はじめに
奈良県御所市に鎮座する**鴨都波神社(かもつばじんじゃ)は、古代氏族賀茂氏(鴨氏)の信仰を考えるうえで極めて重要な神社であり、古来より「下鴨社」**と称されてきました。
本記事では、
- 鴨都波神社の由緒と御祭神
- 「下鴨社」と呼ばれる理由
- 高鴨神社・葛木御歳神社との関係(鴨三社)
- 葛城地域における賀茂氏の活動
を、史料・伝承を踏まえて詳しく解説します。【神社めぐり】として、参拝前の理解を深めることを目的とした記事です。
鴨都波神社の基本情報
- 社名:鴨都波神社
- 読み:かもつばじんじゃ
- 通称:下鴨社
- 所在地:奈良県御所市宮前町513
- 式内社:葛城鴨都波神社(式内大社)
- 旧社格:官幣大社
『延喜式神名帳』に名神大社として記載される、極めて格の高い古社です。
御祭神について
主祭神:建角身命(たけつぬみのみこと)
建角身命は、賀茂氏の祖神とされる神で、
- 武神
- 開拓神
- 境界を守る神
としての性格を持ちます。
『山城国風土記』逸文では、八咫烏に姿を変え、神武天皇を導いた神として描かれ、王権成立に深く関わる存在です。
相殿神
- 玉依姫命(たまよりひめのみこと)
- 鴨建角身命の後裔神
玉依姫命は、神と人を結ぶ「依代」の性格を持ち、賀茂信仰において重要な巫女的存在です。
「下鴨社」と呼ばれる理由
鴨都波神社が「下鴨社」と呼ばれるのは、賀茂氏の本拠が葛城地方にあったという認識に基づきます。
鴨三社の正しい構造
| 区分 | 神社名 | 所在地 | 性格 |
|---|---|---|---|
| 上鴨社 | 高鴨神社 | 奈良県御所市 | 祖神・根源神 |
| 中鴨社 | 葛木御歳神社 | 奈良県御所市 | 農耕・土地神 |
| 下鴨社 | 鴨都波神社 | 奈良県御所市 | 人祖・氏族神 |
この配置は、山 → 麓 → 平野という地形的序列とも対応しており、古代祭祀の空間構造を反映しています。
鴨都波神社と賀茂氏
賀茂氏の原郷としての葛城
鴨都波神社が鎮座する葛城地方は、
- 出雲系神話
- 葛城氏
- 鴨氏(賀茂氏)
が交錯する地域であり、賀茂氏の発祥地の一つと考えられています。
京都の下鴨神社(賀茂御祖神社)は、 葛城の賀茂信仰が北山・鴨川流域へ展開した後の姿であり、鴨都波神社はその源流にあたります。
史料に見る鴨都波神社
『延喜式神名帳』
- 葛城鴨都波神社一座
- 名神大社
と記載され、国家的祭祀対象であったことが明示されています。
地名「都波(つば)」の意味
「つば」は
- 川の合流点
- 境界
- 霊的結節点
を意味するとされ、境界神としての建角身命の性格と一致します。
境内と祭祀の特徴
- 平野部に立地
- 開放的な祭祀空間
- 人の往来を意識した配置
これは、氏族共同体の守護神としての性格を強く示しています。
例祭は、
- 五穀豊穣
- 氏族繁栄
- 災厄除け
を祈る、実践的信仰が中心です。
鴨都波神社の歴史的意義
鴨都波神社は、
- 王権成立以前の氏族信仰
- 葛城における賀茂氏の人祖神祭祀
- 京都賀茂社成立以前の原型
を今に伝える、極めて貴重な神社です。
参拝にあたって
鴨都波神社を参拝する際は、
- 高鴨神社(神の始まり)
- 葛木御歳神社(土地と農耕)
- 鴨都波神社(人と氏族)
という鴨三社の流れを意識すると、理解が格段に深まります。
おわりに
鴨都波神社(下鴨社)は、観光地化されていないからこそ、 古代氏族信仰の生の姿を感じられる神社です。
賀茂氏・葛城・出雲神話に関心を持つ方にとって、必ず訪れる価値のある聖地と言えるでしょう。

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