神の種類
国津神
父神
素戔嗚尊
夫神
大国主命
活躍時代
神代(かみよ)
神格
縁結・夫婦神
📅 2025年6月17日 ✍️ 神社めぐり管理人 🗂 神様図鑑シリーズ 📖 読了目安:9分

① 名前と出典

正式名称 須勢理毘売命(すせりびめのみこと)古事記
表記ゆれ 須世理毘売(すせりびめ)古事記(異表記)
読み方の由来 「スセリ」は「颯爽と進む・勢いよく進む」意とも、「清らかに澄んだ」意とも解釈される。「毘売(びめ)」は若い女性・姫を意味する古語。
初出文献 古事記(712年)上巻。日本書紀には登場せず、古事記独自の神。
📖 注目ポイント:須勢理毘売命は日本書紀には登場せず、古事記にのみ記される神様です。そのため古事記の記述が唯一の一次資料となります。

② 別名と出典

須世理毘売 古事記内での別表記。意味・内容は同一。古事記(上巻)
嫉妬の神 後世の信仰において、大国主命の多くの妻への嫉妬を示す歌謡から「嫉妬の神」として語られることがある。正式な神名ではなく通称的な呼ばれ方。古事記歌謡・民間信仰

③ 同一神・神仏習合

習合の記録 須勢理毘売命については、特定の仏・菩薩との習合記録は現時点では確認されていない。古事記にのみ登場する国津神であり、神仏習合の対象となった記録は乏しい。 ——
縁結びとの習合 夫婦神・縁結びの文脈では、大国主命とともに夫婦円満・良縁の神として信仰されることがあり、出雲系神社では両神をあわせて祀る例もある。 出雲系神社の信仰伝承

④ 神様の種類

分類 国津神(くにつかみ)——地上世界(葦原中国)に根ざす神々の一柱。父・素戔嗚尊の居す根之堅州国(ねのかたすくに)に生まれた女神。
神格 縁結神・夫婦円満神・貞節神・嫉妬神
特徴 日本神話において、女神が積極的に夫を助け、ともに試練を乗り越えるという「対等な夫婦像」を体現する稀有な存在。恋愛・結婚に関わる感情(愛情・嫉妬・別れの悲しみ)を率直に表現した歌謡が古事記に残される。

⑤ 系図

⑥ 活躍した時代

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神代(かみよ)——大国主命の「根之堅州国訪問」の時代
大国主命が兄弟神たちに迫害され、根之堅州国(地下の国、あの世に近い世界)を訪れた時代に登場する。父・素戔嗚尊が治めるこの国でひと目で大国主命に惚れ込み、以降は夫を助けるために父の試練を共に乗り越え、地上へと脱出する。その後は出雲の地で大国主命の正妻として国づくりの時代を共に過ごしたとされる。
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02

祀られる神社

📌 須勢理毘売命を単独で主祭神として祀る神社は少なく、大国主命との夫婦神として祀られるケースが多いです。出雲大社境内の境内社に注目しましょう。
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03

登場する神話・伝説

出会いと一目惚れ——根之堅州国への来訪
兄弟神たちに幾度も殺されながら蘇った大国主命(当時は大己貴命)は、母神の助言により父神・素戔嗚尊が治める根之堅州国を訪れた。その地に降り立った瞬間、素戔嗚尊の娘・須勢理毘売命が大国主命を見るなり深く心を動かされ、「麗しい神がいらっしゃいます」と父に告げ、自ら進んで結婚の意を示した。古事記はこの出会いを「見惚れ合い(まぐはひ)」と表現しており、互いが一目で惚れ合った純粋な恋の始まりを描いている。

出典:古事記(上巻)大国主命の神話
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試練を共に乗り越える——蛇の室・蜈蚣と蜂の室
素戔嗚尊は娘に恋した大国主命を試すべく、蛇(へび)がひしめく室(部屋)に泊まらせた。須勢理毘売命はあらかじめ「ひれ(領布・スカーフ状の布)」を渡し、「蛇が近づいたら三度振りなさい」と助言。この布の霊力により大国主命は蛇を退けた。続く蜈蚣(むかで)と蜂の室の試練でも同様に「比礼(ひれ)」を授け、夫を守り抜いた。この神話から、须勢理毘売命が「蛇比礼・蜂比礼・品物比礼」という三種の神宝を持つとされ、護符・魔除けの神としての性格も生まれた。

出典:古事記(上巻)
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脱出と誓いの歌——根之堅州国からの逃走
素戔嗚尊が眠った隙に、大国主命は須勢理毘売命を背負い、スサノオの宝物(生太刀・生弓矢・天の沼琴)を持って根之堅州国から逃亡した。追いかけてきた素戔嗚尊は追いつかず、ついに大国主命を「大国主」「宇都志国玉神」と認め、祝福の言葉とともに須勢理毘売命を正妻として許した。この逃走と追走のくだりは、日本神話屈指の緊迫したドラマであり、二人の愛の強さを象徴する場面とされる。

出典:古事記(上巻)
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嫉妬の歌謡——夫婦の情愛と別れの悲しみ
古事記には「八千矛神(やちほこのかみ)の歌謡」として、大国主命と须勢理毘売命の夫婦の歌が収録されている。大国主命が他の妻のもとへ出かけようとする場面で、须勢理毘売命は青山の萎え・鳥の嘆きなどを引き合いに深い悲しみを歌い、大国主命はこれに感動して出かけるのをやめたとされる。この歌謡は日本最古の夫婦の機微を伝える文学作品としても高く評価されており、嫉妬と純愛が同居する女神の複雑な内面を生き生きと描いている。

