神 様 図 鑑
おきつひめのみこと 奥津比売命
大年神と天知迦流美豆比売の御子神・別名「大戸比売神」/ 兄神・奥津日子神と一対で祀られるかまどの女神 / 家庭の火と食を見守る古き女神
① 名前と出典
| 正式名称 | 奥津比売命(おきつひめのみこと)/別名・大戸比売神(おおべひめのかみ)古事記・上巻 |
|---|---|
| 名前の意味 | 「奥津(おきつ)」=燠火(おきび)、「大戸(おおべ)」=竈(へっつい)——ともにかまどを指す言葉に由来するとされる。兄神・奥津日子神と対をなし、二神一体でかまど・台所を守護する神として、古事記本文にも「人々が祀る竈の神である」と注記されている。 |
| 初出文献 |
古事記(712年)上巻・大年神の系譜の段 大年神が天知迦流美豆比売を娶って生んだ十柱の御子神のうち、兄神・奥津日子神に続いて記される。両神には「これは人々がいつくところの竈の神である」との割注が付されている。古事記 |
| 神様の種類 |
国津神——大年神の御子神で、兄神と一対で祀られる「竈神(かまどがみ)」 穀物神・大年神の系譜に連なることから、その神格は火を用いた煮炊き、すなわち食物の調理に関わるものと考えられている。 |
② 活躍した時代
古事記の系譜に名を連ねるのみで、個別の神話上の活躍は伝わっていない。しかし「竈の神」としての信仰は神話の時代にとどまらず、後世の三宝荒神信仰や、現代でも一部の家庭に残る「荒神様」信仰として、途切れることなく生き続けている点が大きな特徴である。
祀られる神社
登場する神話・伝説
大年神の系譜——天知迦流美豆比売との十柱の御子神
古事記上巻において、大年神は天知迦流美豆比売を娶り、奥津日子神・奥津比売命(大戸比売神)・大山咋神・庭津日神・阿須波神・波比岐神・香山戸臣神・羽山戸神・庭高津日神・大土神(土之御祖神)の十柱を生んだと記される。奥津日子神・奥津比売命の二神には「これは人々がいつくところの竈の神なり」との注記が付される、極めて珍しい記述である。
名前の似た「大宜津比売神」とは別の神
奥津比売命の別名「大戸比売神(おおべひめのかみ)」は、五穀の神である「大宜津比売神(おおげつひめのかみ)」と名前が似ているため混同されやすい。大宜津比売神は鼻・口・尻から食物を出して素戔嗚尊に献上し、その様子を見た素戔嗚尊に殺され、遺体から五穀と蚕が生まれたという著名な神話を持つ食物神であり、竈を守る大戸比売神とは由来も物語も異なる別の神である。
逸話・エピソード
別名「大戸比売神」の「戸(へ)」は、かまど(へっつい)を意味する古語に由来するとされる。奥津比売命が「燠火」を、大戸比売神が「かまど本体」を象徴する名であるとすれば、一柱の神が二つの異なる名前を通じて、火と器という「かまど」の両側面を表していることになる。
記紀の神々の多くは単独で、あるいは夫婦として祀られるのに対し、奥津比売命・奥津日子神は「兄妹」として一対に扱われる珍しい例である。台所仕事を家族で協力して担う暮らしのあり方が、兄妹二柱で力を合わせてかまどを守るという神話的な形に反映されているのではないかとする見方もある。
かまどの火を絶やさず守り、家族の食を支える役割は、古代社会において女性が担うことが多かったと考えられている。奥津比売命という女神が竈神として祀られてきた背景には、家庭内で火と食を実際に管理してきた女性たちの営みが、神話的な形で投影されているという見方もできる。
ご利益
かまど・台所を守護する女神として、家内安全・良縁・食の安全といったご利益が古くから信仰されています。

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