別名
尾綱根命(おつなねのみこと)
父母神
建稲種命・玉姫命
役職
応神天皇朝の大臣
御子神(代表)
仲姫命(仁徳天皇の母)
縁の神社
針綱神社(犬山市)
📅 2026年6月22日 ✍️ 神社めぐり管理人 🗂 神様図鑑シリーズ 📖 読了目安:11分
🏯「尻調根命」と「尾綱根命」——同一人物の二つの名前を整理する

「尻調根命(しりつかねのみこと)」と「尾綱根命(おつなねのみこと)」は同一人物の異なる表記です。針綱神社(犬山市)の御祭神リストには「尻調根命(尾綱根命)」と併記されており、両名が同一人物であることが明示されている。古事記では「尾綱根命」、先代旧事本紀では「尻綱根命(しりつなねのみこと)」とも表記されます。建稲種命の子に「尻綱根命(しりつなねのみこと)(=尾綱根命)——応神天皇の大臣」という記録がある。本記事では針綱神社の表記に倣い「尻調根命(しりつかねのみこと)」を正式名称とし、別名「尾綱根命」と合わせて解説します。この神様は尾張氏の系譜において、父・建稲種命(東征の副将軍・前回記事)と子・尾治針名根連命(針名神社・天白区・本シリーズ掲載済み)の「中間にある橋渡し」の存在として、尾張氏が応神天皇朝に朝廷の最中枢に入り込んだ歴史を体現する神様です。

① 名前と出典

正式名称 尻調根命(しりつかねのみこと)針綱神社・日本武尊伝説資料(yamatotakeru.jp)
別名・表記の揺れが多い神名。以下の通り複数の表記が確認されている。
表記の一覧 尻調根命(しりつかねのみこと)針綱神社御祭神表記
尾綱根命(おつなねのみこと)古事記・一般的な表記
尻綱根命(しりつなねのみこと)先代旧事本紀・日本武尊伝説資料
尾治忠命(おわりただのみこと)尾張氏系図の一部
名前の意味 「尾(お)」or「尻(しり)」——「尾張(おわり)」の「尾」に由来する氏族名を冠した神名。「尻(しり)」は「後ろ・末尾・根本」を意味し、「尾(お)」と同義に使われる場合がある。

「綱・調(つな)」——「綱(つな)」は繋ぐ・束ねるという意味。「調(つき・つな)」は整える・取り仕切るという意味。大臣として朝廷政務を取り仕切った実績を神名に反映していると解釈できる。

「根(ね)」——根本・根幹。尾張氏の根幹を担う人物としての敬称。父・建稲種命の「種(たね)」と対照的に「根(ね)」が付くことで「稲の根」として「種の次の世代」を意味するともされる。
初出文献 古事記(応神天皇の段)——建稲種命の孫「志理都紀斗売(しりつきとめ)」が品陀真若王に嫁ぎ、その子の「高城入姫命・仲姫命・弟姫命」が応神天皇の妃となった系譜の中で「尾綱根命」の名が間接的に登場する。先代旧事本紀(天孫本紀)にも建稲種命の子として「尻綱根命」が記録される。古事記(応神天皇の段)・先代旧事本紀(天孫本紀)
神様の種類 尾張氏系・国津神——応神天皇朝の大臣として尾張氏の政治的全盛期を支えた人物神
尾綱根命は応神天皇の大臣として活躍。古事記・日本書紀では「建稲種命の子として尾綱根命」の系譜が示され、応神天皇・仁徳天皇へと繋がる皇室との血脈の橋渡し役として記録される。
🏯 シリーズのつながり:本シリーズでは尾張氏の系譜を上から順に追ってきました。天火明命(始祖)→天道日女命(妃)→乎止与命(初代国造)→真敷刀俾命(妻)→建稲種命(東征副将軍)——そして今回の尻調根命(建稲種命の御子)、さらに次世代の尾治針名根連命(孫・針名神社の主祭神)へと続きます。尻調根命はこの系譜の中で「東征で父が海に散った後、尾張国造の地位を引き継ぎ、娘たちを応神天皇に嫁がせることで尾張氏と皇室の血脈を繋いだ」という静かながら重大な歴史的役割を担った神様です。

