神々しさを放っています。

岩屋の中には小さな祠「天安河原宮(あまのやすがわらぐう)」があり、**思兼神(おもいかねのかみ)**が祀られています。
思兼神は知恵と知略の神で、八百万の神々の議論をまとめた知恵者として信仰されています。


■ 石積みの風景

洞窟内には、参拝者が願いを込めて積み上げた無数の小石の塔が並びます。
静寂の中に響く川のせせらぎと、薄暗い洞窟を照らす柔らかな光のコントラスト――。

この幻想的な光景は、「神々が今も集い、語り合っているようだ」と言われ、訪れた人々の心を自然と清めてくれます。


■ アクセスと行き方

  • 所在地:宮崎県西臼杵郡高千穂町岩戸
  • アクセス
     高千穂町中心部から車で約15分
     天岩戸神社西本宮の参道を徒歩約10分(谷道を歩くため、スニーカーなど歩きやすい靴がおすすめ)
  • 駐車場:天岩戸神社の駐車場を利用(無料)

※参道は川沿いの細道を進みます。雨の日や前日の雨量によっては滑りやすくなるため注意が必要です。


■ 周辺スポット

天安河原を訪れる際には、以下の名所もあわせて巡るのがおすすめです。

  • 天岩戸神社(西本宮・東本宮):天照大神が隠れた「天岩戸」を祀る神社。天安河原とは切り離せない関係。
  • 高千穂神社:高千穂地方の総鎮守。夫婦杉などの縁結びスポットも人気。
  • 高千穂峡:自然が生み出した渓谷美と神話の雰囲気を同時に味わえる絶景地。

■ まとめ

天安河原は、神話と自然が見事に融合した“現代に残る神々の会議場”です。
洞窟に一歩足を踏み入れれば、静寂の中に漂う神聖な空気とともに、遠い神話の時代の息吹を感じることができるでしょう。

訪れる際は、ただ観光地としてではなく、**「祈りの場」**として静かに心を整えながら歩くことをおすすめします。

天照大神の光を取り戻した神々の智慧が、あなたにもひらめきを授けてくれるかもしれません。

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