神の種類
国津神
神格
食物・農業・五穀・家畜
神話的役割
死体から五穀を生んだ神
関連神
豊受大神・宇迦之御魂神
月読命との縁
月読命に殺された神
📅 2026年5月17日✍️ 神社めぐり管理人 🗂 神様図鑑シリーズ📖 読了目安:10分

① 名前と出典

正式名称保食神(うけもちのかみ)日本書紀
古事記表記古事記では直接の登場はなく、日本書紀に詳細が記される。古事記の「大宜都比売(おおげつひめ)」が類似の神話を持つ神として対応関係が議論される。古事記・日本書紀の比較研究
名前の意味「保(う)」は「宇(う)」——食物・食べ物の古語。「食(け・もち)」は食べ物・食物を保持する。「神(かみ)」は神霊。全体として「食物を保ち体現する神」——あらゆる食物の霊力を体に保ち、それを他者に与える食の神という意味。「食物を生み出す神」という神格が名前にそのまま込められている。
初出文献日本書紀(720年)神代上。天照大神の使いとして月読命(No.014)が保食神のもとへ遣わされた場面で登場。「保食神が食物を口から吐き出して供応した」ことに月読命が怒り、剣で切り殺したとされる。保食神の死後その体から五穀・蚕・家畜などが生まれた。
🌾 注目ポイント:保食神は「食物を口から出して供応する」という行為が原因で月読命(No.014)に殺され、その死体から「稲・粟・大豆・麦・蚕・牛・馬」など農業・養蚕・牧畜の根源となる生物が生まれたという「農業起源神話」の主役です。「神が死ぬことで食文化が生まれる」という逆説的な神話は世界各地の穀物起源神話と共通するテーマを持ち、「死と再生・犠牲と豊穣」という農耕文明の根本的な世界観を体現します。

② 保食神の体から生まれた食物・家畜

🌾死の体から生まれた「日本農業の起源」——食文化の根源神話

月読命に殺された保食神の体の各部位から、日本農業・食文化・養蚕・牧畜の根源となる生物が生まれたとされる。これは「神の犠牲が人間の食の恵みになる」という世界共通の穀物起源神話のパターンを日本神話で体現したもの。

🌾 頭から
牛・馬
牧畜・農耕を支える家畜
🐛 額から
蚕(かいこ)
絹織物の原料・養蚕の起源
🌾 眉から
稲(いね)
稲作の起源・日本文明の主食
👁️ 目から
稗(ひえ)
古代の穀物・五穀のひとつ
🌿 腹から
麦(むぎ)
パン・うどんの原料となる穀物
🌱 陰部から
大豆・小豆
豆類・味噌・醤油の原料

③ 活躍した時代

🌾
神代——死して農業・食文化の根源を地上にもたらした食の女神
保食神は月読命に殺されることで、その体から日本農業・食文化・養蚕・牧畜の起源となる生物をすべて地上にもたらした。「神が死んで人間の食が生まれる」という犠牲の神話は、日本人の「食への感謝・いただきます」という精神の神話的根拠のひとつとして深く意味を持つ。
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02

祀られる神社

📌 保食神は伊勢神宮外宮の豊受大神(No.031)と同一視されることが多く、名古屋から近鉄で約1時間半の伊勢神宮参拝(内宮・外宮セット)が保食神への最も身近な参拝となります。「食の恵みへの感謝」を伝える伊勢外宮への参拝は保食神への祈りでもあります。
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03

登場する神話・伝説

月読命と保食神——「口から食物を出す」という供応が招いた悲劇
日本書紀によれば、天照大神は月読命を保食神のもとへ遣わした。保食神は訪れた月読命をもてなすために、「陸の方を向いて口から米飯を吐き出し・海の方を向いて口から魚を吐き出し・山の方を向いて口から獣の肉を吐き出して」料理を並べた。しかし月読命はこの「口から食物を吐き出す」という行為を「穢れた食物を神に供する」と怒り、剣を抜いて保食神を斬り殺した。天照大神は月読命の行為に激怒し「あなたとは会いたくない」と言って以来、太陽(天照大神)と月(月読命)が一緒に空に出なくなった——これが「昼と夜が分かれた理由」の神話的説明となっている。

出典:日本書紀(神代上)
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保食神の死体から生まれた五穀——「死と豊穣」という農業神話の普遍的テーマ
殺された保食神の体の各部位から五穀・蚕・牛馬が生まれたという神話は、世界各地の「穀物起源神話」と共通するパターンを持つ。インドネシアの「ハイヌウェレ神話」(少女の体から食物が生まれる)・北欧神話(ユミルの体から世界が作られる)など世界各地に「神の犠牲から食や世界が生まれる」という神話が存在し、保食神の神話もその世界的なパターンの日本版として位置づけられる。この神話が伝える「食は神の犠牲から生まれた」という感覚が、日本の「いただきます」という食前の言葉——命をいただく(神への感謝)——の神話的根拠のひとつとも考えられている。

出典:日本書紀(神代上)・比較神話学の研究
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05

ご利益

🍚
食の恵み・食物守護
食物の根源神として食の恵み・食料への守護のご利益がある。「いただきます」という感謝の気持ちの神話的根拠となる神。
🌾
農業・五穀豊穣
体から五穀が生まれた神として農業・五穀豊穣への守護のご利益がある。農業の起源神として農家から信仰される。
🐄
畜産・養蚕守護
体から牛馬・蚕が生まれた神として畜産・酪農・養蚕業への守護のご利益がある。畜産業者の守護神として。
🍽️
飲食業・食品業
「食を司る神」として飲食業・食品製造・食品流通への守護のご利益がある。料理人・飲食店経営者の守護神として。
🔄
死と再生・犠牲の恵み
死することで農業を生んだ神として死と再生・犠牲から生まれる豊かさへの守護のご利益がある。
🌙
昼夜の恵み(月との縁)
保食神の死が昼と夜を分けた原因となったことから、昼夜の時間・自然のリズムへの感謝と守護のご利益がある。
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