② 文献別の記録状況

文献・資料 成立年代 記載 記述の内容・表記
古事記 712年 記載あり(間接) 「建伊那陀宿禰の女・志理都紀斗売」の系譜から「尾綱根命」が推定されるが、古事記本文での直接の記載は限定的。応神天皇の妃系譜の中で尾張連氏の祖として登場する
日本書紀 720年 記載あり 応神天皇紀の「尾綱根命が大臣として仕えた」という記録が見られる
先代旧事本紀(天孫本紀) 平安初期 記載あり 「尻綱根命(しりつなねのみこと)」として建稲種命の子に記録。応神天皇の大臣として活躍したと伝える
尾張氏系図 各時代 記載あり 「尾治忠命(おわりただのみこと)」として記録する系図もある。仲姫命の父神として尾張氏と皇室の血脈を繋ぐ重要人物として扱われる
針綱神社(犬山市)御祭神 各時代 御祭神として祀る 「尻調根命(尾綱根命)」として御祭神リストに記載。尾治針名根連命・建稲種命・玉姫命らとともに延喜式内社・針綱神社の神として現在も祀られる

③ 尾張氏の系譜における位置づけ

🏯建稲種命と尾治針名根連命の「間」に立つ橋渡しの神

尻調根命は本シリーズの記事で扱ってきた「建稲種命(父・東征副将軍)」と「尾治針名根連命(孫・針名神社主祭神)」の間に位置する神。父・建稲種命が駿河の海で水死(本シリーズ前回記事)した後、尾張国造の地位を継承し・娘たちを応神天皇に嫁がせ・尾張氏と天皇家の血脈を繋いだ。建稲種命の子の尾綱根命は応神朝に大臣として活躍し、その子の尾張意乎己は仁徳朝の大臣となっている。第15代応神天皇は建稲種命の孫の仲姫命を皇后としている。

父神(十二世孫)
建稲種命
たけいなだねのみこと
倭建命東征の副将軍・熱田神宮の御祭神。帰路に駿河の海で水死。(本シリーズ前回記事)
母神
玉姫命
たまひめのみこと
大荒田命の娘・知多半島師崎に居住・羽豆神社(南知多)で夫・建稲種命の帰りを待った妻神。
本記事の神様(十三世孫)
尻調根命
しりつかねのみこと(尾綱根命)
建稲種命の御子・応神天皇朝の大臣・娘たちを応神天皇に嫁がせ皇室と尾張の血脈を繋いだ。
御子神(娘)
仲姫命
なかつひめのみこと
応神天皇の皇后・仁徳天皇の母。尻調根命の娘として皇室に嫁ぎ仁徳天皇を産んだ。
御子神(娘)・兄弟
高城入姫命・弟姫命
たかきのいりひめ・おとひめ
ともに応神天皇の妃となった。尻調根命の娘たちは三人全員が応神天皇に嫁いだ。
孫神(十四世孫)
尾治針名根連命
おわりはりなねのむらじ
針名神社(名古屋市天白区)の主祭神・延喜式従三位。(本シリーズ既出記事)

④ 活躍した時代

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古墳時代中期(4〜5世紀)——応神天皇・仁徳天皇の御代・尾張氏の政治的全盛期
建稲種命の子の尾綱根命は応神朝に大臣として活躍し、その子の尾張意乎己は仁徳朝の大臣となっている。第15代応神天皇は建稲種命の孫の仲姫命を皇后としている。応神天皇・仁徳天皇の御代は「大和政権の基礎が固まり・各地の豪族が朝廷の中枢に参加した時代」——尻調根命はその時代に「娘を皇后にした外戚」として尾張氏最大の政治的全盛期を実現した人物。
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祀られる神社

📌 参拝ガイド:尻調根命への最も直接的な参拝地は針綱神社(愛知県犬山市)。名古屋から名鉄で犬山駅まで約30分→徒歩約5分(犬山城の天守閣脇)。犬山城観光とセットで参拝できる絶好のロケーション。さらに父・建稲種命(熱田神宮)→尻調根命(針綱神社・犬山)→孫・尾治針名根連命(針名神社・天白)という「三世代の尾張氏を辿る参拝コース」は、愛知県内を縦断する本シリーズならではの歴史散歩です。
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史実——応神天皇朝と尾張氏の黄金時代

