寿老人(じゅろうじん)は、七福神の中で「長寿」を受け持つ神様です。白いひげのおじいさんで、そばにはいつも鹿がいます。
この記事でわかること
- 寿老人のふるさと「南極老人星(なんきょくろうじんせい)」という星の正体
- 寿老人に会える京都・東京のお寺と神社
- 長寿の神様が、なぜ鹿を連れているのかの謎
現れると、人々が長寿を祈った星。その星が、おじいさんの姿で日本にやってきました。
01. 寿老人の基本情報
| 分類 | 七福神の一柱。もとは中国の道教(どうきょう)の神です |
| 読み方 | じゅろうじん |
| 別名 | 寿星(じゅせい)・南極老人(なんきょくろうじん)・寿老神(じゅろうじん)など |
| 梵名(ぼんみょう) | インド生まれの仏様ではないため、梵名(サンスクリット語の名前)はありません |
| 真言 | オン バザラユセイ ソワカ(普賢菩薩の延命の真言、つまり普賢延命菩薩(ふげんえんめいぼさつ)の真言と同じとされます) |
| 種子字(しゅじ) | 決まった種子字は確認できませんでした |
| ご縁日 | 決まった縁日は確認できませんでした。お参りは、お正月の七福神めぐりの時期が中心です |
| もとになった星 | 南極老人星(りゅうこつ座のカノープス) |
02. 寿老人とは?南極老人星から生まれた長寿の神
① 一言まとめ
寿老人は、中国で「長生きの星」とされた南極老人星が、おじいさんの姿になった神様です。日本では七福神の一員として親しまれています。
② 由来 ― 見えると天下太平(てんかたいへい)になる星
南極老人星は、いまの星座でいうと「りゅうこつ座」のカノープスという星です。太陽をのぞくと、シリウスの次に明るい恒星(こうせい)です。でも、南の空のとても低いところにしか昇りません。
日本で見えるのは、東北地方の南部より南の地域だけとされます。東京では地平線から2度ほど、京都でも3度ほどしか昇りません。
低い空にしか出ないので、見える時期や場所はかぎられます。しかも低い空では、赤っぽく見えます。
そこで中国では、「戦争のときには見えず、天下が平和になると見える」と言い伝えられました。この星が現れると、人々は競って幸せと長寿を祈ったといいます。
この星を神様にしたのが、寿星(じゅせい)、つまり寿老人です。のちに、北宋(ほくそう)の時代の11世紀後半に実在したおじいさんがモデルだ、という伝説も生まれました。背が高く、頭が長かったと伝わります。
中国の老子(ろうし)が仙人になった姿だ、という説明が見られることもあります。ただし、これは数ある説のひとつです。
日本では、水墨画(すいぼくが)などの絵の題材として好まれました。雪舟(せっしゅう)・狩野探幽(かのうたんゆう)・円山応挙(まるやまおうきょ)など、名だたる絵師が寿老人を描いています。
そして、七福神の一柱に数えられました。七福神の成り立ちは、七福神の記事でくわしく紹介しています。
③ 姿・持ち物の特徴
- 白く長いひげ:長生きのしるしです。頭が長く描かれることもあります。
- 杖(つえ)と巻物:杖の先に、経巻(きょうかん=巻物)を結びつけています。
- 団扇(うちわ):丸い団扇を手にした姿もあります。
- 桃・瓢箪(ひょうたん):桃は不老長寿の果物です。瓢箪には、不死の霊薬(れいやく)が入っているとされます。
- 鹿:1500年生きたといわれる鹿を連れています。鶴(つる)を連れた姿もあります。
仏様のような決まった印相(いんぞう=手の形)や台座はありません。杖を持って立つ姿や、座った姿で表されます。
お酒が好きな神様だ、という言い伝えもあります。なんとも人間らしいですね。
03. 寿老人のご利益とは?長寿と健康の神様
💪 健康・無病息災
🍑 不老長寿
寿老人の一番のご利益は、なんといっても長寿です。「寿」の字が名前に入っているとおりですね。
京都の革堂(こうどう)の寿老人神堂も、不老長寿のご利益があるとされます。
こんな人におすすめ
- おじいちゃん・おばあちゃんの長生きを願う人
- 還暦(かんれき)・古希(こき)など、長寿のお祝いを迎える家族がいる人
- 病気が治ったお礼や、これからの健康を祈りたい人
- 新しい年を、健康第一でスタートしたい人
ご利益の根拠:もとになった南極老人星が「長寿の星」とされたことが、ご利益の土台です。真言が普賢菩薩の延命の真言と同じとされる点も、長寿の神様らしいところです。
※ご利益の説明は、寺社によって少しずつ違います。お参りの前に、各寺社の案内を確かめてください。
04. 寿老人の仲間・関連する神仏
福禄寿と寿老人は、どちらも南極老人星にゆかりがあります。そのため、同じ神の別名(同体異名)とされることもあります。
この「同じ星なのに2つの席がある謎」は、七福神の記事で考察しています。
