神 様 図 鑑 — No. 070
おおやまくいのかみ 大山咋神
大年神の御子神 / 日吉大社・松尾大社の主祭神 / 山・酒造・農業・縁結びの守護神
① 名前と出典
| 正式名称 | 大山咋神(おおやまくいのかみ)古事記 |
|---|---|
| 日本書紀表記 | 大山咋命(おおやまくいのみこと)日本書紀 |
| 別名 | 山末之大主神(やますえのおおぬしのかみ)——「山の末(頂上)の大いなる主の神」という荘厳な別名。古事記 |
| 名前の意味 | 「大(おお)」は偉大な。「山(やま)」は山岳。「咋(くい)」は「杭(くい)・杙(くい)を打つ」——大地・山に杭を打って境界を定める力強い行為を指す。全体として「偉大な山に杙(くい)を打ち定める神」——山を治め山の境界を支配する豪壮な山の主神という意味。 |
| 初出文献 | 古事記(712年)中巻。大年神(No.050)の御子神として記録される。「松尾(まつのを)と云う山の主神なり。また葛野の松尾神社に坐して、木花開耶姫命を以て妻とする神なり」という記述があり、木花之佐久夜毘売(No.025)との婚姻と松尾大社との縁が古事記に直接記されている。 |
② 神様の種類・神格
| 分類 | 国津神——山・酒造・農業・縁結りの多彩な神格を持つ国津神の雄——大年神(年・農業の神)の御子として農業神の性格を受け継ぎながら、比叡山という聖なる山の守護神・松尾大社の酒造の神という独自の神格も確立した。 |
|---|---|
| 神格 | 山神・酒造神・農業神・縁結神・延暦寺守護神・鬼除け神 |
| 酒造の神としての側面 | 松尾大社(京都・嵐山近く)は「日本第一酒造の神」として全国の酒造業者から最高の崇敬を受ける。毎年「酒造の感謝祭」が行われ、全国の酒蔵から新酒の樽が奉納される。日本酒・ビール・ウィスキー・みりんなど醸造全般の守護神。松尾大社社伝 |
| 日吉大社・比叡山との縁 | 日吉大社(滋賀県大津市)は比叡山延暦寺の守護神社として、天台宗・比叡山の精神的守護者として平安時代から最重要の神社のひとつ。大山咋神が比叡山を御神体山として鎮まることから「日吉(ひよし)の神様」として親しまれてきた。全国の「山王(さんのう)神社」の総本社でもある。 |
③ 活躍した時代
大年神の御子として農業神の血脈を受け継ぎながら、比叡山・松尾山という二つの聖山の守護神として古代から現代まで信仰を集める。天台宗(比叡山延暦寺)・酒造業・農業・縁結りという多彩な縁を持つ国津神の雄として、今日も日吉大社・松尾大社に多くの参拝者を集める生きた信仰の神。
祀られる神社
登場する神話・伝説
松尾大社(京都・嵐山)は「日本第一酒造の神」として全国の酒造業者から最高の崇敬を受けます。平安時代に秦氏(はたし)という渡来人の豪族が松尾山の神(大山咋神)を篤く信仰し、松尾山の霊泉(神泉)を使った酒造りが発展したことが「松尾大社=酒造の神」という信仰の起源とされます。現代でも毎年4月に行われる「醸造祭」では全国の酒蔵・ビール・ウィスキー・みりんメーカーから樽が奉納され、醸造業界全体の守護神として生きた信仰が続いています。
古事記に記された大山咋神——松尾と木花之佐久夜毘売との婚姻
古事記によれば、大山咋神は大年神の御子として記録され、「松尾(まつのを)という山の主神なり。また葛野(かどの)の松尾の神社に坐して、木花開耶姫命を以て妻とする」という記述がある。木花之佐久夜毘売(No.025)——瓊瓊杵尊の妃として有名な桜の女神——が大山咋神の妻でもあるという記述は、「山の主神(大山咋)と花の女神(木花之佐久夜毘売)の婚姻」という自然の調和を体現する縁結りの神話として解釈できる。古事記に松尾大社の名が直接記録されているという点も大山咋神の特別な格式を示している。
日吉大社と比叡山延暦寺——「山の神が天台宗の守護神になった」という縁
最澄(伝教大師)が比叡山に延暦寺を開いた際(788年)、比叡山の守護神として日吉大社に祀られる大山咋神(山王権現)への信仰を取り入れた。「山の主神が仏教の守護神になる」という神仏習合の典型例として、日吉大社の「山王権現(さんのうごんげん)信仰」は中世まで日本最大級の信仰形態のひとつとなった。平安京(京都)の鬼門(東北)の守護神として日吉大社が機能したことから、「大山咋神=鬼門除けの神」という信仰も生まれた。現代の日吉大社には「方除け(ほうよけ)」のご利益でも参拝者が訪れる。

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