娘を三人とも応神天皇に嫁がせた「外戚としての尾張氏」——大臣・尻調根命の戦略
建稲種命の子・尻綱根命(=尾綱根命)は応神天皇の大臣として活躍。志理都紀斗売(しりつきとめ)——五百城入彦皇子の妃となる。高城入姫命(たかきのいりひめ)——応神天皇の妃。仲姫命(なかつひめのみこと)——応神天皇の后となり仁徳天皇を産む。弟姫命(おとひめのみこと)——応神天皇の妃となる。つまり尻調根命の娘のうち少なくとも三人(高城入姫命・仲姫命・弟姫命)が応神天皇に嫁ぎ、そのうち仲姫命が皇后となって仁徳天皇を産んだ。「仁徳天皇の外祖父が尻調根命(尾張氏)」ということになる。大臣として応神天皇に仕えながら娘三人を同じ天皇に嫁がせるという事実は、当時の尾張氏が単なる地方豪族の枠を超えた「朝廷の中枢」に位置する氏族だったことを示している。

出典:日本武尊伝説資料(yamatotakeru.jp)・古事記(応神天皇の段)・尾張氏Wikipedia
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尻調根命の御子神たち——三人の娘が応神天皇の妃に

娘①
高城入姫命
たかきのいりひめのみこと
応神天皇の妃。額田大中日子命・大山守皇子・去来真稚皇子を産む。
娘②(皇后)
仲姫命
なかつひめのみこと
応神天皇の皇后・仁徳天皇の母。仁徳天皇は後の日本の礎を築いた偉大な天皇。
娘③
弟姫命
おとひめのみこと
応神天皇の妃。阿倍皇女・淡路三原皇女・菟野皇女・大原皇女・滋原皇女を産む。
娘(品陀真若王の妃)
志理都紀斗売
しりつきとめのみこと
五百木之入日子命(品陀真若王)の妃。高城入姫命・仲姫命・弟姫命の母となる(古事記)。
👑「仁徳天皇の外祖父」という重大な歴史的位置——尾張氏が皇室に繋がった瞬間

仁徳天皇(大雀命・第16代)は「仁政の天皇」として知られ、「民のかまど」の煙が立たないことを見て税を免除した逸話や、大阪湾の難波の堀江を開削した土木事業などで日本史上最も称えられる天皇のひとり。その仁徳天皇の母・仲姫命の父神が尻調根命——つまり尻調根命は「仁徳天皇を生み出した外祖父」という重大な歴史的位置に立つ。大和政権が本格的な律令国家へと整備される基礎を作った応神・仁徳両天皇の時代に、尾張氏の代表として尻調根命が「大臣・外戚」という最高の政治的地位に就いていた事実は、尾張氏研究において特筆すべき事柄。

「東征で父を失い、大臣として立て直した尾張氏」——尻調根命が果たした再建の役割
父・建稲種命が倭建命東征の帰路に駿河の海で水死したとき、尻調根命はまだ幼かったか生まれていなかった可能性がある(建稲種命の妻・玉姫命との子とされる)。父の突然の水死という家族の悲劇の後、尻調根命は尾張国造の地位を継承し・父の功績(東征への貢献)の遺産を活かしながら・応神天皇に娘三人を嫁がせることで尾張氏の地位を「地方豪族から外戚(皇后の父)」へと引き上げた。「英雄の子が静かに家を立て直し、次世代に繋いだ」——尻調根命はそういう意味で尾張氏の歴史において「地味だが決定的に重要な人物」として研究者に評価されている。

出典:尾張氏Wikipedia・古代史探訪「尾張氏の活動圏」・古事記(応神天皇の段)
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逸話・エピソード

