01. 摩睺羅伽の基本情報
| 分類 | 天部(てんぶ=仏教を守る神々)。八部衆・二十八部衆の一員 |
| 読み方 | まごらが(「まごらか」とも) |
| 別の書き方 | 摩呼洛迦(まこらか)・摩護囉誐(まごらが) など |
| 漢訳(かんやく)名 | 大腹胸行(だいふくきょうぎょう)・大蟒(だいもう)・大蟒神(だいもうじん) |
| 梵名(ぼんみょう) | マホーラガ(Mahoraga)=「偉大な蛇」 |
| 個か集団か | 一人の神の名ではなく、無数の「摩睺羅伽衆」の総称 |
| 仕える神 | 帝釈天(たいしゃくてん)の楽神とされる |
| 曼荼羅での位置 | 胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)の北方 |
| 真言・種子字(しゅじ) | 確認できる資料では定まったものが見当たらないため、本記事では省略 |
| ご縁日 | 摩睺羅伽だけの縁日は、確認できる資料では定められていない |
02. 摩睺羅伽とは? ― 大きな蛇の神が、仏法を守る音楽神に
① 一言まとめ
摩睺羅伽は、大きな蛇を神としてあがめたものです。仏教では八部衆の一つとして、仏法を守ります。
② 由来・経典上の位置づけ
梵名のマホーラガは、「マハー(大きな)」と「ウラガ(蛇)」を合わせた言葉で、「偉大な蛇」という意味です。
漢字では「大腹胸行」とも訳されました。大きな胸やおなかで地をはって進む、蛇の動きから来た名前と考えられています。
では、同じ蛇の神である龍(ナーガ)とは何がちがうのでしょうか。ナーガはコブラを神にしたもの、摩睺羅伽はニシキヘビのような大蛇を神にしたもの、と説明されます。
仏教では、摩睺羅伽は八部衆の一つです。天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅と並び、お釈迦さまの説法の場に集まる者たちとして、お経にたびたび登場します。
そして、摩睺羅伽は緊那羅とともに、帝釈天に仕える音楽の神ともされます。大蛇の神が音楽家、という組み合わせがおもしろいところです。
また、千手観音を守る二十八部衆にも、「摩睺羅(まごら)」として数えられています。
③ 姿・持物の特徴
摩睺羅伽の姿は、資料によってかなりちがいます。
- 蛇の頭に人の体:仏の姿を集めた図像集「胎蔵図像(たいぞうずぞう)」では、蛇の頭で人の体の5尊が、笛や太鼓を持って描かれます。
- 人の顔で蛇の冠:今の胎蔵界曼荼羅では、人の顔の3尊です。1尊は蛇の冠をかぶり、1尊は笛を吹いています。近くには鼓を持つ2尊もいて、「緊那羅」と書かれています。ただ、本来は摩睺羅伽の仲間を描いたものではないか、ともいわれます。
- 下半身が蛇:アジアの他の地域では、腰から下が蛇の人の姿で表されることもあります。
三十三間堂の摩睺羅像は、目が5つあり、頭に蛇を巻きつけ、琵琶(びわ)を弾く姿と紹介されることがあります。楽器を持つのは、音楽神らしい特徴です。
天部の神なので、如来のような決まった印相(いんぞう=手の形)や台座はありません。
03. 摩睺羅伽のご利益 ― 仏法守護と、音楽・芸事への祈り
🎵 音楽・芸事への祈り
🐍 蛇の神への信仰
こんな人におすすめ
- 楽器の演奏や歌に打ちこんでいる人
- 巳年(へびどし)生まれで、蛇の神様に親しみを感じる人
- 阿修羅像のとなりの「名前のわかりにくい仲間」が気になる人
ご利益の根拠:摩睺羅伽は八部衆の一つとして、仏法を守る神です。
「音楽・芸事」は、帝釈天に仕える楽神という役目から考えたものです。「巳年」は、大蛇の神であることから考えたものです。お経の中で、摩睺羅伽に決まったご利益が約束されているわけではありません。
ちなみに海外の解説では、摩睺羅伽は大地の下に横たわる大蛇で、寝返りをうつと地震が起こる、という言い伝えも紹介されています。日本では聞きなれない、インドらしい大蛇の姿です。
04. 摩睺羅伽と関連する仏様・神様
05. 摩睺羅伽に会える主な寺院・場所
摩睺羅伽を単独でまつる寺は、確認できる範囲では見当たりません。そこで、八部衆や二十八部衆の一員として会える場所を紹介します。
※摩睺羅伽は胎蔵界曼荼羅にも描かれていますが、曼荼羅を公開している寺と時期は、公式に記載のあるものを確認できませんでした。各寺院の特別公開の情報を確かめてください。
06. 摩睺羅伽の見分け方ガイド
※姿や持物は、時代や寺によって例外があります。お寺の案内板もあわせて確かめてください。
07. 摩睺羅伽の物語コラム ― 観音さまが「大蛇の神」の姿で現れるとき
『法華経』の観世音菩薩普門品(ふもんぼん)は、「観音経」として親しまれているお経です。そこには、観音菩薩がさまざまな姿に変わって人を救う、という教えが説かれています。
仏の姿で救うべき人には、仏の姿で。王の姿で救うべき人には、王の姿で。子どもの姿で救うべき人には、子どもの姿で――。観音さまは相手に合わせて、姿を変えて現れるのです。
そして、そのリストの中に、こんな一節があります。天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽などの姿で救うべき者には、その姿になって教えを説く、というのです。
つまり観音さまは、必要とあれば、大蛇の神・摩睺羅伽の姿にもなるということです。人間だけでなく、人ではない者たちにも、それぞれの仲間の姿で寄りそうのです。
江戸時代の日本の本にも、観音さまが摩睺羅伽の姿で説法する場面を描いた挿絵が残っています。こわそうな蛇の神も、観音さまの「変身リスト」の一つだったのです。
🎮 ちなみに、マンガ『呪術廻戦』に登場する式神「魔虚羅(まこら)」は、英語版で「Mahoraga(マホラガ)」と訳されることが多い名前です。ただ、名前は十二神将の摩虎羅から来ていると説明されることが多く、摩睺羅伽とは別の存在です。
08. 摩睺羅伽のまとめと関連記事
この記事でわかったこと
- 摩睺羅伽は「偉大な蛇」の意味。大蛇を神格化した八部衆の一つで、音楽神ともされる
- 観音経では、観音菩薩が摩睺羅伽の姿にもなって人を救うと説かれる
- 興福寺では、ひげの畢婆迦羅像が摩睺羅伽にあたるとされるが、異説もある
国宝館で八部衆に会ったら、ひげの像と、蛇を巻いた像を見くらべてみてください。
09. ゆる仏様トーク ― 摩睺羅伽編
摩睺羅伽は、今でいえば「天界バンドのベース担当」です。表には目立たないけれど、大地の底からひびくような低い音で、演奏全体をどっしり支える。大蛇の神には、そんな役がぴったりです。
8つの種族からなる八部衆なのに、興福寺では「どの像が摩睺羅伽なのか」がはっきりしない――。名前を呼ばれても、どの像が返事をするのかわからないのです。──そう、正体がつかめないことこそ、摩睺羅伽らしさなのかもしれません。
※経典の言葉ではなく、大蛇の音楽神・摩睺羅伽をイメージしたセリフです。


コメント