
神 様 図 鑑 — No. 001
おおくにぬしのみこと 大国主命
国土開拓の神 / 縁結びの神 / 医薬の神
基本情報
① 名前と出典
| 正式名称 | 大国主命(おおくにぬしのみこと)古事記 |
|---|---|
| 表記ゆれ | 大国主神(おおくにぬしのかみ)日本書紀 |
| 読み方の由来 | 「大きな国の主(あるじ)」を意味し、葦原中国を統治した神であることに由来する。 |
| 初出文献 | 古事記(712年)・日本書紀(720年) |
② 別名と出典
| 大己貴命 | おおなむちのみこと。「大いなる名を持つ者」の意。日本書紀 |
|---|---|
| 八千矛神 | やちほこのかみ。武力・勇猛を象徴する名。恋愛の歌謡にも登場する。古事記 |
| 葦原醜男 | あしはらのしこを。葦原(地上世界)の勇者を意味する。古事記 |
| 宇都志国玉神 | うつしくにたまのかみ。現世の国の霊を表す名。古事記 |
| 大物主神 | おおものぬしのかみ。大和(奈良)における別の呼称。日本書紀 |
③ 同一神・神仏習合
| 大黒天 | インド由来の福の神・大黒天と習合。「だいこく」という音の類似から同一視されるようになった。七福神の大黒様はこの習合に由来する。 中世神仏習合説 |
|---|---|
| 大物主神 | 奈良・大神神社(三輪山)に祀られる大物主神と同一視されることがある。古事記・日本書紀で記述に揺れがある。 古事記・日本書紀 |
④ 神様の種類
| 分類 | 国津神(くにつかみ)——地上世界に生まれた、または地上に宿る神。天孫降臨以前から葦原中国を治めていた神々の一柱。 |
|---|---|
| 神格 | 国土神・縁結神・農業神・医薬神・商業神・鎮守神 |
| 天津神との違い | 天津神が高天原(天界)出身の神であるのに対し、国津神は地上(葦原中国)を拠点とする神。大国主命は天照大御神の命により国土を譲渡した(国譲り)。 |
⑤ 系図
⑥ 活躍した時代
古事記・日本書紀における「神代」の時代。天照大御神が天界を、大国主命が地上(葦原中国)を治めていたとされる時代。具体的な年代は不明だが、天皇家の祖・瓊瓊杵尊(ニニギ)の降臨以前にあたる。神仏習合の影響で、中世以降も信仰が継続し「大黒天」として福の神として広まった。
祀られる神社
登場する神話・伝説
因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)
ワニ(鮫)を騙して海を渡ろうとした白兎が皮を剥がれ、泣いているところを大国主命が助ける物語。大国主命は兄弟神たちに荷物持ちにされ最後尾を歩いていたが、白兎に「真水で体を洗い、蒲の穂に包まれなさい」と教え、白兎の傷を癒した。この縁で因幡の八上比売との縁結びが成就する。
根之堅州国での試練(ねのかたすくにのしれん)
兄弟神に何度も殺されては復活した大国主命は、スサノオが統べる根之堅州国を訪れる。スサノオは火の中・蛇の室・蜈蚣(むかで)と蜂の室などに大国主命を閉じ込めるが、スサノオの娘・須勢理毘売命の助けを得てすべての試練を乗り越える。最終的にスサノオの宝物(弓矢・琴)を持って逃げ出し、スサノオに「大国主」「宇津志国玉神」と呼ばれ認められた。
国づくり・国引き神話
大国主命は少名毘古那神(スクナビコナ)とともに葦原中国を開拓。農業・医薬・温泉・禁厭(まじない)の術を人々に広めた。スクナビコナが常世の国へ去った後は、大物主神とともに国の経営を続けた。出雲国風土記には、出雲の国を大きくしようと各地から土地を引っ張ってきたという「国引き神話」も伝わる。
国譲り(くにゆずり)
天照大御神の命により、天津神の使者が大国主命に国土の譲渡を要求する。大国主命の子・事代主神は承諾するが、建御名方神は武甕槌神と力くらべをして敗れ、諏訪の地に閉じ込められる。最終的に大国主命は国譲りを承諾し、自らは幽冥(あの世・見えない世界)を治めることとなった。この国譲りが出雲大社の創建につながるとされる。
逸話・エピソード
嫉妬した兄弟神たちに何度も殺害された大国主命。最初は大きな岩を転がされ焼き殺され、次は木の裂け目に挟まれて死に、そのたびに母神・刺国若比売(さしくにわかひめ)が神産巣日神(かみむすびのかみ)に懇願して蘇生させた。不屈の生命力と母神の深い愛情が印象的なエピソード。
古事記には「八千矛神(やちほこのかみ)の歌謡」が収録されており、大国主命が遠方の妻・沼河比売(ぬなかわひめ)へ求婚する歌、正妻・須勢理毘売との別れの歌など、情感あふれる恋愛の歌が記されている。武神・国神としての顔とは対照的な、ロマンチックな一面を伝える貴重な記録。
旧暦10月(現在の11月頃)、全国八百万の神々が出雲大社に集まり、翌年の縁結びや人の運命について会議(神議り・かみはかり)を行うとされる。その期間を出雲では「神在月(かみありづき)」と呼び、他の地域では神が不在となるため「神無月(かんなづき)」と呼ぶ。この伝承が出雲大社の縁結び信仰の根底にある。
中世以降、「だいこく」という読みが共通することから、インド由来の福の神・大黒天(だいこくてん)と習合した。大きな袋を担ぎ、打ち出の小槌を持つおなじみの「大黒様」は、この習合によって生まれたイメージ。七福神の一柱として広く庶民に親しまれ、台所の神・台所神(へっついがみ)としても信仰された。


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