- 「北伊勢大神宮」の異名を持つ多度大社の主祭神「天津彦根命(あまつひこねのみこと)」── 天照大神と素戔嗚尊の誓約(うけい)から生まれた神様の正体と神話エピソード
- 国重要無形民俗文化財「上げ馬神事(あげうましんじ)」── 急坂を馬が駆け上がる5月の奇祭の全貌と近年の変化、「片目の神」一目連神社の謎
- お伊勢参りとセットで巡る三重観光コース・御朱印情報・アクセス完全ガイド
「お伊勢参らばお多度もかけよ、お多度かけねば片参り」── 江戸時代の人々がそう詠んだほど、
伊勢神宮と並び称された三重の聖地へ。清流・多度川のほとりに鎮まる神様の物語、はじまります。
📋 多度大社 基本情報
| 正式名称 | 多度大社(たどたいしゃ) 別称:北伊勢大神宮・お多度さん |
|---|---|
| 主祭神 |
天津彦根命(あまつひこねのみこと) ── 天照大神(あまてらすおおみかみ)と 素戔嗚尊(すさのおのみこと)の 誓約(うけい)から生まれた5男3女のうちの一柱。 天照大神の御子神として、皇族・貴族・民衆から篤い崇敬を受けた |
| 配祀 | 天目一箇神(あめのまひとつのかみ) ── 別宮・一目連神社(いちもくれんじんじゃ)に祀られる。鍛冶・製鉄の神・風雨の神。 「片目の神」として眼病平癒・技術向上の信仰がある |
| ご利益 | |
| 社格 |
式内社(名神大社)・旧国幣大社・別表神社 「北伊勢大神宮」── 伊勢神宮と並ぶ北伊勢の総鎮守 |
| 創建 |
神代(第5代・孝昭天皇の時代との伝承) 文献初出:続日本紀(797年)・三代実録 |
| 重要神事 |
上げ馬神事(あげうましんじ)── 国重要無形民俗文化財。5月のお多度まつり期間中に行われる 流鏑馬(やぶさめ)・神楽奉納など |
| 所在地 | 〒511-0106 三重県桑名市多度町多度1681 |
| 参拝時間 | 境内:終日参拝可(夜間は制限あり)/御朱印・授与所:9:00〜17:00 |
| 御朱印 | 初穂料 300円(通常) |
| 駐車場 | あり(無料) |
| 公式サイト | tadotaisha.com |
🌊 祀られている神様を徹底解説
誓約(うけい)から生まれた
開運・縁結びの神
眼病平癒・技術向上
一目連神社の神様
誓約(うけい)の勝者
伊勢神宮(内宮)の主祭神
天照大神との誓いで子神が誕生
天津彦根命の「父神」にあたる
① 天津彦根命とは?(初心者向けかんたん解説)
ひとことで言えば、「天照大神と素戔嗚尊が誓いを交わしたときに誕生した神様」です。 現代のたとえで言うと──「最高権力者(天照大神)と反乱軍の首領(素戔嗚尊)が 互いの潔白を証明するために行ったゲームの副産物として生まれた神様」。 天津彦根命自身は誓約の「結果」として生まれており、その誕生そのものが 「天照大神の正しさ(清い心)の証」として神話に位置づけられています。
「天津彦根命(あまつひこねのみこと)」という名前の意味は、 「天空(高天原)の彦(男性の神)の根(根本・尊い存在)」とも解釈されます。 天照大神の御子神として高天原に生まれ、その後地上(葦原中国)の守護を担い、 多度大社の地に鎮まったとされています。
多度大社では古くから、この天津彦根命が 「農業・漁業・商業など、人々の生業すべてを守る神」として信仰されてきました。 北伊勢(現在の三重県北部)の総鎮守として、 近世には「お伊勢参らばお多度もかけよ」と謳われるほど、 伊勢神宮参拝とセットで巡る聖地として人々に親しまれていました。
② 誓約(うけい)── 天照大神と素戔嗚尊の「神様の宣誓ゲーム」
天津彦根命が生まれた「誓約(うけい)」とは、古事記に記された 天照大神と素戔嗚尊の「証明の儀式」です。
事の発端: 母神・伊邪那美命(いざなみのみこと)に会いたいと泣き続けた 素戔嗚尊は、最終的に「根の国(冥界)に行く」と宣言。 これを聞いた天照大神は「弟が攻め込んでくるのでは?」と疑い、 武装して素戔嗚尊を迎え撃ちます。
誓約の内容: 素戔嗚尊は「自分に邪心はない。それを証明するために互いの持ち物から子神を生み出そう」と提案。 天照大神は素戔嗚尊の十拳剣(とつかのつるぎ)を噛み砕いて息を吹きかけ、 素戔嗚尊は天照大神の勾玉を噛み砕いて息を吹きかけました。 このとき天照大神の息から生まれた神が5柱の男神(五男神)、 素戔嗚尊の息から生まれたのが3柱の女神(三女神)です。
