愛知県名古屋市に鎮座する熱田神宮(あつたじんぐう)は、日本屈指の古社であり、伊勢神宮に次ぐ崇敬を集めてきた「大社」です。御祭神として祀られるのは、日本神話の英雄・**日本武尊(やまとたけるのみこと)**を中心に、多くの神々が鎮座しています。本記事では、熱田神宮に祀られる神々と、その由緒を詳しくご紹介します。
主祭神:熱田大神(あつたのおおかみ)
熱田神宮の御本殿に祀られているのは「熱田大神」。
これは、三種の神器のひとつである「草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)」を神格化したお姿とされます。
草薙神剣は、日本武尊が東征の折に使い、伊勢に帰る途中で亡くなった際、その御魂と共に尾張の地に祀られたと伝えられています。以来、熱田大神は武運長久・国家安泰の守護神として篤い信仰を集めてきました。
相殿神(あいどのがみ)
熱田神宮の御本殿には、主祭神・熱田大神のほか、五柱の神々が「相殿神」として祀られています。
① 天照大神(あまてらすおおみかみ)
伊勢神宮内宮の御祭神で、日本の総氏神。草薙神剣は天照大神が授けた宝であるため、その縁で熱田に祀られています。
② 素戔嗚尊(すさのおのみこと)
天照大神の弟神で、八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した神。草薙神剣はこの神話に由来しており、熱田神宮に深い関わりを持っています。
③ 日本武尊(やまとたけるのみこと)
草薙神剣を授けられ、東征を果たした英雄。死後、その御霊が熱田に祀られたことで、熱田神宮の由緒が始まりました。
④ 宮簀媛命(みやずひめのみこと)
尾張氏の娘で、日本武尊の妃。日本武尊の東征を支え、亡き後は草薙神剣をこの地に祀ったと伝わります。熱田神宮創祀の重要人物です。
⑤ 建稲種命(たけいなだねのみこと)
宮簀媛命の兄で、尾張氏の一族。日本武尊の東征にも従軍した忠臣で、尊の死後もその御霊を守護したと伝えられます。
熱田神宮の摂社・末社に祀られる神々
熱田神宮の境内には数多くの摂社・末社があり、それぞれに由緒ある神々が鎮座しています。
- 上知我麻神社・下知我麻神社:尾張の祖神・乎止與命(おとよのみこと)を祀る。商売繁盛・家内安全の神。
- 一之御前神社:熱田大神の荒魂を祀る、もっとも神聖とされる摂社。
- 龍神社:雨乞いの神として信仰される水神。
- 南新宮社:天照大神の和魂を祀る社。
これらを含め、境内摂社・末社は30社以上。さらに、境外摂社や所縁の神社を含めると、熱田神宮の信仰圏は名古屋一円に広がっています。
別宮、境内摂社・末社に祀られる神々
別宮
一之御前神社
日割御子神社
孫若御子神社
南新宮社
御田神社
上知我麻神社 ※平止興命
下知我麻神社
龍神社 ※吉備武彦命、大判武日命
境外摂社・末社に祀られる神々
高座結御子神社
氷上姉子神社
青衾神社
松ごう社
まとめ
熱田神宮は「草薙神剣」と「日本武尊」を中心とした神話世界が凝縮された神社です。
本殿には熱田大神をはじめ、天照大神や素戔嗚尊といった神話の中心的存在、日本武尊とその縁深い尾張氏の神々が祀られています。
境内の摂末社を巡ることで、尾張の古代豪族の歴史や、雨乞いや商売繁盛といった庶民信仰の広がりにも触れられるでしょう。熱田神宮を訪れる際は、ぜひ御本殿だけでなく摂社・末社の神々にも手を合わせ、その重層的な信仰の世界を体感してみてください。
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