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【神様図鑑】火雷神(ほのいかづちのかみ)とは?鬼滅の刃の技名と同じ雷の神・黄泉の八雷神と丹塗矢伝説

 火雷神(ほのいかづちのかみ)は、『古事記』の黄泉の国の場面に登場する雷の神です。
 アニメ「鬼滅の刃」で我妻善逸(あがつまぜんいつ)が使う技、雷の呼吸 漆ノ型(しちのかた)「火雷神」と同じ名前なので、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
 この記事では、火雷神がどんな神様なのかを、神話・伝説・まつる神社とあわせてわかりやすく紹介します。

◆ 火雷神とは?30秒でわかるまとめ

読み方ほのいかづちのかみ
何の神様?雷の神。火の神・雨をもたらす農耕の神としても信仰される
神話『古事記』で、黄泉の国のイザナミの体に生まれた8柱の雷神(八雷神)の一柱。胸にいた
伝説『山城国風土記』逸文では、赤い矢(丹塗矢)に姿を変えて玉依日売と結ばれ、上賀茂神社の神・賀茂別雷命の父となる
別名火雷命・火雷大神(八雷神をまとめた呼び名としても使われる)
主なご利益五穀豊穣・雨乞い(祈雨)・雷除け・火難除け
まつる主な神社葛木坐火雷神社(奈良県葛城市)・火雷神社(群馬県玉村町)・角宮神社(京都府長岡京市)
鬼滅の刃我妻善逸が自分で編み出した技「雷の呼吸 漆ノ型 火雷神」と同じ名前

◆ 「火雷神」という名前の意味

  • 火(ほ):火・炎のこと。稲妻の光や、落雷で起きる火を表すと考えられています
  • 雷(いかづち):「いか(厳=おそろしい)」+「つ(の)」+「ち(霊=不思議な力)」で、おそろしい力をもつものという意味とされます。古い言葉では、雷だけでなく蛇や鬼など、おそろしいもの全体を「いかづち」とよびました

 つまり火雷神は、「火(光)をともなう、おそろしい雷の神」という名前です。


◆ 鬼滅の刃の「火雷神」と神様の火雷神

 「鬼滅の刃」では、雷の呼吸の「壱ノ型」しか使えなかった我妻善逸が、自分で編み出した7番目の型が「漆ノ型 火雷神」です。読み方は神様と同じ「ほのいかづちのかみ」です。
 作品の中で名前の由来は説明されていませんが、雷の呼吸の技の名前に、日本神話の雷の神の名前が使われていることになります。
 神話の火雷神は、黄泉の国でイザナギを追いかけた恐ろしい雷神であり、同時に上賀茂神社の神の父でもある、とても力の強い神様です。技の名前の「元ネタ」として知っておくと、作品がもっと楽しくなるかもしれません。


◆ 神話① 黄泉の国の八雷神(古事記)

 火の神・火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)を生んだことで亡くなったイザナミ。夫のイザナギは妻を連れもどそうと、死者の国である黄泉の国をたずねます。
 「わたしの姿を見ないでください」という約束をやぶって、イザナギが火をともして見たイザナミの体には、うじがわき、8柱の雷神が生まれていました。

体の場所雷神
頭大雷(おおいかづち)
胸火雷(ほのいかづち)
腹黒雷(くろいかづち)
陰部析雷(さくいかづち)
左手若雷(わかいかづち)
右手土雷(つちいかづち)
左足鳴雷(なるいかづち)
右足伏雷(ふすいかづち)

 この8柱をまとめて八雷神(やくさのいかづちのかみ)といい、火雷大神(ほのいかづちのおおかみ)という名前でまとめてよぶこともあります。
 恥をかかされたイザナミは、八雷神に大勢の黄泉の軍勢をつけてイザナギを追いかけさせました。イザナギは黄泉比良坂(よもつひらさか)のふもとで桃の実を3つ投げつけ、ようやく追っ手を追いはらいます。
 火雷神は、この「死の世界の恐ろしさ」を表す雷神のひとりとして神話に登場するのです。

※『日本書紀』の一書(いっしょ=本文とは別の伝え)にも、イザナミの体に8つの雷がいた、という似た話が書かれています。


◆ 神話② 丹塗矢の伝説と上賀茂神社(山城国風土記)