EPISODE 01 「尻調根命(しりつかね)」という珍しい神名——針綱神社だけに残る独自の表記

「尻調根命(しりつかねのみこと)」という表記は、愛知県犬山市の針綱神社の御祭神リストに「尻調根命(尾綱根命)」として記載される。「尻調根(しりつかね)」という神名は他の文献では「尻綱根(しりつなね)」や「尾綱根(おつなね)」が多く、「調(かね)」という字を用いるのは針綱神社の独自表記として特筆される。「調(かね)」には「整える・調整する・取り仕切る」という意味があり、「大臣として朝廷の政務を調整した」という役職的な意味合いが「調(かね)」に込められているとも解釈できる。また「尻綱根(しりつなね)」の「綱(つな)」が「調(つか・つきあう・かね)」に転化した経緯は不明だが、読み方の「つかね」「つなね」という音の類似から同一人物の別表記として後世に定着したと考えられる。

EPISODE 02 針綱神社のかつての鎮座地——犬山城天守閣の場所に元々あった濃尾の総鎮守

尻調根命が祀られる針綱神社の歴史は、現在の犬山城天守閣付近の「峯」への鎮座から始まる。針綱神社は延喜式神名帳所載の式内社。太古より犬山の峰(現在の犬山城天守閣付近)に鎮座され、濃尾の総鎮守でありました。創建年は不明ですが、延喜式に記載されていることから1000年以上この犬山の地に鎮座しています。天文6年(1537年)犬山城築城に際し、白山平(現在地より東方にある山)に遷座、その後の慶長11年(1606年)市内名栗町に遷座、明治15年(1882年)現在の場所に再び遷座されました。つまり現在の犬山城天守閣が立つ場所は、かつて針綱神社——つまり尾治針名根連命・尻調根命・建稲種命らが祀られていた場所だったということ。犬山城観光の際に「かつてここが尾張氏の氏神の聖地だった」という歴史的文脈を意識すると、犬山城と針綱神社の見え方がまったく違ってくる。

EPISODE 03 「仁徳天皇の母・仲姫命の父」という視点——尾張氏と大阪府の縁

仲姫命を通じて尻調根命は「仁徳天皇の外祖父」という立場になる。仁徳天皇(第16代)は現在の大阪府堺市に「大仙陵古墳(伝仁徳天皇陵)」を持ち、難波の堀江開削・民の竈の逸話などで日本史上最も民衆に慕われた天皇とされる。仁徳天皇の時代に大阪(難波)が政治・経済の中心地として発展したことも歴史上の重要な転換点。そのような偉大な天皇の母方の祖父が尾張氏の尻調根命だったという事実は、愛知県(尾張)と大阪府(難波)という、現代の二大都市圏が古代において「外祖父と孫・天皇という血縁」で結ばれていたという意外な接点として興味深い。

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ご利益

👑尻調根命のご利益——「応神天皇朝の大臣・仁徳天皇の外祖父」として

応神天皇朝の大臣として尾張氏の政務を取り仕切り、娘を皇后に送り込んだ尻調根命は、出世・縁組・縁結び・子の活躍という神格を持ちます。針綱神社(犬山市)の御神徳「安産・子授け・八方除」とも深く結びつき、子孫の繁栄・子の出世・家の安泰というご利益が信仰されています。

👑
出世・地位向上
応神天皇朝の大臣として活躍した神として出世・昇進・キャリアアップ・社会的地位の向上への守護のご利益がある。
💑
縁組・縁結び
娘三人を応神天皇に嫁がせた縁組みの神として縁結び・良縁成就・結婚・縁組みへの守護のご利益がある。
🌱
子授け・子の出世
仁徳天皇を産んだ仲姫命の父神として子授け・安産・子の成功・子の出世・子の縁組みへの守護のご利益がある。針綱神社は子授けでも知られる。
🏡
家の安泰・子孫繁栄
英雄の父(建稲種命)を失いながら家を再建した神として家の安泰・家系の継続・子孫繁栄への守護のご利益がある。
🏯
八方除・厄除け
針綱神社の主な御神徳である「八方除」は尻調根命の合祀ご利益のひとつ。全方位の邪気・厄・災難を除けるご利益がある。
🤝
政治力・組織調整
大臣として朝廷の政務を「調整(つかね・しらしめ)」した神として組織運営・調整力・リーダーシップ・交渉への守護のご利益がある。
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関わりの深い場所・聖地巡礼

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