日本の神様との結びつき:日本では、寿老人を白鬚明神(しらひげみょうじん)と同じ神とみることもあります。白いひげの長寿のおじいさん、という姿が重なったのでしょう。
全国の白鬚神社の総本社とされるのが、滋賀県高島市の白鬚神社です。こちらも延命長寿の神として信仰されています。下で紹介する東京・向島の白鬚神社が寿老神を受け持つのも、このつながりです。
05. 寿老人をまつる主な寺社
- 行願寺(ぎょうがんじ/通称:革堂・京都市中京区)― 都七福神の寿老人の担当です。本堂の横に寿老人神堂(じゅろうじんしんどう)があります。豊臣秀吉の都市改造で寺が移ったときに、南極寿星寿老神(なんきょくじゅせいじゅろうじん)をまつったと伝わります。
- 長安寺(ちょうあんじ/東京都台東区谷中)― 谷中七福神の寿老人の担当です。寿老人像は、徳川家康の寄進(きしん)と伝わる等身大の座像(ざぞう)です。左わきに鹿を従えています。墓地には画家の狩野芳崖(かのうほうがい)の墓もあります。
- 鷲神社(おおとりじんじゃ/東京都台東区千束)― 酉の市(とりのいち)で有名な神社です。浅草名所七福神の寿老人の担当です。
- 石浜神社(いしはまじんじゃ/東京都荒川区南千住)― こちらも浅草名所七福神の一社で、「寿老神」をまつります。御朱印には、寿老人の連れる鹿の印が押されると紹介されています。
- 白鬚神社(しらひげじんじゃ/東京都墨田区東向島)― 隅田川七福神の寿老神の担当です。祭神の白鬚明神を、寿老神に見立てていると紹介されています。
おもしろいのは浅草名所七福神です。「七」福神なのに、9つの社寺でできています。寿老人と福禄寿が、それぞれ2か所ずつあるからです。
9にした理由は、九が数のきわみで、人が集まる縁起のよい数だから、と説明されています。寿老人に2回会えるコースは、長寿を願う人にはうれしいですね。
06. 寿老人と福禄寿の違い・見分け方ガイド
寿老人とよく間違えられるのが、同じ七福神の福禄寿です。どちらも白いひげのおじいさんで、杖に巻物を結んでいることがあります。
※姿は時代や作者によって違います。上のポイントは目安です。
07. 寿老人の物語 ― 『西遊記』で逃げ出した白い鹿
寿老人は、中国の小説『西遊記』にも登場します。舞台は第78回から第79回の「比丘国(びくこく)」です。
この国の王様のそばには、「国丈(こくじょう)」と呼ばれる老人がいました。国丈は美しい娘を王様に差し出します。ところがその娘も妖怪で、王様はすっかり病気になってしまいました。
そこで国丈は、恐ろしい薬を勧めます。子どもたちの心臓と肝(きも)を薬の材料にせよ、というのです。
これを知った孫悟空(そんごくう)は、子どもたちをこっそり救い出します。そして国丈の正体を見破り、住みかの洞穴まで追いつめました。
孫悟空がとどめを刺そうとした、そのときです。南極老人、つまり寿老人が現れて、「待ってくれ」と止めました。
実は国丈の正体は、寿老人の乗り物だった白い鹿でした。主人のもとから逃げ出し、妖怪になっていたのです。しかも、寿老人の杖まで盗んでいました。
寿老人は鹿をしかり、本当の姿にもどらせます。そして王宮へ連れていき、王様に正体を見せました。
最後に寿老人は、袖の中から棗(なつめ)を3つ取り出します。東華帝君(とうかていくん)という仙人に、お茶うけとして持っていくつもりの棗でした。それを王様に与えると、王様の病気はしだいに治っていったと書かれています。
──そう、長寿の神様でも、乗り物の白い鹿の脱走には手を焼いたのです。それでも最後は、ちゃんと命を延ばすお土産を置いていくところが、寿老人らしいですね。
08. 寿老人のまとめと関連記事
この記事でわかったこと
- 寿老人は、中国で「長寿の星」とされた南極老人星(カノープス)が神様になった姿
- 京都の革堂、東京の長安寺・鷲神社などで会える
- 鹿は、中国では「禄(ろく)」と同じ音で出世のしるし。そのうえ1500年生きるといわれる長寿の動物でもあった
次のお正月は、長寿の星の神様に、家族の健康をお願いしに行きませんか。
09. ゆる仏様トーク ― 寿老人編
寿老人は、今でいえば「めったに会えないレアキャラの長寿アドバイザー」です。本体の星は、東京だと地平線すれすれの2度ほどしか昇りません。会えたらラッキー、ゲームでいえば最高レア(SSR)のキャラですね。
長寿の神様の乗り物なのに、こっそり抜け出して、妖怪になってしまう。しかも主人の杖まで持ち出す白い鹿。──そう、1500年生きても、反抗期はあったのかもしれません。
※経典や伝承の言葉ではなく、寿老人のイメージから作ったセリフです。


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