 京都の賀茂の神社には、火雷神が登場するもう一つの物語が伝わっています。奈良時代の『山城国風土記』の逸文(いつぶん=ほかの本に引用されて残った文章)の話です。

  1. 賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)の娘・玉依日売(たまよりひめ)が、石川の瀬見の小川(今の賀茂川)で遊んでいると、上流から丹塗矢(にぬりや=赤くぬった矢)が流れてきました
  2. 玉依日売がその矢を持ち帰って寝床のそばに置いておくと、やがて身ごもり、男の子が生まれます
  3. この子が、上賀茂神社(賀茂別雷神社)の神・賀茂別雷命(かもわけいかづちのみこと)です
  4. そして丹塗矢の正体は、乙訓(おとくに)の社にまつられる火雷神だった、と伝えられています

 黄泉の国では恐ろしい雷神だった火雷神が、ここでは上賀茂神社の神の父として登場します。母の玉依日売と祖父の賀茂建角身命は、下鴨神社(賀茂御祖神社)にまつられています。雷が雨をもたらし、田畑をうるおす力をもつことから、雷神は恵みの神としても大切にされてきました。
 賀茂の神社については「賀茂氏と関係のある神社」でもくわしく紹介しています。


◆ 天神さま(菅原道真)との関係

 平安時代、無実の罪で大宰府に流されて亡くなった菅原道真は、その後に都で落雷などの災いが続いたことから、雷をおこす怨霊として恐れられました。
 やがて道真は「天神さま」としてまつられるようになり、天神信仰の中では「火雷天神」という呼び名も使われるようになります。ここでは雷の神としての火雷神のイメージが、天神さまと重ね合わされています。


◆ ご利益

ご利益理由
五穀豊穣雷は雨をもたらし、稲を実らせると考えられた(稲妻は「稲の夫(つま)」という意味)
雨乞い(祈雨)日照りのときに雨を願う神として
雷除け・災難除け雷の神をしずめ、落雷の害から守ってもらう
火難除け火と雷をつかさどる神として、火事から守ってもらう

◆ 火雷神をまつる神社

神社名所在地特徴
葛木坐火雷神社(かつらぎにいますほのいかづちじんじゃ)
通称:笛吹神社
奈良県葛城市笛吹『延喜式神名帳』の名神大社。火雷大神と天香山命を主祭神としてまつる
火雷神社(からいじんじゃ・ほのいかづちじんじゃ)
通称:下之宮
群馬県佐波郡玉村町『延喜式』に名前がある古社で、上野国(こうずけのくに)の八宮とされる。江戸時代には天神信仰から「火雷天神社」ともよばれた
角宮神社(すみのみやじんじゃ)京都府長岡京市井ノ内火雷神を主祭神としてまつる。丹塗矢の伝説の「乙訓の社」の候補とされる神社のひとつ
向日神社(むこうじんじゃ)京都府向日市境内に合祀された火雷神社も、「乙訓の社」の候補とされる

※『延喜式』に出てくる乙訓郡の雷神の神社が、今のどの神社にあたるかは、はっきりわかっていません(このように候補となっている神社を「論社(ろんしゃ)」といいます)。


◆ よくある質問

Q. 火雷神と建御雷神(たけみかづちのかみ)は同じ神様ですか?

A. 別の神様です。建御雷神は、イザナギが火之迦具土神を斬ったときに剣から生まれた神で、国譲りの神話で活躍し、鹿島神宮にまつられています。火雷神は、黄泉の国のイザナミの体に生まれた雷神です。どちらも名前に「雷」がつくので、まちがえやすいので注意しましょう。

Q. 「火雷大神」とは誰のことですか?

A. 火雷神そのものを指すこともあれば、黄泉の国の8柱の雷神(八雷神)をまとめてよぶ名前として使われることもあります。葛木坐火雷神社では「火雷大神」としてまつられています。

Q. 鬼滅の刃の「火雷神」は神様が元ネタですか?

A. 作品の中で由来は説明されていませんが、読み方も字も、日本神話の雷の神「火雷神」とまったく同じです。雷の呼吸の最後の型に、神話の雷神の名前がつけられていると考えられます。


◆ まとめ|恐ろしさと恵みをあわせもつ雷の神

  • 火雷神(ほのいかづちのかみ)は、『古事記』で黄泉の国のイザナミの胸に生まれた雷の神
  • 『山城国風土記』では丹塗矢となって、上賀茂神社の神・賀茂別雷命の父になる
  • 雨をもたらす恵みの神として、豊作・雨乞い・雷除け・火難除けの神としてまつられる
  • 「鬼滅の刃」の我妻善逸の技「漆ノ型 火雷神」と同じ名前

 死の世界の恐ろしい雷でありながら、田畑をうるおす恵みの神でもある火雷神。雷の音を聞いたら、この神様のことを少し思い出してみてください。

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