【神様図鑑】豊宇気昆売神（とようけびめのかみ）｜五穀を司る“食の女神”と伊勢の外宮

日本の神話や信仰の中で、「食」は人々の暮らしと深く結びついてきました。
その食の恵みを司る女神として、特に伊勢神宮の外宮で祀られているのが——
**豊宇気昆売神（とようけびめのかみ）**です。

五穀豊穣、食物の恵み、衣食住を支えるこの神様は、
古来より日本人の生活を根底から支えてきた女神です。

◆ 基本情報｜豊宇気昆売神とは？

豊宇気昆売神は、『古事記』『日本書紀』には明確に登場しないものの、
古代から食物をつかさどる女神として、各地で信仰されてきました。

伊勢神宮においては、天照大神の食を司る神として、
天照大神の夢枕に立ったことがきっかけで、伊勢の外宮に迎えられたと伝えられています。

この女神は「豊（とよ＝豊かさ）」と「気（け＝食）」の名を持ち、
まさに「豊かな食の気配をもたらす神」として尊ばれています。

豊宇気昆売神は、**伊勢神宮外宮（豊受大神宮）**の主祭神として、
天照大神（内宮）と対をなすように祀られています。

外宮では、**神宮で最も重要な神事「日別朝夕大御饌祭（ひごとあさゆうのおおみけさい）」**が毎日行われ、
豊宇気昆売神が、天照大神に食物を捧げる役割を担っています。

これは「神に捧げる食の神が、神そのものとして祀られている」という
極めて日本的な神道思想の象徴とも言える存在です。

神社名	所在地	特徴
伊勢神宮外宮（豊受大神宮）	三重県伊勢市	日本の「食」の中心神。天照大神の“食の世話役”でありながら本宮格の大社。
籠（この）神社	京都府宮津市	伊勢神宮との深い関係がある「元伊勢」。豊受大神を祀る古社。
豊受神社	各地に分布	地域によっては「とようけじんじゃ」「とようけさま」などと呼ばれ、五穀の守護神として信仰される。

現代社会では、食の流通や供給が当たり前になっているように感じられますが、
その“当たり前”を支えてくれているのが、まさに豊宇気昆売神のような存在です。

こうした価値観に触れるたびに、私たちはこの女神への感謝を感じずにはいられません。