天津彦根命の誕生: 五男神のひとりとして天津彦根命が生まれました。 天照大神は「素戔嗚尊の剣から生まれた男神たちは私の子」と宣言し、 誓約は天照大神の「勝ち」となりました。 ── そう、天津彦根命は「天照大神の清い心の証拠」として誕生した神様なのです。
✨ ご利益・祈願の詳細
🐎 国重要無形民俗文化財「上げ馬神事」完全解説
毎年5月のお多度まつり(通常5月4日・5日)に行われる 「上げ馬神事(あげうましんじ)」は、 多度大社の最も有名な神事であり、 国重要無形民俗文化財に指定されています。
神事の内容: 多度大社の境内に設けられた急坂(高さ約2メートル・傾斜約30〜40度)を、 騎手を乗せた馬が全力で駆け上がります。 馬が坂の上まで登りきれば「豊作・豊漁・吉事」、 登りきれなければ「凶作・凶事」と占います。 起源は平安時代とも言われ、千年以上の歴史を持つ祭りとして三重の風物詩となっています。
- お多度まつり開幕(5月3日頃〜): 境内に特設会場が設けられ、奉納神楽・流鏑馬など各種神事が続く
- 乗子(のりこ)の清め: 騎手(乗子)は数日前から神社の宿舎に籠り、心身を清める斎戒期間を過ごす
- 上げ馬神事本番(5月4日・5日): 各地区の代表馬が坂下から全力で坂に向かい、坂上への登坂に挑む。 坂の頂上には注連縄が張られ、それを切れるかどうかが最大の見せ場
- 神事の結果判定: 馬が坂を登り切り注連縄を切れば「上がり=豊作吉兆」、 登り切れなければ「上がらず=凶兆」として占われる
上げ馬神事は長年、急坂で馬が転倒・負傷する事故が発生することもあり、 動物福祉・動物愛護の観点から2023年以降に全国的な注目と議論を集めました。 多度大社は神事の継続と馬の安全を両立させるため、 坂の傾斜緩和・安全策の強化・運営方法の見直しを行っています。 千年の伝統と現代の価値観の間で、地域社会が真摯に向き合っている神事です。 参拝の際は事前に多度大社公式サイトで最新情報をご確認ください。
👁️ 別宮「一目連神社」── 片目の神様の謎
多度大社の境内には、主祭神・天津彦根命とは別に、 天目一箇神(あめのまひとつのかみ)を祀る 別宮「一目連神社(いちもくれんじんじゃ)」があります。
天目一箇神は「目が一つ」という意味の名前を持つ神様で、 鍛冶・製鉄の神として、また嵐・風雨の神として信仰されています。 「片目しかない」という非常に個性的な外見は、 なぜ鍛冶の神様に片目の神様の話が多いのか?という 世界の神話に共通する謎とも深く結びついています(下記「謎と考察」参照)。
🏯 見どころ・境内ガイド
📖 御朱印情報
| 種類 | 内容・特徴 | 初穂料 |
|---|---|---|
| 多度大社 御朱印(通常) | 「多度大社」の社号と北伊勢大神宮の印が入った格式ある御朱印。多度川の清流を感じさせるデザイン | 300円 |
| 一目連神社 御朱印 | 別宮・一目連神社の御朱印。「目の神様」ならではのユニークなデザインで人気が高い | 300円 |
| お多度まつり・特別御朱印 | 5月のお多度まつり(上げ馬神事)期間中に特別デザインの御朱印が頒布される(公式サイト確認推奨) | 変動あり |
🙏 参拝の作法ガイド
▶ 参拝作法の基本は 【神社参拝マナー完全ガイド】 もどうぞ。
📖 神様の物語コラム|天照大神と素戔嗚尊── 対立から誓いへ、子神誕生の瞬間
天津彦根命が生まれた「誓約(うけい)」の場面は、 古事記の中でも特に劇的な場面のひとつです。
海を支配するよう命じられた素戔嗚尊は、 亡き母神・伊邪那美命が鎮まる「根の国(冥界)」への思いを断ち切れず、 高天原で号泣し続けました。 山川は枯れ果て、国土は荒廃する中、 天照大神は「弟が私の国を奪いに来る」と警戒し、 男装・武装して素戔嗚尊を迎え撃ちます。
素戔嗚尊は「邪心はない。証明する」と誓約を提案し、互いの霊力を試す儀式が始まりました。 天照大神が素戔嗚尊の十拳剣を噛み砕いて吹いた霧から、天津彦根命ほか5柱の男神が誕生。 「男神は剣(素戔嗚尊)から生まれたけれど、清い心(天照大神)から生まれたから、私の子」と 天照大神が宣言した── その「天照大神の清い心の産物」が天津彦根命なのです。
対立していた兄妹神が「誓い」を通じて子神を生む── 古事記でも最もドラマチックな場面のひとつです。 多度大社の清流に鎮まる天津彦根命を参拝するとき、 この「清い心が生んだ神様」という背景を思い浮かべてみてください。
🎊 多度大社の主な祭事・行事
🗺️ アクセス・周辺スポット
徒歩約20〜25分
