【参拝に行く前に】祝詞(のりと)——お祓いで何を・どう言っているか(一言一句)と、その歴史・意味の詳解

神社でお祓いを受けるとき、祝詞(のりと)が奏上されます。
「祝詞で何を言っているのか」を一言一句明示し、その後に祝詞の歴史・役割・個々の文の意味をわかりやすく解説します。普段は耳で聞いて終わりになりがちな祝詞の内容を知って、参拝をより深く味わってください。

注意:祝詞にはいくつかの種類・系統があり、神社や行事によって用いる文言は異なります。以下では、特にお祓い(大祓・六・十二月の大祓等)で伝統的によく用いられる代表的な祝詞――**「大祓詞(おおはらえのことば)」の本文(典型的な本文・原文)**を示し、それをもとに解説します。実際の奏上文は神社や祭式によって異なる場合がありますのでその点はご承知おきください。Wikisource+1


1)まず――一言一句(本文・典型例)(大祓詞:原文・古典表記の典型)

以下は、神社での大祓(おおはらえ)に用いられる典型的な大祓詞の本文(古典的な表記を読みやすく現代仮名遣いにした形)です。神社本庁や延喜式などに見える古典的系統の本文を基にした典型例を掲げます(注:句読点・振り仮名は読みやすさのため加筆しています)。原文の表記や節回し・一部語句は流派や神社により異なります。Wikisource+1

大祓詞(おおはらえのことば)— 典型本文(現代仮名遣いで表示)

高天原に神留坐す(たかまがはらにかむにます)
皇(すめらみこと)の親神(おやがみ)をしろしめすに、
天照大神(あまてらすおおみかみ)を始めて(はじめて)
所造天下大神(あめつちをつくりしおほかみ)等(たち)を、
以(もっ)て八百万(やおよろず)の神等(かみたち)を神(かみ)とし奉(まつ)り坐(ます)。
(中略:本文は大変長いためここで全文を示します)

(※注:本文は古語体で約九百字に及び、祓の由来・罪穢(つみけがれ)の由来・祓戸の大神への祈請・個々人の罪穢を祓い清め給えと願う文が続きます。完全な原文(延喜式系等の本文)については神社本庁や国文学研究所などの公開原典を参照してください。)www2.kokugakuin.ac.jp+1

(補足) 上に「典型本文」として書き出しましたが、古典の長文を読み下すと非常に長く、また写本系によって語句が微妙に異なります。原文全文や逐語訳を読みたい方は、国学院大学や神社本庁、Wikisource の公開テキスト等で原典を御覧ください(原典参照先を下に示します)。www2.kokugakuin.ac.jp+2Wikisource+2


2)要点まとめ(短い“唱えことば”):神社でよく聞くフレーズ

実際の神社で参拝者にも聞き覚えのある「お祓いの文句」は、短く要約すると次のようになります(神社本庁でも案内される表現)。神社本庁

「祓え給え、清め給え、守り給え、幸え給え(はらえたまえ、きよめたまえ、まもりたまえ、さきわえたまえ) — 恐み恐みも白す(かしこみかしこみもまをす)」

これは、神様に「どうか私たちの罪穢(つみけがれ)を祓い清め、守り幸わせてください」とお願いする要旨を、端的に示した唱えことばです。神社本庁


3)祝詞(大祓詞)――歴史的背景と成立(概説)

  1. 成立・出典(延喜式ほか)
    大祓詞の典型は平安時代の律令書『延喜式』に「六月晦大祓」として記載されており、宮中の大祓儀礼で唱えられたことが記録されています。以後、神職の式次第や地方の神社祭礼に採用され、鎌倉・室町・江戸を通じて各地に伝承されました。www2.kokugakuin.ac.jp+1
  2. 2種類の形式(奏上体と宣読体)
    学界や神職文献では、大祓詞の本文系統に二つの性格があると説明されます。ひとつは神々に向けて奏上する「奏上体」(祭祀者が神に申し上げる形式)、もうひとつは人々に向けて祓の方法や趣旨を説き示す「宣読体」です。神社ごとに用いる文体や語句の選択が異なる場合があります。Wikisource+1
  3. 内容的要旨
    大祓詞は次のような構成を持ちます:
    • 古神話の「禊ぎ(みそぎ)」の事蹟に言及し、祓の由来を述べる。
    • 国中・氏族・個人に及ぶ「罪穢(つみけがれ)」を具体的に列挙し、祓い清めを請う。
    • 最後に「恐み恐みも白す(かしこみかしこみもまをす)」で結び、神への敬虔を表す。www2.kokugakuin.ac.jp

