【神社めぐり】熱田神宮ゆかりの古社「高座結御子神社」

 名古屋市熱田区に鎮座する 高座結御子神社(たかくらむすびみこじんじゃ) は、熱田神宮の摂社の一つでありながら、独自の歴史と格式を誇る古社です。
 今回はその由緒や御祭神、境内の見どころを詳しくご紹介します。


◆ 高座結御子神社とは

 高座結御子神社は、熱田神宮の東方に位置し、古くから「高座さま」とも呼ばれてきました。
 創建年代は明らかではありませんが、熱田神宮とほぼ同時期(673~686年頃)創祀された熱田神宮に深い関わりを持つ神社で、尾張国造(おわりのくにのみやつこ)である尾張氏の氏神高倉下命(たかくらじのみこと)を祀る由緒ある社と伝えられています。

 以前の本殿等の建物は尾張造という特殊な形式の建物だったそうですが、戦災を受け、本殿をはじめ諸施設が全て消失、昭和3年頃に崇敬者の熱意を受け御造営を行い立て直されたとのことです。
 現在の社殿は元の尾張造りを原型にしながら祭典、参拝に便利なよう新しい感覚を取り入れて造営されたものだそうです。


◆ 御祭神

主祭神は 高倉下命(たかくらじのみこと)

  • 『古事記』や『日本書紀』に登場する神で、神武天皇が東征の際、夢に現れて「霊剣」を授け、勝利に導いたとされています。
  • この霊剣は後に「布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)」と呼ばれ、石上神宮(奈良県)に奉納されたと伝えられています。

高倉下命は、武力だけでなく「結び」の力を持つ神ともいわれ、縁結びや和合のご利益でも知られています。

 高倉下命については詳しい記事を以前にまとめたのでそちらもご覧ください。

◆境内の末社 ※4社

鉾取社 ※鉾取神(ほことりのかみ)

 鉾取神を主催神としている。

新宮社 ※素戔嗚尊(すさのおのみこと)

御井社 ※御井神(みいけのかみ)

◆ 御井社とは

御井社は、高倉稲荷社の傍らに鎮座し、井戸の神様をお祀りしています。
古来、日本では清らかな水が湧き出る井戸は「神聖な場所」とされ、生活の根幹を支える水の恵みに感謝しつつ、病気平癒や子どもの成長を願う信仰が広まりました。

この御井社の井戸は特に霊験あらたかとされ、**「のぞけば願いが叶う井戸」**として知られています。


◆ 井戸のぞきの信仰

御井社で有名なのが「井戸のぞき」と呼ばれる祈願法です。

井戸に残る龍神伝説

 この井戸には龍神を祀る伝説も残っています。
 昔に天皇様の娘様が、病気を患った際、稲妻と共に一匹の龍が現れ娘様をその身に包みました。
 龍が娘様を離すと、娘様の病気は見事に回復し元気を取り戻しました。
 喜んだ天皇様が龍に「褒美は何がいいか」と尋ねたところ、龍は「どこかに私の住める場所をください」と言って天へ帰っていきました。
 天皇様が皆と相談したところ、高倉の森に社を建てて、井戸を掘り、龍を祀ろう
ということになりました。
 それ以降龍は住まいを井戸に移され、龍の住む井戸をのぞく子供たちが病気にならなくなったとされています。

特に、子どもの健やかな成長や受験合格など、人生の節目に参拝する人が多いといわれます。井戸という自然の力を借りて、神様と直に心を通わせるような、古代的で素朴な信仰が今も息づいているのです。

