日本三霊泉「忍潮井」(茨城県・息栖神社)
茨城県神栖市、東国三社・息栖神社の境内に湧く「忍潮井(おしおい)」。
古くから“清浄な水が絶えず湧き続ける神秘の泉”として崇敬され、
**伊勢の明星井、伏見の直井と共に湧く霊泉とともに『日本三霊泉』**に数えられています。
その澄んだ美しさ、神話的な背景、そして不思議な二つの瓶の存在。
忍潮井は「ただの井戸」では語りきれない魅力をもつ特別な名所です。
今回は、その歴史や由来、見どころなどをたっぷり解説します。
■ 忍潮井とは
息栖神社の参道入り口、鳥居の左右に一対で存在する二つの湧水井戸のことです。
- 左側の井戸:男瓶(おがめ)
- 右側の井戸:女瓶(めがめ)
井戸の中を見ると、澄んだ水の底に瓶が沈んでおり、
これが見えると「良いことがある」「願いが叶う」と言い伝えられています。
水は現在もこんこんと湧き続け、地域の人々にとって飲用・生活用水としても欠かせない存在でした。
■ 日本三霊泉とは?
忍潮井は以下の三つの霊泉の一つに数えられます。
- 忍潮井(茨城・息栖神社)
- 伊勢の明星井(三重県)
- 伏見の直井(京都府) ※※存在しない?※※
いずれも神社の神域に湧く特別な泉で、
古代から「清め」「祓い」の象徴として大切にされてきました。
■ 忍潮井の由来・歴史
● 古代の水辺信仰と深いつながり
息栖神社周辺は、古代より水上交通の重要拠点でした。
利根川水系の豊かな水に囲まれ、生活の中心には“井泉(せいせん)”がありました。
忍潮井はその中でも特に清らかな水が湧き続け、
**「神々が宿る井戸」**として信仰されてきました。
● 『延喜式』にも「忍潮井」の名
平安時代の『延喜式』にも忍潮井の名が記され、
すでに千年以上前から霊泉として認識されていたことがわかります。
● 武神・タケミカヅチとの関わり
鹿島神宮の武甕槌大神(タケミカヅチ)が東国を治める際、
息栖の神が案内・守護したという伝承があり、
その際に湧いた水がこの忍潮井だとも言われています。
■ 忍潮井の“二つの瓶”の謎
忍潮井には、他の霊泉には見られない不思議な特徴があります。
● 男瓶・女瓶とは?
- どちらの井戸にも瓶が沈んでいる
- 地上から覗くと瓶の口が見える
- 井戸ごとに形がわずかに異なる
この瓶は「古代から沈められている」とも、「江戸期のもの」とも言われ、
確かな由来は分かっていません。
しかしこの“謎めいた瓶”が、忍潮井の神秘性をさらに高めています。
● なぜ瓶が沈められているのか?
諸説あります。
- 霊泉の清浄さを示す象徴
- 男神・女神を表すペアの守り
- 参拝者の姿勢を整える神聖な視点
- 水脈を守るための祓具
いずれの説も、水と神を重んじる信仰の深さを物語ります。
■ 忍潮井の見どころ
① 水質の驚くべき透明度
井戸の底までくっきり見えるほど澄んだ水。
晴天時は特に透明度が高く、瓶の輪郭が美しく浮かび上がります。
② 湧水の豊富さ
現代でも清水が湧き続けており、
「水が減らない霊泉」として信仰されてきました。
③ 鳥居と井戸の美しい配置
参道を進むと、両脇に井戸が並ぶ独特の風景が広がります。
東国三社の中でも、息栖神社ならではの神域の造形美です。
④ 日の角度で変わる水の色
朝と夕では水の色が変わり、
光が差し込むと神秘的な輝きが見られます。
■ 忍潮井のご利益
- 浄化・祓いの力
- 心の安定
- 良縁・夫婦円満(男瓶・女瓶の信仰から)
- 運気上昇(瓶がよく見えると吉兆)
- 水難・交通安全
特に“清めの力”は強いとされ、
参拝者からは「心が落ち着く」「頭が冴える」との声も多い場所です。
■ アクセス
- 所在地:茨城県神栖市息栖1-30(息栖神社参道入口)
- 駐車場:あり
- 公共交通:鹿島神宮駅からバス(本数は少なめ)
■ まとめ
忍潮井は、息栖神社を象徴する霊なる水の泉です。
- 日本三霊泉に数えられる格別の霊泉
- 千年以上湧き続ける清水
- 男瓶・女瓶という神秘的な構造
- 水辺信仰と古代文化が息づく名所
訪れると、静寂の中で水が光を受け、
“神々が宿る井戸”と呼ばれた理由を実感できます。
東国三社めぐりの際には、ぜひ忍潮井の前でゆっくりと水を眺め、
その清らかな力を感じてみてください。


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