月の満ち欠けは古来より、人々の心や暦、生活と深く関わってきました。
その「月」を神格化した存在が、**月読命(つくよみのみこと)**です。
天照大神(太陽)・須佐之男命(海・嵐)とともに、**「三貴子」**として生まれながら、
神話の中では出番が少なく、謎多き存在としても知られています。
◆ 基本情報|月読命とは?
項目 | 内容 |
---|---|
神名 | 月読命(つくよみのみこと) |
別表記 | 月夜見尊(つくよみのみこと)・月弓命(つくゆみのみこと)など |
神格 | 月の神・夜の神・時間の神・暦の守護神 |
系譜 | イザナギ命が黄泉の国から戻り禊をした際に生まれた「三貴子」の一柱(天照大神・須佐之男命と兄弟) |
祀られる主な神社 | 月読神社(京都府・長崎県)・伊勢神宮(内宮別宮「月読宮」)など |
◆ 誕生と「三貴子」
月読命は、父神イザナギが黄泉の国から帰還し、禊(みそぎ)を行った際に生まれました。
- 左目から生まれたのが「天照大神」
- 鼻から生まれたのが「須佐之男命」
- そして、右目から生まれたのが「月読命」
この三柱は「三貴子(さんきし)」と呼ばれ、
天照は昼の世界、須佐之男は海、
そして月読命は夜と月の世界を治める神とされました。
◆ 月読命の神話と謎
月読命に関する神話は、ほとんど語られていないのが特徴です。
『日本書紀』では、唯一登場する神話として、以下の逸話があります:
◎ 月読命と保食神(うけもちのかみ)
天照大神の命を受けて、保食神のもとを訪れた月読命。
保食神は動物を口から吐き出して饗応を用意しましたが、
これを見た月読命は「汚らわしい」と激怒し、保食神を斬ってしまったとされます。
これに怒った天照大神は、月読命と顔を合わせるのをやめた
――この神話が、太陽と月が一緒に空に現れない理由とされています。
しかし、この話もあまり詳しくは語られておらず、
月読命は**「沈黙の神」「隠れた神」**として、謎めいた印象を与えます。
◆ ご神徳
月読命は、目立つ神ではないものの、
古代において月が「時」や「農耕」と結びついていたことから、
以下のような静かで確かなご利益があるとされています。
ご神徳 | 解説 |
---|---|
時間と暦の守護 | 月の満ち欠けが暦の起点だったため、時間・季節の調和を守る神。 |
安産・育児 | 月の周期が女性の身体と関係することから、生命と誕生を司るとされる。 |
心の安定・浄化 | 静かに光を放つ月は、感情を穏やかに整える神格として信仰される。 |
夜の安全 | 夜の守護神として、旅人や海上の安全も祈られる。 |
◆ 月読命を祀る主な神社
神社名 | 所在地 | 特徴 |
---|---|---|
月読神社(京都市西京区) | 京都府 | 月読命を祀る古社。伊勢神宮の「月読宮」と深い関係。 |
月読神社(長崎県壱岐市) | 長崎県 | 月読命が最初に降臨したと伝えられる神社。国産み神話にも関係。 |
伊勢神宮 月読宮(内宮別宮) | 三重県伊勢市 | 伊勢神宮の別宮。月読命を主祭神とする格式高い神社。 |
◆ 月読命の魅力と現代的メッセージ
- 光と闇のバランスを保つ神
- 目立たなくても必要とされる存在
- 静かな力で時を司る“影の支配者”
現代は、スピードと派手さが重視されがちですが、
月読命のように「静かに輝き、調和を守る存在」が今こそ必要とされています。
◆ まとめ|沈黙の中に宿る神聖
月読命は、あまり語られることのない神でありながら、
日本神話の根幹に関わる“時間と調和”の神です。
日の神・天照、海の神・須佐之男と並び、
「夜と月」をつかさどる、静けさと神秘の象徴として、
今も人々の信仰の対象となっています。
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