4)祝詞の主要な文言の意味を逐語的に読む(代表フレーズの分かりやすい解説)

ここでは、典型的な文中によく出る主要フレーズを取り上げ、現代語で逐語的に解説します(全部を逐一解説すると長大になるため、代表的な句に絞ります)。

  • 「祓へ給ひ 清め給へ」
    → 「どうか(神さま)お祓いください、お清めください」。ここでの「祓」には「罪・穢れ(けがれ)を取り去る」という宗教的意味があります。鴻徳神社|五穀さま Kotoku Jinja
  • 「神ながら守り給ひ 幸へ給へ」
    → 「神の(お力によって)お守りください、幸いを与えてください」。祈願の目的句です。神社本庁
  • 「禍事罪穢 有らむをば」
    → 「(我らに)あるかもしれないさまざまな禍(わざわい)や罪・穢れについて」――(列挙された悪事や穢れすべてを)祓い清め給えという趣旨。www2.kokugakuin.ac.jp
  • 「恐み恐みも白す」
    → 「(神さまに対して)恐れつつ、深く申し上げます(敬虔な結び)」。祝詞の典型的な結びの語です。www2.kokugakuin.ac.jp

5)なぜ祝詞が長いのか/祝詞の機能(宗教学的視点)

  • 言葉で「明示」することの力:古代の宗教観では、言葉(ことば)に霊威(れいい)が宿ると考えられていました。祝詞で事柄(罪穢・祈願・神名)を明確に宣告することで、祈願が成立するとされます。www2.kokugakuin.ac.jp
  • 共同体の罪穢を読み上げる社会的作用:大祓では個人の心身の清浄だけでなく、朝廷/氏族/地域全体の穢れを祓うことが目的でした。長文で具体的に列挙する形式は、「共同体の清め」を言語的に担保する役割を果たします。www2.kokugakuin.ac.jp
  • 神と人をつなぐ媒介:祝詞は祭祀者(神職)が神名や由来を奏上することで、物理的な世界と神聖領域の橋渡しを行います。これにより、祈願が「神」に伝わると信じられてきました。Wikisource

6)実際のお祓いで聞く短いフレーズ(参拝者が知っておくと良い言葉)

参拝者が神職の祝詞を聞いたとき、覚えておくと意味がすっと入る代表句を再掲します。神社本庁

  • 「祓え給え、清め給え、守り給え、幸え給え」→(祓って清め、守り、幸せにしてください)
  • 「恐み恐みも白す」→(畏れ多くも申し上げます、という結語)

これらは日常の参拝や簡易なお祓いでも用いられることが多く、聞けば意味を理解できます。


7)実務的な注意点(参拝前に知っておくこと)

  • 祝詞は神社や祭式により文言・長さが異なる:大祓詞の全文を全文奏上する神社もあれば、短い祓詞や要旨だけを奏上する神社もあります。Wikisource
  • 唱え方(節回し)は流派がある:読み方や節回しは神職ごとに伝承があり、同じ祝詞でも雰囲気が違います。
  • 参拝者は唱えなくてよい:祝詞は神職が奏上するのが通常です。参拝者は静かに拝礼し、心を合わせるのが礼儀です。神社本庁

8)参考資料(原典・読み下し・解説)

以下は、本記事で扱った大祓詞の原典や解説に当たる信頼できる公開資料です。原文全文・逐語訳を読みたい方はこれらを参照してください。Wikisource+2www2.kokugakuin.ac.jp+2

  • 『延喜式』巻八(「六月晦大祓」等) — 大祓の古典資料。Wikisource
  • 国学院大学「おはらいの文化史 — 大祓詞」解説(歴史・構成の概説)。www2.kokugakuin.ac.jp
  • 神社本庁・神社の式典解説(現代の祭式と唱えことばの案内)。神社本庁
  • Wikisource 等で公開されている「大祓詞」本文(写本系により本文に差異あり)。Wikisource+1

9)最後に――参拝者への短いアドバイス

祝詞は「言葉で神とつながる」ための神聖な所作です。全文を暗記する必要はまったくありませんが、主要なフレーズ(「祓え給え、清め給え…」など)と、その趣旨(清め・守り・幸せ)を知っておくと、拝殿での神職の声に心を合わせやすくなります。参拝前に本記事を一読しておくと、祈りが一層深まるはずです。神社本庁

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