【神社めぐり】京都・松尾大社

― 酒造と水の神を祀る、京都最古の社 ―

◆ 京都最古の神社・松尾大社とは

京都市西京区に鎮座する「松尾大社(まつのおたいしゃ)」は、京都盆地の西方・松尾山の麓に位置する古社です。
創建はなんと飛鳥時代、文武天皇の御代・大宝元年(701年)と伝わります。
これは平安京が造営される約90年前のこと。すなわち、京都で最も古い神社のひとつとされています。

古来より「賀茂社(上賀茂・下鴨)」と並び称され、王城鎮護(国家安泰)の神として朝廷からも厚く崇敬されました。
また、酒造りの神・水の神として全国の酒造関係者から篤く信仰を集めています。


◆ 御祭神 ― 大山咋神(おおやまくいのかみ)

松尾大社の主祭神は「大山咋神(おおやまくいのかみ)」。
『古事記』や『日本書紀』に登場する山と水を司る神で、比叡山の守護神としても知られています。

「咋(くい)」には“杭を打つ”の意味があり、土地を守り固める神とされることから、
・国土安泰
・家宅繁栄
・開運長寿
などのご神徳が伝わります。

また、配祀神として「中津島姫命(なかつしまひめのみこと)」を祀り、この神は宗像三女神の一柱であり、海上安全・航海守護・豊漁の神として信仰されています。


◆ 松尾山の神が降りた伝説

社伝によれば、松尾大社の鎮座する松尾山には、太古の昔より神霊が宿ると信じられていました。
ある時、秦氏の祖先・秦都理(はたのとり)が神託を受け、松尾山の磐座(いわくら)に大山咋神を祀ったのが始まりとされています。

この秦氏は、古代に渡来した技術者集団であり、養蚕・機織り・酒造り・灌漑などの高度な技術を日本にもたらしたとされます。
彼らが信仰した神こそが「松尾大神」であり、その神徳が“酒造りの神”として今に続いているのです。


◆ 酒造の神として全国からの信仰

松尾大社は「日本第一酒造神」としても知られ、全国の酒造家から“松尾さま”と呼ばれ親しまれています。
毎年11月に行われる「酒-1グランプリ」や「新酒祭」には、全国の蔵元が参集し、酒造りの安全と繁栄を祈願します。

境内には「亀の井(かめのい)」と呼ばれる霊泉が湧いており、この水で醸した酒は腐らないと伝えられています。
現在でも多くの杜氏がこの水を汲み、酒造の守護を願って奉納を行っています。


◆ 松尾大社と平安京

桓武天皇が平安京を造営した際、西方守護の神として松尾大社を重んじました。
以後、朝廷からの勅使参拝が行われ、延喜式名神大社にも列せられます。

また、賀茂社の祭礼「葵祭」に対して、松尾大社は「松尾祭」として並び称される存在。
「松尾祭」は平安時代から続く京都三大祭のひとつに数えられ、神輿や山車が桂川を渡る勇壮な行列は今も地域の誇りです。


◆ 境内の見どころ

松尾大社の境内は広大で、見どころも豊富です。

  • 楼門(重要文化財):慶長年間に再建された壮麗な門で、松尾の象徴的存在。
  • 本殿(重要文化財):室町時代の建築様式を今に伝える貴重な社殿。
  • 亀と鯉の池:神の使いである亀と鯉が泳ぎ、「長寿」「金運」「良縁」を象徴。
  • 松尾の滝:修験者が滝行を行った霊場で、清らかな気が満ちています。

また、境内の「山吹の庭」は春になると黄金色の山吹が咲き誇り、その美しさから“山吹の神社”としても有名です。


◆ ご利益

松尾大社のご利益は多岐にわたります。

  • 商売繁盛
  • 酒造繁栄
  • 交通安全
  • 開運招福
  • 延命長寿
  • 良縁成就

特に「お酒」「水」「土地」に関する願いにはご神徳が強く、杜氏や料理人、水商売関係者などからの信仰も厚い神社です。


◆ アクセス

  • 所在地:京都府京都市西京区嵐山宮町3
  • アクセス:阪急嵐山線「松尾大社駅」下車すぐ
  • 駐車場:あり(無料・約150台)

◆ まとめ

古代より京都の西方を守護し、今もなお“水と酒の神”として人々に親しまれる松尾大社。
その背後にある松尾山と清流桂川の自然、そして秦氏の祈りが、悠久の時を超えて息づいています。

春の山吹、秋の紅葉、冬の静寂——
四季を通して訪れたい、京都の隠れた聖地です。

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