◆ 虫封じのご利益

御井社は「虫封じ」にご利益がある社としても知られています。

ここでいう「虫」とは、体に悪さをする実際の虫だけでなく、古くは小児の夜泣きや疳(かん)の虫)、さらには病気や災厄をもたらす目に見えない存在を意味しました。

御井社の井戸水は霊験があるとされ、

  • 子どもの夜泣きが止まる
  • 疳の虫が治まる
  • 健康長寿を授かる

といった信仰が広まっていました。実際、江戸時代から昭和初期にかけては、地元の人々が子どもを連れて「虫封じ祈願」に訪れたと伝わります。

 現代でも「子どもの健やかな成長を願いたい」との思いから、親子で御井社にお参りする姿を見ることができます。

 高座結御子神社の御井社は、

古代から続く水への感謝と畏敬の心が、この御井社の信仰に表れており、参拝すれば清らかな気持ちで心を整えることができるでしょう。

 名古屋で「子どもの健康」や「願いごとの成就」を祈りたい方は、ぜひ一度、御井社の井戸をのぞいてみてはいかがでしょうか。

稲荷社 ※宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)

 高倉稲荷社は、高座結御子神社の境内に鎮座する末社で、宇迦之御魂神をお祀りしています。稲荷神は一般に五穀豊穣や商売繁盛の神として知られていますが、この稲荷社は特に**「出世開運」**のご利益があると伝えられています。

その理由こそ、豊臣秀吉にまつわる「太閤出世稲荷」という別名にあります。

◆ 豊臣秀吉と「太閤出世稲荷」

 若き日の秀吉は、尾張国中村(現在の名古屋市中村区)で生まれ、やがて織田信長に仕えることになります。しかし、彼が信長の草履取りとして仕官する前、この高倉稲荷社に参拝し、出世を祈願したと伝わっています。

 その後、秀吉は信長のもとで頭角を現し、天下統一を果たすまでに大出世。人々はこの稲荷社を「出世を叶えてくれる神」として崇め、**「太閤出世稲荷」**と呼ぶようになったのです。

 このエピソードは、秀吉の人生を象徴するような物語であり、境内に立つと「努力すれば道が開ける」という力強いメッセージを感じ取ることができます。


◆ ご利益 ― 出世・仕事運・商売繁盛

「太閤出世稲荷」の名の通り、最大のご利益は出世開運です。
現代では、

  • 会社での昇進を願う人
  • 事業の成功を祈る経営者
  • 勉学や受験で成果を出したい学生
    など、多くの参拝者が願掛けをしています。

また、稲荷神の基本的なご利益である商売繁盛・財運招福にも通じており、仕事運や金運を高めたい方にとっても心強い参拝スポットといえるでしょう。

名古屋で「努力を実らせたい」「出世運を高めたい」と願うなら、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。秀吉のように人生の転機をつかむきっかけになるかもしれません。

 高座結御子神社の奥の院と呼ばれるのが愛知県春日井市にある高座神社です。
 高倉山の頂上付近に鎮座し、小さいお社の神社ですが、お社の後方に大きな磐座があり、この磐座は高倉下命が、降り立った場所とされています。
 詳しくは別の記事でまとめていますので、興味がある方はそちらのリンクも確認してみてください。

◆ 境内の見どころ

社自体が町中にあるため、境内は比較的に小さめですが、厳かな空気が漂います。

高倉貝塚

御神木 大クス

信長攻路

◆ ご利益

高座結御子神社は、子育てのかみとしての信仰が厚く幼児生育祈願祭として6月に祭礼が行われています。


◆ アクセス

  • 所在地:愛知県名古屋市熱田区高蔵町9-9
  • アクセス:地下鉄名城線「西高蔵駅」から徒歩約5分
  • 駐車場:敷地内に駐車場あり

熱田神宮からも近く、徒歩で合わせて参拝するのにちょうど良い距離です。


◆ まとめ

高座結御子神社は、熱田神宮の摂社でありながら、独自の歴史と伝承を持つ由緒ある神社です。
「結び」の力を宿す御祭神・高倉下命を祀り、子育ての御利益があるとして信仰されてきました。

熱田神宮を参拝する際には、ぜひ足を延ばして高座結御子神社も訪れてみてください。
静かな境内で祈りを捧げれば、きっと新たなご縁や力強い後押しを感じられるでしょう。

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