出典:古事記(上巻)歌謡
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04

逸話・エピソード

EPISODE 01 日本神話最強の嫁——自ら夫を選んだ女神

日本神話において、女神が男神に自ら恋し、積極的に結婚を求める場面は非常に珍しい。須勢理毘売命は大国主命を一目見るなり「麗しい神」と称え、父に告げて自ら結婚を選んだ。これは当時の婚姻形態として「妻問い婚(男が女のもとへ通う)」が一般的だったことを考えると、きわめて自立的・能動的な行動である。現代的な観点からも「自分の意志で愛する人を選んだ女神」として再評価されており、縁結びを願う女性参拝者に特に人気が高い。

EPISODE 02 三種の比礼——護符の起源となった神宝

須勢理毘売命が大国主命に授けた「蛇比礼(へびのひれ)」「蜂比礼(はちのひれ)」「品物比礼(くさぐさのもののひれ)」は、古代の呪術的な布であり、振ることで危険な生き物を退散させる霊力があるとされた。この「比礼(領布)」は古代の神社祭祀における護符・魔除けの布の原型とも考えられており、須勢理毘売命は日本における「お守り・護符の文化の源流」ともいえる存在である。現在も出雲地方の神社では布にまつわる授与品が縁結びの象徴として受け継がれている。

EPISODE 03 嫉妬の歌——愛ゆえの苦しみを歌にした女神

大国主命は多数の妻を持つ神として知られるが、须勢理毘売命はその嫉妬を隠さず、歌という形で表現した。古事記の歌謡に残るその詩は「青山の萎えるように私はなえており、泣いている鳥のように泣いているのです」という深い悲哀の表現で知られ、感情を率直に歌に託した日本最古の「嫉妬の文学」とも呼ばれる。この歌を聞いた大国主命が出かけるのを止めたというエピソードは、愛情の強さで相手の心を動かした純愛の勝利として語られてきた。

EPISODE 04 正妻の座を守り抜いた——国づくりを陰で支えた女神

多くの妻を持ちながらも、大国主命にとって须勢理毘売命は唯一の「正妻(本妻)」であった。国譲りの後、大国主命が幽冥の世界(見えない世界)を治める神となった後も、出雲大社には二人が祀られ続けている。大国主命の国づくりを支えながら正妻の座を生涯守り続けたその姿は、「女性の忍耐と愛の強さ」の象徴として現代でも多くの女性から支持されている。出雲大社に参拝する際は、境内の須勢理毘売命をお祀りする境内社にも足を運ぶのがおすすめ。

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05

ご利益

💑
縁結び・良縁成就
自ら愛する人を選んだ女神として、積極的な縁結びの神。思い定めた相手との縁が結ばれるよう祈願する女性参拝者に特に人気。
👫
夫婦円満・家庭円満
大国主命の多くの妻への嫉妬を乗り越え、正妻の座を守り続けた女神。夫婦の絆・家族の絆を強める守護神として信仰される。
🧿
魔除け・厄払い
蛇比礼・蜂比礼・品物比礼の三種の護符を持つ女神として、邪気・厄・悪縁を祓う力があるとされる。
💪
縁切り・悪縁断ち
嫉妬の神としての側面から、悪い縁・腐れ縁を断ち切り、よい縁へと繋ぎ直す力への信仰がある。恋愛成就の裏面としての縁切りを願う参拝者も。
🌸
女性守護・自立支援
自らの意志で人生を切り拓いた女神として、現代の女性の自立・仕事運・決断力を守護するとも信仰される。
🎋
子宝・安産
国づくりを陰で支えた大地母的な側面から、子宝授かり・安産・育児守護のご利益もあるとされる。
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06

関わりの深い場所・聖地巡礼

総本社・聖地
出雲大社・境内社
📍 島根県出雲市大社町
大国主命を祀る出雲大社の境内には须勢理毘売命をお祀りする境内社がある。夫婦神をともに参拝できる聖地。神在月(10〜11月)の参拝がとくに人気。
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縁結び・夫婦神の社
八重垣神社
📍 島根県松江市佐草町227
素戔嗚尊と稲田姫命(奇稲田姫)を主祭神とするが、大国主命・须勢理毘売命も合祀。境内の「鏡の池」での縁占いが全国的に有名で、縁結びスポットとして若い女性に絶大な人気を誇る。
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父神・根之堅州国ゆかり
須佐神社
📍 島根県出雲市佐田町須佐730
须勢理毘売命の父・素戔嗚尊を祀る神社。须勢理毘売命が生まれ育った「根之堅州国」のイメージに最も近いゆかりの地。深山に囲まれた神秘的な雰囲気。
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国譲り・神在の地
稲佐の浜
📍 島根県出雲市大社町
大国主命が国譲りを決断した浜辺。须勢理毘売命がともに過ごした出雲での国づくりの時代を偲ぶ場所。神在祭の時期には全国の神々が上陸する神迎えの場所。
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出雲の縁結び神社
出雲玉作湯神社
📍 島根県松江市玉湯町湯町763
縁結びと美肌の神として知られる神社。須勢理毘売命が持つ「布(比礼)」の文化とも繋がる、古代出雲の祭祀ゆかりの地。温泉地にあり参拝と湯治を合わせた聖地巡礼が人気。
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出雲ゆかりの古社
美保神社
📍 島根県松江市美保関町美保関608
大国主命の息子・事代主神を祀る神社。须勢理毘売命の義子ゆかりの社として、出雲巡礼の締めくくりにお参りする人も多い。
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