~鏡を造り、天照大神を再びこの世界へ導いた“匠神”~
伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)は、日本神話の中でも「特別な技術力」を持つ神として登場する。
その専門分野は――金属加工。
特に「鏡」の制作において最高の技を持つ神として古くから知られている。
■天岩戸神話のキーパーソン 八咫鏡を作った神
天照大神が天岩戸に隠れ、世界が闇に包まれた際、神々はなんとか太陽をこの世界に戻そうと知恵を出し合った。
その時、伊斯許理度売命は 八咫鏡(やたのかがみ) を作り出した。
この鏡は、天照大神を誘い出すための“決定的アイテム”となる。
八咫鏡は現在、三種の神器の一つとして皇室に伝わるのは言うまでもない。
つまり伊斯許理度売命は、神器の創造者という大きな位置づけを持つ存在だ。
■「いしこり」の意味とは?
「石凝り(石こり)」とは、金属を石の炉で溶かし、鏡を鋳造した古代製鏡技術を示す言葉とも言われている。
つまり名そのものが「金属加工に長けた匠」を象徴しているのだ。
■どのようなご利益があると信仰されてきたのか
伊斯許理度売命は「造形」「工芸」「技術」「創造力」の神として信仰されてきた。
- 学問・技術系クリエイター
- 職人・アーティスト
- 金属加工・デザイン仕事
- 研究開発職
こういった分野から信仰を集めやすい神といえる。
「試作」「発明」「作品の完成」「技術向上」を祈るのにも相応しい神格を持つ。
■祀られる神社
伊斯許理度売命は全国的には大規模に祀られている数は少ないが、象徴的な神社がある。
- 中山神社(岡山県)
→ 古来、鏡製作の神として信仰された場所。 - 鏡作坐天照御魂神社(奈良県)
→ 天照大神を鏡として祀る社であり、伊斯許理度売命とも関わり深い。
鏡と金属の神を祀る神社は、まさに神話世界で活躍した「匠の世界」をそのまま体現しているといえる。
■まとめ
伊斯許理度売命は「世界を取り戻した鏡の創造者」として、日本神話に深い爪跡を残した神だ。
今の時代で表現するなら
“日本最古のクリエイティブエンジニア”
という言い方がもっとも似合っているだろう。
天岩戸神話を支えた職能神の存在を知ると、日本神話は単なる神々の競演ではなく、「技術・工夫・発明」が世界を変えていく物語でもあるのだと気づかされる。
創造する者、作り上げる者にとって――
この神は静かに、大きな力を与えてくれる。

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