※ 名古屋駅→近鉄桑名駅→養老鉄道多度駅(乗り換え)
新名神高速「桑名北IC」より約10分
駐車場:あり(無料)
三重県桑名市多度町多度1681
TEL:0594-48-2037
桑名城跡と組み合わせ:半日
お伊勢参り+多度大社:終日
🌿 周辺のおすすめスポット
・伊勢神宮(三重県伊勢市) ── 「お伊勢参らばお多度もかけよ」── 多度大社参拝はお伊勢参りとセットが江戸時代からの定番。 伊勢神宮(内宮・外宮)から多度大社への日帰り三重神社めぐりルートが人気です。
・桑名城跡・九華公園(三重県桑名市) ── 車で約20分。東海道の要所として栄えた城下町・桑名の歴史を感じるスポット。 春は桜の名所としても知られ、多度大社参拝とセットで桑名の歴史散策が楽しめます。
・養老の滝・養老公園(岐阜県養老郡養老町) ── 車で約25分。日本の滝百選。「孝行息子の滝が酒に変わった伝説」の地。 多度大社から北上するルートで立ち寄れます。
・なばなの里(三重県桑名市) ── 車で約25分。全国最大級の花のテーマパーク。 冬のイルミネーションは全国屈指の規模。多度大社参拝とセットで三重観光のモデルコースになります。
天津彦根命の誕生をざっくり現代に置き換えるとこうなります(型A:現代たとえ)。 「会社のトップ(天照大神)とクビ寸前の問題社員(素戔嗚尊)が 『俺の清廉潔白を証明するためにここで賭けをしよう』と言い張った結果、 なぜか賭けの過程で子どもが生まれた」。 ── しかも生まれた子ども(天津彦根命)は「トップの清廉さの証拠」として認定されました。 「証拠として生まれた」という、なんとも独特な誕生経緯を持つ神様です。
そして誓約(うけい)のルールも現代目線だとなかなかユニークです(型B:神話ツッコミ)。 「お互いの持ち物を噛み砕いて息を吹きかけたら神様が生まれる」── 現代の「何かを証明する方法」の中に「噛み砕いて吹く」がランクインすることはまずないですよね。 神話の世界では「呼気に霊力が宿る」という発想が自然なものとして存在していたのかもしれません。
まあ、詳しい経緯は聞かないでください。
大事なのは、私が清い心から生まれた神だということです。
お多度の清流のように、みなさんの心も清くあるように── それが私の願いです。
上げ馬神事は…… 馬たちが健やかであることを、私も祈っています。」 ── 天津彦根命(多度大社にて・想像上のセリフ)(型C:神様セリフ)
「証拠として生まれ、清流の地に鎮まり、馬が坂を登る奇祭で農業の吉凶を占う」── 多度大社は「ひとことで言い表せない、レイヤーが深い神社」です。 ぜひ実際に多度川の清流の音を聞きながら参拝してみてください。
・ギリシャ神話:ヘファイストス(Hephaestus)── 鍛冶・火の神・跛(足が不自由)
・北欧神話:オーディン(Odin)── 知恵の神・片目(ただし鍛冶神とは異なる)
・スラブ神話:コワル(Kowal)── 鍛冶の神・身体的特徴を持つ
・世界の古代社会:鍛冶師は炉の火の光で目を傷めることが多く、実際に眼病・失明が職業病だったとされる
※ あくまで私の考察です。史実の確定的な解釈ではありません。
🌊 この記事でわかったこと まとめ
- 多度大社は天津彦根命を祀る式内社・旧国幣大社。「北伊勢大神宮」として伊勢神宮と並ぶ信仰を受けてきた三重の総鎮守。天照大神と素戔嗚尊の「誓約(うけい)」から生まれた清い神様が多度川の清流に鎮まる
- 国重要無形民俗文化財「上げ馬神事」は5月のお多度まつりで行われる奇祭。馬が急坂を駆け上がり農作物の吉凶を占う千年の伝統神事。近年は動物福祉の観点から形式の見直しも進む
- 別宮・一目連神社の天目一箇神は世界中の神話に共通する「鍛冶師・片目の神」の系譜。眼病平癒・技術向上のご利益で現代も多くの参拝者が訪れる謎多き小社
「清い心から生まれた神様」が鎮まる多度川の清流を訪れ、
北伊勢の風に吹かれながら参拝してみてください。🌊✨
参考資料:
多度大社 公式サイト・
Wikipedia「多度大社」・
三重県神社庁資料・古事記・続日本紀(797年)・文化庁文化遺産データベース(上げ馬神事)
※ 御朱印・受付時間・祭事日程は変更になる場合があります。参拝前に公式サイトでご確認ください。
※ 上げ馬神事の開催形式・日程は毎年変更の可能性があります。最新情報は多度大社公式サイトをご確認ください。

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