— 日本の心が息づく聖地・内宮の境内を徹底解説 —
伊勢神宮の中心であり、日本で最も尊い神社とされる 皇大神宮(内宮)。ご祭神は天照大御神(あまてらすおおみかみ)。
「日本人の心のふるさと」と言われるこの聖地には、荘厳で静謐な空気が満ち、広大な境内の至る所に歴史と神聖が宿ります。
今回は 内宮の境内の見どころ(社殿・摂社・末社・御門・橋・参道)を網羅的に解説 し、初めての方でも深く理解しながら参拝できる記事としてまとめました。
■ 内宮の概要
- 正式名称:皇大神宮(こうたいじんぐう)
- ご祭神:天照大御神
- 創建:垂仁天皇26年(伝承)
- 鎮座地:三重県伊勢市宇治館町
- 日本の神社の中でも最高位とされ、天照大御神の御神体である 八咫鏡 が安置されると伝わる。

★ 内宮の境内を詳しく紹介
1. 宇治橋(うじばし)

内宮の入口に架かる、長さ約101mの大橋を宇治橋と呼びます。
「俗界から神域へ入る境界」 を象徴し、渡る瞬間から空気が変わるのを感じられます。
東の鳥居は「日の出」、西の鳥居は「日の入り」を象徴し、太陽神を祀る神社らしい造形が美しい。
宇治橋の北側にある擬宝珠(ぎぼし)の中には、橋の安全を祈って饗土橋姫(あえどはしひめ)神社の萬度麻(まんどぬさ)が収められていると言われています。
橋は右側通行なので、帰りに触れる機会があります。

この擬宝珠(ぎぼし)に触れて帰ると、また参拝に訪れる事ができると言われています。
多くの方が帰りがてら擬宝珠に触れるので、触れた場所だけ擬宝珠の色が変色しています。
2. 五十鈴川御手洗場(いすずがわ みたらし)

参道を進むと右手に現れるのが、内宮特有の 川で身を清める場所。
清流五十鈴川は古代から神聖な川とされ、手水舎とは別に、実際に川の水で手を洗い口をすすぐ ことができます。
水面に映る木々の姿が美しく、内宮の中でも特に人気が高いスポット。
3. 第一鳥居・第二鳥居

神域の深まりに合わせて鳥居が配置され、奥へ進むごとに厳かな雰囲気が増す。
鳥居は 式年遷宮のたびに建て替え られ、古材は全国の神社に再利用されます。
4. 宇治橋から正宮までの参道
玉砂利が敷き詰められた緩やかな上りの参道。
松の木・檜・杉が立ち並び、神宮らしい静謐な森を感じられます。
左右に摂社・末社が点在しているので、順に解説します。
■ 内宮の重要な社殿
5. 皇大神宮 正宮(しょうぐう)

内宮の中心、天照大御神を祀るもっとも尊い御殿。
一般の参拝者が近づけるのは 板垣 の外側のみで、内陣には神職でも入れないほど神聖な場所。
- 建築様式:唯一神明造(ゆいいつしんめいづくり)
- 屋根:檜皮葺
- 檜の素木を組み上げた質素ながら力強い建築
- 蘇民将来子孫家門のしるしである 茅の輪(ちのわ)は設置されない
正宮前の石段を上ると、自然と背筋が伸びるような厳粛さが漂います。
6. 荒祭宮(あらまつりのみや)

正宮の別宮の中でも特に重要。
天照大御神の荒御魂 を祀る宮で、
「願い事をするなら荒祭宮」と言われるほど、
個人的な祈願を捧げる場所として親しまれています。
内部の雰囲気も正宮よりやや親しみやすく、参拝者の多いスポット。
7. 風日祈宮(かざひのみのみや)

風の神・級長津彦命(しなつひこのみこと)と級長戸辺命を祀る別宮。
神宮内で唯一、川に架かる木造の風日祈宮橋 を渡って参拝します。
静けさが心地よく、五十鈴川の流れを感じながら参拝できる隠れた名所。
8. 内宮の摂社・末社
内宮には多数の小宮があり、それぞれが神話や神職の生活を支える役割を持っています。
● 1)瀧祭神(たきまつりのかみ)

五十鈴川の守り神。
古くから禊の場であり、参拝前に心を整えるために訪れる人が多い。
● 2)大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)

山の神を祀る摂社。
背後に広がる森との一体感が強い。
● 3)子安神社

安産の神として知られる社。
参拝者も多く親しまれている。
ほかにも境内域に十数社が点在し、正宮だけでなく 全体が一つの神域として機能 しています。
■ 内宮の象徴的な建物・施設
9. 神楽殿(かぐらでん)
御神楽(神楽奉納)や祈祷を申し込むところ。
祈祷は皇大神宮と荒祭宮の御祈祷を合わせて行う仕様。
10. 宮司家・宿衛屋
神職が日々御務めを行い、神域を守る拠点。
一般公開はされていないが、神宮の機能の中核。
11. 内宮の御敷地(ごしきち)
正宮の建つ敷地は2つあることで知られています。
- 古御敷地
- 新御敷地
20年に1度の式年遷宮では、正宮がこの二つの敷地を交互に移動。
建物も宝物も全て新しく作り直すという、世界的にも例のない神事です。
■ 境内の神木・自然
12. 神宮杉・神宮檜
境内には千年を超える樹齢を持つ杉や檜が立つ。
太陽の光が木々に差し込む様子は、まさに「天照大神の森」。
参道を歩くだけでも心身が整うと評判。
13.踏まぬ石

1. 場所

- 荒祭宮へ向かう石段の途中
- 内宮の正宮をお参りした後、次の別宮である荒祭宮へ向かって下る石段の途中に、この石はあります。
- 石段の真ん中あたりにあり、周囲の石とは違って少し不自然な場所に鎮座しています。
2. 特別な謂れ・伝承
この石が「踏んではいけない」とされる主な理由は、その形と場所に関係しています。
- 「天」の字に見える割れ目
- 石の表面にある割れ目や形が「天」や「人」という文字に見えるため、「天から降ってきた神聖な石」「神様に関わる石」として、踏んではいけないと伝えられています。
- 神様の通り道
- 石段の中央は、古くから神様の通り道(正中:せいちゅう)とされています。この中央に位置する石は特に神聖視され、神職の方々も避けて通ると言われています。
- 災いを避ける
- この石を知らずに踏むと、足の怪我や災いが起きるという言い伝えもあり、参拝者はこの石を避けて、石段の端を通るよう気を付けています。
ご参拝の際には、荒祭宮へ下る途中の石段で、中央にあるその石を探してみてください。その場の神聖な雰囲気に触れながら、昔ながらの謂れを感じることができますよ
■ 参拝のポイント
● ① 参道は 左側通行
中央は神様の通り道とされるため。
● ② 正宮は「感謝」、荒祭宮で「願い事」
神宮の伝統的な参拝作法。
● ③ 五十鈴川で心を清める
手水舎とは異なる、神宮ならではの体験。
● ④ 式年遷宮の建築様式にも注目
唯一神明造の美しさを感じながら参拝できる。
■ まとめ
伊勢神宮・内宮は、正宮だけを参拝して終わるのがもったいないほど、広大で奥深い神域です。
宇治橋、五十鈴川、別宮、摂社・末社、参道の森……。
何度訪れても新しい気づきがあり、静かな時間の中で心が整えられる特別な場所です。

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