【参拝に行く前に】大祓詞(おおはらえのことば)を段落ごとに徹底解説

──意味・背景・神道思想をわかりやすく読み解く
 神社で6月と12月に行われる「大祓(おおはらえ)」では、神職が 大祓詞(おおはらえことば) を奏上します。
 これは 日本最古級の祓詞 であり、国家レベルで千年以上唱えられてきた非常に重要な祝詞です。
 この記事では 大祓詞の全文を段落ごとに掲載し、その意味・背景を丁寧に解説 します。
 文字通り「何を言っているのか」「どのような思想なのか」が分かる内容になっています。


◆ 大祓詞とは?

 記紀(古事記・日本書紀)に由来する歴史ある祓詞
 平安時代以降、国家の儀式で必ず唱えられた
 人々の罪・穢れ・過ちを祓い清めるための祝詞
 現代でも神社・家庭・神棚で広く使われる
 大祓詞は 「人間の犯す罪を、神々の力で祓い清める」
 という、日本の祓いの根本思想を表した祓詞です。


◆ 大祓詞の全文と段落ごとの解説

以下に、実際に神職が奏上する伝統的な本文(祝詞体)を掲載し、段落ごとに解説します。

本文解説
高天原に神留坐す
皇親神漏岐神漏美の命以ちて
八百万の神等を神集へに集へ賜ひ
神議りに議り給ひて
ここは 神々の会議シーン です。
天界「高天原」におられる神漏岐・神漏美の命(神道における祓いを司る祖となる神)その神々が八百万の神々を呼び集め「人の罪・穢れをどう祓うか」について会議するつまり、「これから人々の罪を祓う儀式を始める」という宣言部分です。
天の益人等が犯しけむ
種々の罪事を
天津罪・国津罪と分ちて
この段では 人が犯す罪の種類 を示しています。「天津罪(あまつつみ)」→ 天の秩序に逆らう罪(災害や自然を乱す行為を含む象徴的な罪)「国津罪(くにつつみ)」→ 生活上の具体的な過失(殺人・火事・ケガ・穢れなど)ここで述べられる罪は、道徳的な悪 というより 穢れ(けがれ)を生む行為 のことです。
此く分ち給ひて
天つ宮事以ちて
天つ金木を本打切り末打断ちて
千座の置戸を置きて
神々は罪を祓うための神具を準備します。「天つ金木(あまつかなぎ)」:祓いに使う神木「千座の置戸(ちくらのおけど)」:多くの祓具、または祓いの座を象徴ここは 儀式セットの準備場面 と考えるとわかりやすいです。
八百万の神等を
斎き祓へ賜ひて
諸々の罪穢れを祓ひ給ふことを
天つ罪・国つ罪許許太久の罪出でむ
神々が実際に 祓いの力を発動させる場面
「罪・穢れがことごとく取り除かれますように」
という願いであり、ここが大祓詞の中心部分です。
如此くして
天つ風の 雲の八重雲を 吹き放つ事の如く
朝日の御霊の 朝日の御光の
隠り坐す事無く
ここでは 祓いの後の清らかな世界 を描いています。雲が風で吹きはらわれるように朝日が雲間から輝くように罪も穢れも隠れることなく消えていくこれは日本的な「祓い」の象徴表現で、
清々しい光に包まれた状態 を意味します
天つ宮より出でむ天つ水の
大海原に持ち出でて
潮の八百道の八百会に坐す
速開都比売の命
速佐須良比売の命
以ちて
祓いを手伝う 水の神々 が登場します。速開都比売(はやあきつひめ)速佐須良比売(はやさすらひめ)どちらも「祓い・流し去る」性質をもつ女神です。ここでは祓われた罪・穢れを水の道へ流していくというイメージです。
諸の罪穢れを
海原に持ち出でて
彼の海原に坐す
瀬織津比売の命に
祓ひ給ひ清め給ふ
ここに最も有名な祓いの神
瀬織津比売(せおりつひめ)
が登場します。瀬織津比売は
罪・穢れを一気に海へ流す浄化の神
とされます。人の過ちや穢れが、浄化され、海へ溶けていく様子を表します。
如此くして
祓ひ清め給ひし罪穢れをば
山川山海の
底の底に沈め給ひて
罪や穢れは海へ流されたあと
山や海の底深くへ沈めて消滅させる
と描かれます。
“穢れはもう二度と戻らない場所へ封じる”
という意味を持ちます。
かく祓ひ給へば
天つ神国つ神
八百万の神等
諸諸聞こし召して
祓ひ給ひ清め給ふと
宣らす
最後は 結びの宣言 です。
天の神、国の神、八百万の神々すべてが祓いを受け入れ、罪が完全に清められたと告げています。
つまり、祓いはここに完了した
という意味の締めくくりです。

◆ 大祓詞の根本思想

大祓詞に流れるテーマは

✔ 人は誰でも知らず知らずのうちに「穢れ」を抱える

✔ 穢れは悪ではなく、日々の生活の中で自然と付くもの

✔ 神々の力で祓い清め、心と体をリセットする

✔ 祓いとは「心を軽くし、日常を新しく始めるための儀式」

という、日本人特有の「穢れ観」にあります。
罪とは「道徳的な悪」ではなく気の滞り・汚れ・疲れ・心の乱れも含む、広い概念です。
大祓詞は、それら全てを神々と自然の力でリセットするプログラムのようなものと言えます。


◆ まとめ:大祓詞を知ると参拝が変わる

大祓詞は
 自然・光・風・水・海
など、自然の力によって穢れを祓うイメージで構成されており、
古代の人々の自然観・生命観が詰まった祝詞です。

大祓詞の意味を知ってから参拝すると、
神社での祓いや神事が
“心のリセットの儀式”
として深く理解できるようになります。

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